Q.音がとれません。
A.レッスンでは歌を覚えるときに徹底して、ピアニストの音で覚えてしまう。思いこみを直して、そのうちに正しく覚えられるようになれば、かまわない。伴奏、セッションの経験を積んでいくのもいいでしょう。
他のレッスンの中ではあまりありませんが、ここのレッスンはアカペラで歌うことも少なくないでしょう。
伴奏を弾くと音楽として歌いやすくなる。発声でも、声が出しやすいわけですね。それでチェックも甘くなり、もっと声の細かいことを聞くのに、邪魔になることに気づかないのです。アカペラで歌える力をつけるということからです。
Q.声ではピッチがとりにくいです。
A.声やバイオリンは、自分の耳が鋭くきちんとしていないと、震えたりシャープしたりします。たとえば、ドとレの間にも音があるでしょう。「あいうえお」というと「あいうえお」だけれど、「あ」と「い」の間にいろんな音があります。すべて自由な中で調整していく。不安定な楽器なわけです。
そういったものを固定するために、音高のはっきりしたピアノを伴います。キーボードは否応なしにドとレを分けているのです。この間の音は一つだけある。平均律でわけています。そういうものに合わせると、半音上がっている、下がっている、完全に上がりきっている、下がりきっているということがわかりやすくなります。伴奏に合わせて歌えればかまいません。
Q.自主トレーニングで、迷ってわからなくなるときつい。
A.あまり考えずにトレーニングしたほうがいいのです。わからなくなったり、きつくなってしまうなら、もっとのんびりした形で進めましょう。いろいろなタイプの人がいるし、伸び方も違います。
Q.ステージに出る勇気がもてません。
A.表現の活動をしようと思っていながら、場に出ないで、学校に来る人というのは、スロースターターの人が多い。それを若くして、うまくやれてしまった人と同じような感覚で見て、それと同じ感覚でやれと言っても、すぐには無理です。それができないから、こういうところにきているわけです。そこで受け入れ口は広くしています。ここに長く関わっていると優秀になっていくのですが、入ってくる人は、必ずしも最初からそうではないでしょう。だからこそ選んでここにきている。時間の中でつくりあげていくのが歌やせりふなのです。目標へのプランをどのラインで引くかを学びましょう。
Q.うまくなっても、自分で仕事を見つけたり、活動の場をあまり得られないのですが。
A.プロダクションに入れば、全部やってくれたのにと思ってしまうのでしょうか。本当にうまくなれば、そうなります。ただ、 何をもってうまくなるとうのかを考えてみてください。
Q.打たれ弱くなって、あのときはああやればよかったというふうになってしまうのは困るのですが。
A.日頃、精一杯、厳しくしてやればいいでしょう。さらに、もっと厳しい場を求めていくことです。
Q.生徒が出演でチケットのノルマがあるのはどう思われますか。
A.私はそういうやり方は好きではありませんから、とりませんでした。研究所では、お金を出しても買えない、絶対にそのチケットをちょうだいというふうにならなければいけないのでしょう。
Q.バンドなどで、ノルマのチケットを「買って」ということは、つらいのですが。
A.人それぞれの事情はわかりません。そうやって、活動が続いていくなら、それも楽しんでいくコミュニティがあることでいいとも思うのです。
Q.オーディションを受けにいって、そこで歌わせてもらうのは。 A.それはそれで力試しになるでしょう。学校の舞台では、守られてしまいます。うまくならなくても、出してもらえて歌わせてもらって、拍手をもらえる。経験になりますがキャリアにはなりません。そこの考え方や、やり方以外では動けなくなってしまうと、埋もれてしまいます。 Q.学校を出たら、世の中とぶつかってしまうのですが。 A.実際にはいろいろな人がいて、いろいろなことでぶつかっていくものです。学校というのは、ぶつからないわけです。今の教育では、「ぶつかってしまうのはよくない」というような話で、今や先生と生徒もぶつかることもない。教育もサービス業になりました。 プロの現場というのは、ぶつかり合いです。仕事だからお金を得るのに、いい加減なものはつくれない。そこの感覚が、金銭も絡んで微妙な位置づけにあるわけです。 本来だったら、学校で学べるのに、学校というのは、人をダメにもします。そういう学校でずっとやっていたら、どこにも通用しなくなってしまう。(♪)