発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.ブレスが思うように吸えません。

Q.ブレスが思うように吸えません。

A.ブレスの練習をしていて、「ブレスが吸いにくい」、「ブレスが吸えない」という人の特徴をみてみると以下のようなことが挙げられます。
1.「腹式呼吸をしなければいけないんだから、お腹に息を入れなければならない」と思っている人。
よく「腹式呼吸が発声にも身体にも良くて、胸式呼吸はしてはいけない」という情報が巷に蔓延していますが、腹式や胸式という言葉の定義などは、個人差のあるものです。
息が入る器官は肺以外ありませんので、お腹に入っていると思うこと事態が大きな間違えなのです。まれに多少の空気を胃や腸に取り込んでしまうことがありますが、その場合、ゲップやオナラとして出て行くしか行き場がないのです。
また、腹式呼吸を意識して下っ腹を膨らませるようにブレスを吸う人がいますが、その場合、物理的に入っている場所は、肺のごく浅い部分しか使えておらず、結果的にこれが胸式と言われるような浅いブレスになっているのです。これでは本末転倒ですよね。
発声にとって効果的なブレスとは、「肺の奥深くの普段使われていない部分を使えるようにする」ということなのです。
2.吸い方が急すぎて浅くなっている人
吸い方が急な人は、上記と同様に浅い部分にしかブレスが入らないことが考えられます。急がずゆっくり吸うことを心がけましょう。
3.吸った後に無意識のうちに息を止めて発声してしまう人
これが一番厄介で、無意識に行われていることなので、意識的に改善していかなければなりません。「吸って吐く」という動作をくりかえし行い、途中で停止時間が無いように何度も行いましょう。
以上の様に、ブレスの問題には様々な要因があります。
何が原因でブレスがコントロールしにくくなっているのか、自分で判断できない場合はトレーナーにみてもらって、適切なアドバイスをもらいましょう。(♭Я)

Q.自分の声を自分で判断しない方がよいですか。

A.発声について気になる気持ちは十分解りますし、ぜひともよい声を出すために必要なことを追い求めて欲しいという気持ちはとてもあります。しかし、中には「知識過多になってしまい、考えすぎてしまう人」がいます。このタイプの人は、ハッキリ申し上げると「伸び悩みます」。確かに知識は大事なことです。しかし、その知識が「いつ」、「どこで」、「どういう状況のときに」必要なものであるかの判断がつかなければ、つまり、持っている知識を有効的に活用する術がなければ、まったく意味を成さないのです。ましてや、レッスン中にトレーナーが「今の声でよい」とアドヴァイスしているにも関わらず、「違いました」と自ら止めてしまうのは、もったいないことです。他人が聞いている自分の声は、自分自身では判断できません。それを客観的に判断し、よい声が出しやすい道筋を立てることがトレーナーの仕事であり、我々が存在している意味なのです。
「よい声を出したい」、「自分の理想とする声を出したい」という気持ちは痛いほどよくわかりますが、自分自身で自分の声を判断するのは、「損をする」と心得てください。自分の声を確認しすぎると声はどんどん悪い方向に進んでしまいます。あまり、自分の声に執着し過ぎないようにしましょう。(♭Я)

Q.息を流すということについて知りたいのですが。

A.よく、歌のレッスンにおいて「息を流して」や、「遠くまで息を保って」などという表現で指導をします。この「息を流す」という表現を皆さんはどのように捉えているでしょうか?
声楽の世界ではこのような言い回し・表現はよく使われます。しかし、実際にこの研究所でレッスンをしていて気付いたのは、この表現は、必ずしも万人に共通する認識にはならないということです。ある生徒さんは、この表現を聞いて、息漏れをさせるような「ハー」(寒い時に手を温めるような音)を声とともに流すという風に捉えておられました。
声楽や、ボイストレーニングでいう「息を流す」という表現は、お腹をしっかり外側に張り出しておいて、腹圧で支え、その拡張した状態を維持した上で持続される声の事を言うのだと思います。単に息を吐き続けるだけ、まして「ハー」という息漏れではなく、この身体の拡張の上に呼気を持続させることが、いわゆる「息を流す」ということなのです。
このことに加えて、自分の中で音を持ってしまって外に声を放出するイメージを持ちにくい人が見受けられますが、思い切って外に勢いよく放出することでこの「息を流す」という感覚が得られることもあると思います。(♯ё)

Q.歌っている時に下あごはどのようにすればいいのですか。

A.口をやたらとあけようとしたり、下あごを押し下げて歌う人がいます。歌うときの下あごの感覚は、まずは何もない感覚を身につけるべきだと思います。上顎の感覚は口蓋を上げたり、頬骨を持ち上げたりする時には必要になりますが、下あごはないもの!という感覚で先ず歌ってみてください。
口を大きく開けて下あごを押し下げたりしてしまった場合、音を作り出している声帯を圧迫したり、声帯の周りの筋肉に力みが生じたりします。下あごを下げる時に顎のちょうつがいがガクッと外れるように下げる方もいらっしゃいますが、それは大変危険ですので、そこまで下あごを下げないように鏡でチェックするなどして気をつけましょう。
下あごを下げすぎない練習方法としては、まずは普段おしゃべりしている時の顎の開き具合を思いだしてください。それほど押し下げなくても会話ができているはずです。また、上の歯と下の歯をとじて発音してみてください。やはり音声は出ると思います。そのような顎の感覚を自分で感じてみて練習してみてください。(♯ё)

Q.operaってどういう意味でしょうか。

A. operaというのは「労働、仕事」という意味です。もちろん「歌劇」という意味もありますが一般的な意味は「労働」です。私の仕事は歌うことですが、その現場はとてつもない労働です。一日稽古場に缶詰なんてしょっちゅうですし稽古の掛け持ちなんて日常茶飯事です。酷いときには午前3時間、午後3時間、夜3時間なんてよくあります。空き時間は移動時間です。本番なんて当日に場当たり、ゲネプロ、本番なんてよくありますし開場ぎりぎりまでゲネプロしてるなんていうのもよくあります。
なのでそれに耐えうるだけの声と体力と頭の切り替えが必要なのです。一日3本の作品をやるときは3カ国語のときもあれば音楽のスタイルもちがいます。まして一日に3人の役を演じるというのは精神的に疲れるのです。肉体的、精神的タフさが要求されます。
私の日常は一日が8時からの発声練習で始まります。そこから発声、エチュード、前日の復習なので約2時間ほど費やしてから一日が始まります。毎日のことなのでやらないと逆に気持ちが悪いので最近は眠くても身体が起きてしまいます。もちろん時には身体を休ませることも大事なのですがやらないと一日のリズムが崩れるのでついやってしまいます。それでも歌うことが好きだから続けられると思うんですけどね。(♭Σ)

Q.息のトレーニングは必要ですか。

A.私は必要があればある一定期間、生徒に息を大量に吸って大量に吐いて「息漏れがしてもいいし、声が出なくなってもいいから息だけで音階を成立させて」という指導をします。これにも賛否両論あるでしょう。でも普段の呼吸とステージでの呼吸というのはちがうのです。
若年層の生徒の多くは単純に大きな声も出ない人が多いです。この状態の人の多くは息をたくさん吸うことも苦手です。よく「音を立てないように鼻からすう」という方もいいますし、それが腹式呼吸の方法のひとつという方もいますが、それで成立つ人はいいのですが、音を立てないの呼吸ではうまく吸えていない人も多いのです。単純にもっと声をだして欲しい、「鼻腔共鳴、腹式呼吸丹田」などのテクニックよりも先ずは声をしっかりだすことの方が大事だと考えます。声が出てから初めて鼻腔の共鳴などに話がいきます。まずは声をしっかりとだすこと。結果的に声のチェンジがうまくいかない、音程が定まらない、高い音がでないなどの問題はその後の問題にしないと、土台がしっかりしていない建物の上に飾りだけしているようなものでまずは土台、足場の建築をするような気持ちで声の勉強を行ったほうがいいと思います。(♭Σ)

Q.息もれや息の吐きすぎはよくないのではないですか。

A.私は、ある必要がある生徒には、たくさん息をすってたくさん息を吐いてそれだけで音階を成立させるよう指導することがあります。そして必ずこう付け加えます「この状態で他の方に聞かせたら息が漏れてる、もっと声をだして、息吐きすぎ、と言われるよ」と。
もし私が同じ状況の生徒を見たら同じことを言うと思います。しかし私がこのことを生徒にアドバイスするようになったのは特に「大きな声がでない」若い人を多く見てきたからだと思います。
50~60代の方々は質の善し悪しはともかくとして声が大きな方が多いです。声をおさえてというよりも、声をだしてというほうが正直むずかしいです。出ないものを出せるほうがとても大変なことです。(♭Σ)

Q.息は吐いてはよくないといわれました。

A.喉に負担のこない大きな声はとても息を必要とします。体の筋肉も横隔膜の動きもとても重要です。しかし大きな声が出せない方たちの多くは息を吸うことも吐くことも弱い方が多く結果的に体の使い方も苦手な方が多いのです。
そこで始めたのが息漏れしてもいいからたくさん吸ってたくさん吐くという発声法です。音としては弱くてもいいので息を使って体を動かしてほしいと思ったからです。
経験上、大きな声を出しづらい方の多くは幼少期から思春期、現在に至るまで性格的におとなしいとか、大きな声が出せる環境ではなかったなどの理由で、声を抑えて生活してきた人が多いので、何もない状態でいきなり強く出させるとかえって喉を傷める人もいます。声を強くだしてこなかった人にいきなり強く出せというのは足を怪我していた人にいきなり陸上競技に出場しろというようなもので帰って怪我の恐れが多いです。
息が上手く吐けるようになり、体も使えてきたら、今度は声をしっかり出させる方向にアドバイスします。一時の息漏れの声が完成形だとは思っていません。あくまで、声を鍛えていく一環で行うなら使えるケースもあるということです。(♭Σ)

Q.俳優兼声優ですが、基本的な声が弱いのです。一言でいうと声量、圧力がかなり乏しいです。

A.私としては、そういう職の人はもっと「抑えて」「出しすぎ」というくらいでちょうどいいという認識ですが「もっと声を鳴らして」「もっと声を深くだして」というだめだしは、本来、声優、俳優の方は恥ずかしいと思ったほうがいいです。先日ある生徒さんに深くだすようアドバイスしたところ「声がかれたので深くださないようにしました」と言われました。今まで深いところも使っていなかったのだから多少嗄れたり、オーバーワークすることもあります。スポーツでも同じです。身体を使わないで身につくことなどありえません。
トレーナーの立場としては、喉が辛いんなら推奨はできませんし、最終的には生徒の自己判断です。トレーナーという立場を離れて一舞台人としての感覚では「弱い、甘い」と思ってしまいます。
声を変えるというのは本来とてつもない作業なのです。そこを続けていっていつか強い声を手に入れることができると思います。自分に対してあまりに過保護な訓練は時間だけが過ぎていき何も身につかないということにもなりかねませんよ。(♭Σ)

Q.ビブラートのテクニックとは

A.ビブラートは、あまり意識しすぎるとわざとらしくなってしまいます。意識しなくても、自然にビブラートはかかります。特に、クラシックでは、ジャンルによってはビブラートをかけない歌もあり、基本、あまり、ビブラートを必要としないが、ポップスなどは、必要になります。喉で、無理してやろうとせず、ビブラートも、一種の表現ですので、身体を使って、かけることが大事です。ビブラートをかけるところは、主に特に、曲の盛り上がりなど、その曲の中で大事なところで使われることが多いのではないかと思います。コツとしては、広いところで歌うことを想像して、一番遠くにいるお客様まで、届くように歌うことを想像しながら練習してみるといいと思います。意識は、遠くまで声をとばすイメージですが、身体の使い方は、背中など後も使って歌うようなイメージで歌うと、声が遠くまで届きます。後にもお客様がいる思って、歌ってみてください。(♯Ω)