A.初めから声を地声と裏声というように2種類だと思い込んで発声練習をしていると、枠にはめてしまい歌い方がぎこちなくなることがあります。「あ、今ここ声のチェンジのポジションが変わったな。」と意識を表に出してしまうと聴いていて技術的な、機械的な歌になってしまいますね。自分の中でチェンジしたことが意識にのぼらないくらいが理想的なのです。中音域からあるところを通過するときにくっと引っ掛かる、このポイントをスムーズにつなげるのが慣れるまで何回も練習と時間を要します。ところが、人によってあまり意識しなくてもすっとできてしまう人もいるようです。好きな曲をCDに合わせて歌っているうちに無意識のうちにマスターするものだとも言えそうです。
地声から裏声へのチェンジは特にクラシック、声楽、オペラのジャンルで重要視されています。特に男声テノールは高いファかファ#が声区、つまりチェンジの場所だと言われこの場所をイタリア語でPassaggioといい(通過するという意味)、みなレッスンの中でこのコツを掴むように教えられますが、なかなか最初は上手く行きません、こけっと声がひっくり返ってしまったり、逆に声が詰まる、音色が暗くなる、など最初は本当にやる必要があるのだろうかと苦労するものです。低い声からそのまま上に上がっていくとイタリア語で言うApperto(開いた状態)になり高いラ、シ、ドがそっくり返ってしまう。そこでchiuso(閉じた状態)といって首の後ろを延ばすように前に声を包み込むようにします。
高音域、特にラ、シ、ドは男声にはかなり高い音域だと思いますが、最近はポップスでかなり高い声の曲が多いですね、カラオケでもオリジナルのピッチ、音程で歌うのがかっこいいという意見も聞かれます。あまり無理しないほうがのどのためにもよいのです。しかし、音程が原曲と同じ方が雰囲気、印象が作り手の意図やニュアンスとあってトータル的に感じが出るのは確かです。ですから高いキーに挑戦したくなるのでしょう。
オペラでは決まってソプラノとテノールが高い音域で二重唱を歌い上げるシーンが多いです。その時にpassaggioされていないapertoな声で歌うと力強い声が感じられずいわゆるイタリア語で言うVoce vianca(白い声)になる傾向にあります。子供っぽい声で大人の様式感とはニュアンスがずれてしまうようです。無理なくその人らしさが歌い方に出てくるのが良いとは思います。(♭Φ)