A.これはフランス・ドイツの歌曲専門のヨーロッパ人の歌手たちからも聞きますが、私はこの言葉に常に驚きを隠せません。
なぜなら金属的な共鳴を保つことは高音を歌うのに絶対不可欠だからです。
その証拠に、彼らはたいていはその声種の最高音をもってませんでしたし、レガートではなくパルランド(語り口調)です(歌曲はレガートでないとロマンティックにならないと私は思うけど)。
どちらかというと、わたしは大声量のために響きをつけるのは大反対です。響きのない声は美しくないし、高音も出ない、という理由です。
響きはいわば中音域のメロディアスな状態から高揚した叫びへの美しい橋渡しの役目を果たします(この橋を声楽家は経過点Passaggioとよびます)。
大声量のために響きを目指すと、だいたい喉がつぶれるし、なにより表現がふさわしくないです。
「ロミオ!ロミオ!何故あなたはロミオなのっ!」と叫ぶジュリエットを想像してみてください。柔らかくあたたかい音のなかに芯、それが金属的な鳴りです。
喋るように歌う=金属的な響きで歌う
と考えると、「響きをつける」「響きを強める」という指導がいかにとんちんかんであることがよくわかります。(♭∀)