Q.歌のサンプルの基準とその理解する方法を教えてください。☆
A.ここでどういう基準で取り上げているのか、聞いても感動しないというのはどうでもよい。そう簡単に感動を導けるものでないでしょう。皆がやってまねができない、そこまで動かせないということがあればいい。名曲や名唱ばかりを取り上げているわけではないのです。その歌手の個性の目立っているものを取り上げようとしています。
ぶつかっていくのはあたり前、ぶつかっていくものを出していきます。あなた方が全員嫌いでも、世界中でこの歌い手のものだったらすべてほしいという人がいるという歌い手を取り上げています。そういう歌い手ほど、最初は他の人には理解されないわけです。それでいいのです。個性が強いとか、熱狂なファンがいるというのは、敵も多い。それを認めない人もたくさんいる。そのほうが逆に有利、というよりは人と同じようにやる必要はないということです。ただ学べることは多々にあるということでやってみましょう。
Q.レッスンのセッティングとは。
A.レッスンの目的をそれぞれに決めてみる。自分が使えるように使ってもらえばいいのです。よくどこを見ているのかと聞かれます。2、3年目だと、ここからフレーズをどう伸ばすのかとか、ここをこうやってみて、と試す。どういう切り方をするか。聞いているところは、まず、そこだけです。
Q.具体例として、基準のアップとは。
A.「わが身」の「み」はどういうふうに終わって、それから「つ」のところにどうなって、「だろう」がどうなるか。期待する設定値として、それは5、6年目への課題で、1、2年生にあるわけではない。3、4年目くらいまでの課題は、誰でもわかるところです。全部がつながるとか、どこかで張れるとか、その後にちゃんと落とせるとか、しかし、そんなところで勝負をしていたら、うまくこなせて卒業になってしまうでしょう。やることがなくなってしまう。でも歌が本当には聞こえない。なぜかというと、まだまだ細かいところやきちんとしたところをやれていないからです。
Q.詰めていくとはどういうことですか。
A.難しいのはいつも言っているように、出だしのわずか、3秒、あるいは今やったようなところで、きちんと詰められるか、そこを詰めるために、前のところはどのくらいセーブしなければいけないのか、です。作品はまとめる方向で練習するだけでよく、ぶっ壊す方向で、声を大きく出すのも必要です。こういうレッスンに関してはなるべくライブに近い感覚でしょうか。頭で計算してというより、体がそれを知っていて、ちょうどいいくらいに落ちつくというほうが必要な気がします。
Q.3、4年目は、どのくらいが目安ですか。
A.ここで3年くらいやることは、次の3年に課題設定ができる力をつけていくことです。いつまでたっても課題があったほうがいいわけです。レッスンをするにも、ひとりで勉強するにも、そのセットの力がいります。ひとりになってしまうと、声が出ないとか高いところが届かないとか、意味のない問題に苦しむ。自分が取り組めるところにきちんとおかなければいけないのに、だいたいは、見ていない。自分の足元を見ていないからです。
Q.音色やフレーズは出てきたように思います。
A.そういうのは、トレーニングで出てくるもので、その辺が3、4年目だと思うのです。自分の色が出て、歌を動かすというのが、どういうことかわかってきたというのを、5、6年目につなげて、それ以外のところをどうおさめるのかと、全体から見たバランスから考えて、どのくらいのことが可能か、こればかりは、自分でやって知っていくしかないです。
そういうのを自分の練習の中で知っていたら、頭で考えるのではなくて、自分でやれることの最高のものがセットできる。自分が何ができるか知るということは、大切なことだと思います。
Q.発声への取り組み方について、教えてください。
A.言うのは簡単ですが、なかなか難しい。プロの感覚でいうと、どこかで形を決めて、固定させてつくってしまえばいい。しかし、それはあまりいいことではない。
ここの課題に関しては、こういうことはできない、じゃあ、どういうアプローチをとれば、しのげるとか、でも、最初は、どんな手でもいいのです、全力投球で取り組む。取り組み方、姿勢をみます。どれも返せるような形にしていくと、勉強になるからです。
Q.無駄を省いてレッスンに臨みたいです。
A.破ることとまとめること、両方とも必要です。破ることばかりやっているとまとまっていかない。まとめてしまうとつまらなくなってしまうから、ひとつくらい色を出して、後はどれだけ歌わないで済ませるか。声をなるべく使わないでどうすればいいのか、なるだけ感情移入しないで伝わるためにどうすればいいのかというように、省エネといったら変ですけれど、効率化していく。それは、全体をみる。つくるということにつながります。
Q.目一杯歌うと、前に出して歌いすぎていると言われます。
A.結構、歌っていますね。そういう歌い方自体、日本人はあまり好まないようなので、どう取るかはむずかしい。このように歌うのもひとつかもしれませんね。ある意味きちんと踏んで、切り替え、自由度を得ようと動いています。どちらかというと、このままでは、まだ押したりひねったりしているようなやり方ですが、ひとつの作品として、次の可能性がありうる。その辺を研究してください。(♪)