A. 東 敦子 著書「ベルカント・ヴォカリッツィ」より、引用します。
〈私は歌う時によく「お前は日本人で、YESと言うのに首を縦に振るだろう。あれはやめた方がよい。」と言われました。呼吸が首のところで完全に切り離された状態になるからだそうです。
首を動かさずに「息を上顎いっぱいに含んで回しなさい。」といわれました。これは一見やさしそうに思われますが上顎が西洋人よりペッタンコな日本人にはとても難しく、トンネルを掘るような努力が必要です。毎日毎日、上顎を「あくび」する前のような気持ちで高い位置に保つトレーニングをします。
ところで「あくび」ですが、イタリア人と日本人とでは、その仕方に大きな違いがあります。イタリア人のあくびは、口の中のみならず顔全体の筋肉をくしゃくしゃにして大げさに行いますが、日本人はとかく口の中や顔の表情を変えずに口の中の奥の方だけで処理しようとします。この日本人式あくびでは、確かに喉は下がって開いた上体になりますが、上顎は上がらず暗くこもった声になります。イタリア人のあくびのイメージで頬の筋肉を引き上げ、上顎を高く保ってください。〉(♭Σ)