発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q3227.友人のオペラ歌手が言っていたことなのですが、英語の歌を唄うときは発音よりもその方の先生に教わった唄い方を重視するということでした。オペラ歌手ぐらいな国際的な歌手も発音を気にしないですませているのでしょうか。またそれで通用するものなのでしょうか。(観衆が外国人の場合)

A.発声を気にしないオペラ歌手はいません。ただ、一言で述べられる内容ではありません。

まず、音声生理学的(人間の発声器官の構造上)に発声と構音(発音)は、最高音域においては両立しがたくなります。
オペラは、演奏スタイル上、発声と共鳴を優先せざるをえません。
また、元々、それぞれの民族文化を他言語で完全におきかえられるものではありません。

歌唱内の言語と実際の言語は、既に異なります。
伸ばすことは元より、日本語の「っ」や無声化する「キク」などは正しい発音やアクセントでは歌えません。

人間にとって、何をもって、発音の“正しさ”というのかは、英語はともかく、 日本人としては、日本語の正しい発声、発音を日常においてさえ未だ、基準として、考えていないのにコメントできる人もいないように思います。

英語の日本人なまりはよいが、フランスでシャンソンを歌うならよくない。(私はそう考えますが、ケースによっては、よしとするかも知れません。)それは、客の聞き方にもよります。

要は、アートは、結果として感動させるレベルのものにするのが第一です。発音だけでは感動させられません。歌唱がすばらしい上に、発音もよければ、尚によいということです。ですから、努力目標には、すべきです。両立しえるレベルに対しても、個人の価値によります。発音を極めている人には、耐えられない歌が多いのもしれません。私も別の意味に耐えられない歌が多いのです。だからといって間違いと否定は、できません。
 
それぞれ、専門分野があります。私としてもトレーナーでありながら、数ヶ国語の歌をみておりながら万能には、極められません。そこでは、別の専門家をつけます。発声や音声生理学に無関心な、無学な外国語教師がいることを耐えられないというトレーナーもいます。

比較的、発音、音程、リズムは、間違いがわかりやすいので、正誤で何ごとも判断したがる日本人の関心はそこに集まりがちです。ただ私共の現場では、もっと優先すべきことがあります。
アグネスチャンをはじめ、日本で仕事をやる外国人の日本語を直したいとも思いませんし、オーストラリアなまりをわざと売り物にして公職につくシュワルツネルガーも、私自身は気になりません。

オペラについては、私なぞが言及する立場にありませんが、せりふの深い理解を欠かせない
オペラで、発音を気にとめない人などは、いません。

ただ、音声生理学的には、最高音域での発声は構音(発音)とどうしても両立し得ないものです。
日常の発音と、歌唱は異なるので、同じ判断でみるのは無理があると考えます。

正確な発音は努力目標ですが、必しも第一優先にはなりません。それでも、たとえばミュージカルなどでは、「劇団四季」などに見られるように、劇団出身の演出家はことばに重きをおいているようです。