Q5231.言葉を語ること、歌うことはどういうことですか。
A.日頃から思うのは、皆、言葉に対して流して読みがちということです。本人は流して読んでるつもりはないのです。テンポ感や声色や感情に気を使いながら読んでいます。僕が言ってるのは、「自分の本当の言葉」で語っているか?ということです。
日常では皆、自分の言葉で会話します。表現しなければならないという制約がないので、状況に応じた自由な素直な言葉をポンポン発します。僕がいっているのは、まずこうした自然に出てくる「自分の言葉」で朗読。歌詞も語れているか、という疑問提起です。例えば、景色のいい山を見たときの「あ~、いいな~」と自然と出てくる時のような感覚で、朗読、歌唱する時も言葉が発せられているか?ということです。
勿論、パフォーマンスする際には「自然な言葉」だけでは立ち行かない技術は多くあると思います。発声、滑舌、声色・テンポ・抑揚・感情のプッシュ・・・。しかし、言葉の根底に読み手・歌い手の「真なる心理」が存在しないと聞き手への説得力や感動を導き出せないと思うのです。
我々言葉を操る職業のものは外面的テクニックに走りがちですが、まずこういった内面的感覚を言葉にするエクササイズを多く取り入れるべきなのではないかと思うのです。(♭Д)
Q5232.曲は何をやったらいいですか?
A.まず、自分がどんなジャンルをやりたいのか、このトレーニングの目的は何なのかを明確にしましょう。
漠然と「曲はなにがいいか?」と問われても、たくさんあるジャンルの膨大な曲数の中、どのように選んだらいいのか、何をお薦めしたらいいのか、こちらも悩んでしまいます。
発声の基礎をしっかりさせたいのであれば、ひたすら発声練習のみという選択もあります。
また、音程やリズム、楽譜を読むことに慣れたい、という場合は、ソルフェージュのテキストがありますし、コンコーネ50番などをやるのもよいでしょう。
それらのものは必要ないので、曲を使って練習したい、というのであれば、自分のやりたいジャンル、興味のあるジャンルから曲をしぼり、楽譜またはカラオケや歌詞カードを探してレッスンに持ってくると良いと思います。
その選んだ曲が、現在のレベルとあまりかけ離れているなど、ふさわしくない場合は曲を変えるよう指示するか、またはその曲を使って今できる範囲のことを伝えていきます。
それでも何もわからない、思い当たらないなどの場合は、カンツォーネや唱歌など、研究所で薦めているテキストがありますから、その中から何かお薦めします。
たとえ好みに合わなくても、まずはやってみることです。
何か必ず見えてくるものがあるはずですよ。(♯Å)
Q5233.喉があがって声がうわずってくると、声が掠れるのですけどどうしてですか?
A.声が上ずるということは、支えがないということになります。そして、支えがないということは、深い呼吸が使えていない、つまり腹式呼吸ではなく、胸式呼吸になっているということになります。ということは、浅い息が声帯をこすり、それによって声帯に負担がかかり、声がかすれるのかもしれません。
発声時、喉がイガイガするとか、違和感がある場合は何らかの形で声帯に負担が掛かっています。ですから直ちに修正するか、もし自分でできなければ練習をとりやめ、トレーナーのもとに行って、正しい場所を覚えるまで練習することです。
自分の体を自分で分析するのは決して悪いことではありません。今どういう状態だったから、こんな声が出たのだ、ということを把握しておく必要はあります。ですが、あまり頭でっかちにならず、そして頭で考えないことも必要です。トレーナーから聞いたそのままを身体が覚えるのです。頭で考えて分析し出すとおかしな方向に行きかねます。レッスンは必ず録音し、改めて聞きなおすことを習慣づけましょう。(♯Å)
Q5234.口の動かし方と発声との関係は
A.言葉をしゃべる際に「口を一語一語ハッキリと動かすことが良い」と思われていたり、そう教わって来られる方が少なくはありません。
また、無意識のうちにそういう発声になっている方もいらっしゃいます。
確かに、言葉をしゃべる為の顔の筋肉を動かすということも重要かもしれませんが、「発声」という観点から見た場合、それによってロスをしている部分がかなりあります。
一つの指標となるのは、「早口言葉を言えるかどうか」です。早口言葉では、一語一語口を動かして発音していたら、言葉を裁くことに間に合いません。ゆえに、発声上、かなり無駄な動きをしていることが多いのです。
鏡を見ながら「ア、イ、ウ、エ、オ」の練習してみましょう。特に「ア、イ、エ」などで口が横に平べったくなってしまっている場合は要注意です。非常に発声しにくい口の形になってしまっています。早口言葉が苦手な人は、このようなところに原因があります。
解決方法として一案ですが、よく縦に開いた「オ」の口を基本として、できるだけ口を動かさないように「オアイウエ」と練習してみましょう。最初は大変だと思いますが、辛抱強く行いましょう。この練習を行うことによって、今まで口先にかかりすぎていた力を、身体で支えて出すようになってきます。
身体を使って発声できるようになってくれば、もう少し声を出すことが楽になり、早口言葉も楽に言えるようになるはずです。口先にとらわれず、全身でを使って発声していきましょう。(♭Я)
Q5235.声を磨いていく上でもっとも大切なことは
A.それは熱意を持って日々研究し改善し続ける事だと私は思います。「声を磨く」という課題は、一朝一夕では叶わない課題です。「日々の弛まぬ努力を一生続けていく」という覚悟がなければどこかで衰えます。熱意のあるレッスン生をみていると、レッスンは毎回欠かさず出席し、レッスン内容を録音し、課題を一所懸命練習して次のレッスンに持ってこられる。会報も隅々まで読まれるそうです。これだけ一所懸命取り組まれています。
「声を磨く」という課題は、ある意味ではスポーツの世界と同じではないかと私は思います。才能のある選手でさえ、日々弛まぬ練習を重ねているわけです。
「どれだけ自分自身を奮い立たせて自分を変えていけるか」というのが「磨く」という行為です。もう一度、自分自身と向き合いましょう。「声を磨く」ために通われているのであれば、一所懸命取り組んで改善していきましょう。必死に取り組めば、新たな自分に出会えるかもしれません。自分の可能性を信じて、前向きに取り組みましょう。(♭Я)
Q5236.ビブラートの形は、どうつけるのですか。
A.ビブラートは歌手にとって永遠の課題ですね。
本来まっすぐ声を出し且つ程よく体が弛緩していればビブラートは自然にかかります。ペットボトルから満タンの水を流せば、流れる水は自然と波打ちますよね。多少の緩みをもって一定の圧力で流動物体を流せば、どんなものでも自然と波打つのです。そうやって自然とビブラートがかかるようになるのが幸いなパターンです。
しかし、いつまで経ってもビブラートがかからないのも辛い現実です。ビブラートほど歌唱の表現テクニックとして大きいものはないからです。ビブラートの練習法としていくつか紹介します。
1.半音違いで「あーあーあーあーあー」とひたすら練習する。たまにノンビブラートにしたり繰り返すうちに感覚がつかめるかもしれません。(ちなみに1度違いでこれをやると演歌のこぶしになるらしいです。)
2.「ああああああああああ~」と同じ母音をなるべく早くなんども打ちなおす。これは横隔膜の呼気で打ち直すのがよいと言われてます。これもたまにノンビブラートにしたりを繰り返すうちにコツがつかめるかもしれません。
3.喉を使って波を作る。これは器用な人にはいいかもしれませんが、あまりお勧めしません。癖のあるビブラートになりやすいです。
以上、ビブラートの練習方法をお伝えしましたが、無理にビブラートを身につける必要もないのかもしれないという考えもあります。まっすぐのロングトーンは本当に素敵です。ただ、ビブラートは歌唱表現の幅を広げるし、高音などの辛いときに声帯の負担を軽減してくれたりもします。
上記はあくまでも練習方法の入り口であって、決して固執しないでください。どちらかというと邪道とされる練習方法です。上記の練習方法でビブラートの感覚がちょっとでもつかめるようになったら、音程や打ち直しから早く離れて体全体で感覚をつかめるよう発想転換してください。(♭Д)
Q5237.母音と子音を明瞭に発したいのですが。
A.よくロングブレスの訓練で呼気のみで10秒、20秒、30秒とやりますよね。そして同じように母音の「あ~」でやった場合、自分の体のブレス・コントロールの違いに気付いていますか?
やはり声帯を振動させ共鳴させた場合と呼気のみの場合では微妙に違うんです。当たり前と言えば当たり前なのですが、このことにしっかり気付いて訓練に励むのと否とでは発声・滑舌・表現テクニック・歌唱テクニックに確実に差が出ます。もちろん気付かずにテクニックを実践で磨いている人は多くいると思います。
これは言葉(歌詞)を語る上で母音と子音を使い分けるテクニックに通じるわけです。子音は基本的に摩擦音、つまり声帯以外の音。どの部分とどの部分を摩擦させるのかを感覚的に認知した上での呼気圧を調整し次に続く母音に上手く繋げる。特にハ行は大変です。摩擦する部分の呼気漏れが多いので、コントロールがかなり必要です。
英語などの子音はとても軽快で舌根の力み少なく子音を上手く弾きやすいです。また共鳴しやすい母音にも繋げやすいです。だから英語は言葉にしても歌にしてもリズミカルになりやすいのです。
子音のはじき方と子音の為の呼気圧。これは母音のコントロールの次に大きな課題です。(♭Д)
Q5238.低い音が、ビャーッと平べったく聞こえる気がします。
A.低い音が平べったく聞こえるということについてですが、呼吸が浅く、胸が硬く、口の中が狭いのではないでしょうか?
呼吸を深く取り、胸の力を抜いて広く使い、口の中を縦にする、これだけで随分違うと思います。
低音は胸の響き(チェストヴォイス)を使います。
音が低いので楽に出ると思いますが、楽だからと言って声帯の前の部分だけ使って浅い呼吸で歌えば、喉に負担が掛かります。
音の高さによって、響かせる場所もかわってくるのです。(♯Å)
Q5239.英語で歌っている人の声は、フワッとしているようですが、何が違うのでしょうか?
A.英語で歌っている人の発声についてですが、この質問だけで判断してお答えするのは難しいですが、おそらく、心地よい響きと息の流れで発声できているのではないでしょうか?
それと、やはり英語と日本語では使っている口や唇、舌の筋肉が違います。息の使い方も違います。そして、周波数も違うと聞いたことがあります。
そいういったことで、フワッとして聞こえるのかもしれませんね。
音程を取る際、音の上を狙うようにする、それもフワッと聞こえる一つの手段だと思います。(♯Å)
Q5240.高音域をどう捉えればよいのでしょうか。
A.多くの人は高音域を出そうと思うと、無意識でも若干構えてしまうと思います。
「音が上にある」と思ってしまいがちですよね。しかし、そのように思っていると、音が上がるに連れてどんどん身構えてしまい、身体が強張り、それがそれが原因で息が流れなくなって、その結果高音域が出せなくなっているというケースが多いようです。
まずはじめに気をつけなければならないのは、初期の段階から高音域の響きの高さを求めすぎないということが重要だと思います。
「高音域では響きを高く、頭のてっぺんで声が響くように発声しましょう」ということを初期の段階から行ってしまうと、力まないで綺麗な息の流れが作られる以前に声を響かせる意識に変わってしまい、結果的に喉も上がり、高音がファルセットでしか出せなくなってしまうことがあります。
響きの調整というのは、あくまでも最終段階ですので、初期の段階では、たとえ音程が外れたとしても、力まないで息の流れを感じられるように発声することのほうが大事であると私は思います。息の流れと言っても、息漏れ声にするのではなく、声が流れていくように発声するという意味です。
そして、音程を上下で捉えずに、音程に左右されすぎず、ただ真っ直ぐに声を流していくように発声するように心がけましょう。次第に出しにくかった高音域が出やすくなってくると思いますし、喉も楽になってくると思います。(♭Я)