A.私は実際舞台に立っているとき、少しだけ「冷静な自分」を置くようにしています。
それは歌っている訳ですから、感情だけでなく技術的なことにも神経を配らなくてはならないからです。
ただしあくまでも技術的に関することのみに「冷静な自分」を使います。
「表現する者」は、いくら内面で強く訴えていても、それが形となって聴く側に伝わらなければ「
無」に等しい存在になってしまいます。ある程度「私は今これを訴えています」 という意思表示をしなければなりません。それには、自分なりの「型」を持つことが大切です。僕は身振り手振りに関しては、鏡の前で、「どうしたらこの表現が伝わるか」を研究します。そして「型」を作り、
その中に魂を注入する(自分のものにする)という作業をします。
これに対しては賛否両論あるのですが、舞台で人に見せる以上「形式美」
を忘れてはいけないと思うのです。これは僕が「歌舞伎」「人形浄瑠璃」「能」などを愛好しているせいでしょうか。ただし、この「型」は 自分を束縛するものであってはいけません。ここが難しいのですけどね。
舞台上で「次はこういう表現をしてやろう」「今の自分はお客にどう映っているか」
に「冷静な自分」を使っている人の歌なんて嘘っぱちです。そんなものは舞台に乗る前にやっておくべきこと、本来体が勝手に動くはずです。 それは歌を消化していない証拠だと思っています。(♭∀)