A.世の中に、正しい発声メソッドが一つだけ存在するという考えはもたないほうが懸命です。最終的に理想とする声のタイプによって発声法に違いはあるものですし、その人のもっている発声の長所や短所によって、癖の矯正の方法は異なります。偉大なオペラ歌手の中でも、胸声区は意識しないといいながら素晴らしい低音を奏でる歌手もいますし、頭に響かせるなど一切考えないという歌手が、レーザービームのように集まった高音を出していることもあります。大事なことは、自分の声を客観的に理解している頭と耳です。よい歌手は、自分の声をよく理解しています。自分の悪い癖、良い点、喉のサイズ、筋力、弛緩力、をしっかり理解しています。その理解力と判断力によって、バランスの取れた声をどのように出せるかを各々が自分で習得していくべきですし、それによって良い発声が長年維持できるということです。