A.基本的に肺に息を入れるのですから、胸に息を取り込むということは正しいのですが、あまり胸を意識したくないというのが本音です。
肺を横に広げて息を取り込むのではなく、肺の下にある横隔膜を下に広げて、息を取り込んでほしいのです。
肺を意識することで、いろいろな問題が出てきます。まず胸を固めてしまい、その影響でのどにも力が入ってしまうことです。胸とのどは、とても近い場所にあります。胸を意識するあまり、のどに力が入ってしまうのです。また肩や首にも力が入ってしまいます。そのため、胸を意識しすぎたくないのです。
もちろん胸を意識することで、たくさんの息を取り込むことができるという長所もあるのですが、発声を始めたばかりで、基礎がない初心者の方が行なうことは、あまりお勧めできません。
基本はお腹を意識していくことです。お腹を意識して、上半身はリラックスしていきます。お腹から深い声を出していくために、腹式呼吸を身につけて、肺の下深くまで、息を取り込んでいきましょう。
また技術的なことだけではなく、表現についても、この腹式呼吸を身につけることで、深い気持ちが出てきます。胸のあたりを中心に呼吸をしていると、気持ちも胸のあたりから出ていくことになります。もちろん胸のあたりに心はあるのですから、正しいのですが、そこを意識するあまりアップアップな気持ちになりかねません。深みが足りない浅い表現になってしまうのです。だからこそ、お腹を中心にしていき、お腹のあたりに心が、気持ちがあるんだぞと思い、深いポジションから気持ちを出していきたいのです。
息も、気持ちも連動させて、深いポジションから出していくことで、表現の深みも増してきます。