A.響き重視の歌い手さんは声を守りすぎる傾向が強いです。しゃべるのも嫌がる方もいますし低音域を嫌がるかたもいらっしゃいます。歌い手それぞれで価値観が違いますし、私は発声そのものは宗教のようだと思っていますので人それぞれなのですが、もし仮にオペラを歌われる場合どうなさるのでしょうか?声には軽い声、重い声があるのは重々承知しています。
しかし声が軽い方は声を張ったり、大きな声で台詞を喋ることを嫌がる方もいますし台詞なども響きの高いポジションでしゃべる方も多いので何を言っているかわからないことも多いです。
例えばプッチーニが書いた「ラ・ボエーム」という作品がありますがこの中にムゼッタというソプラノの役とマルチェッロというバリトンの恋人同士の役があります。この中で二人が喧嘩するシーンがあるのですがそこには音程は書かれていません。二人ともリズムと台詞だけが乗っています。そしてこう書かれてあります「gridato」と。
これは「叫ぶ」という意味です。ムゼッタは比較的声が軽い方がやられることが多いのですがほとんどの方がキーキー甲高い声で何を言っているのかわからず「叫び声」ではなく「金きり声です」
叫ぶという声は下手にやるとのどを痛めます。しかしそれは鍛えていないからです。のどにこない、痛めない叫び方。つまり台詞でのどを痛めずに大きな声を発する方法はあるのです。
ムゼッタの役は一人で目立つところは高いキーがあるのですが最後の場面では一人でかなり低い音域を歌わなければいけません。ここを薄く歌っていては駄目なのです。実際にこの役を歌おうと思ったら最低1000人を超えるホールでプッチーニですから分厚い巨大なオーケストラを超える低音も持ち合わせていないといけないのです。
ボエームに限らずgridare(叫ぶ)をのどにこず痛めないやり方ができないと大きなホールでましてやオーケストラ相手では台詞は無理です。
ここは日本人は意識的に鍛えないと無理ですが、日本人の声楽だけにかかわらず全ての声をだす分野の問題のように思います。(♭Σ)