Q.切れやすい子どもに呼吸法を教えてほしいのですが。
A.いつでもいらしてください。切れる状況では、呼吸が止まるようなものなので、脳のセロトニンが弱ると言われています。ゆっくりと深く呼吸することを日ごろから習慣づけるようにしてみてください。大きく息を吐くだけでよいのです。体の方から心をコントロールするのです。何かしら一つのことに専念して、一所懸命になるときを共有しましょう。共有できなければ、子供の前でひたすら一心不乱に物事に取り組む姿を見せるところから始めましょう。
Q.ポピュラーのプロ歌手は、一人で発声を学んでいるのではないでしょうか。☆☆
A.はい、ほとんどはそうですが、最近はプロになってから、ここにくる人や、最初からヴォイトレにいく人も増えました。
彼らの発声は、彼ら自身の思うようにつくったもので、歌唱と一体化しています。それゆえに、声楽などとも共通するベースの発声と異なることが多いです。
私は、ポップスのプロ歌手は、結果的に自分が表現するに足る声をもっているのであり、発声という学び方を経ているわけでないと思っています。また、その必要もないこともあります。発声を学ばないとプロになれないのではないからです。私は、理想的な発声とは、歌唱の支えとして、より大きな表現の可能性のためにあり、現時点の歌唱とは別と考えています。
Q.オペラや声楽は、音大に入らないと学べませんか。
A.いえ、私のところには、8つの音大卒10年以上のキャリアのトレーナーたちがいます。日本では、社会人が大学へ入るのは難しく、音大などで10代の人と机を並べ、教養講座まで受けるのでは、時間も学費も負担が大きいでしょう。一般の人の入れる研修所などもあります。私のところでも、希望に応じています。
Q.声の技術と歌唱や表現は別のものと考えますが、どちらもレッスンで扱われるのは矛盾しませんか。 A.矛盾することもあります。声楽や合唱団、ミュージカル、劇団などでは役割分担することが多いのですが、ポップス歌手、役者、一般の人、ビジネスマン相手では、トレーナー一人で兼任するのが普通です。 声の技術は、表現の可能性を高めるための一つの手段ですが、絶対ではありません。ときには、その技術が表現の可能性を限定することもあります。それゆえ、ときには、ストップしたり、忘れる方がよいともいえます。これは、そんな驚くことではありません。私はここでもいつもすべてを忘れるように言っています。
Q.ヴォイトレ、声楽を使わず、その人の歌や表現だけを評価するレッスンをすることはありますか。
A.研究所では、J-POPS、アイドル、タレント、カラオケなど、何でも扱っています。表現に対してはプロデューサー、演出家、指揮者、オーディション審査員、あとはクライアント、企業など、すべて、それを判断する立場にある人を念頭において、二つの頭で考えています。アーティストをみるとき、よくわからない分野では、そこのメンバーや他の一流アーティストの感性を拝借してみるのと同じです。
このように、多くの視点をとれるというのは、この研究所の最大の長所です。私は、常に7つの耳をもっていると言っていますが、それで、他のトレーナーにも分担してもらうと10くらいの耳になるのです。(「トレーナー共通Q&A」参照)
Q.合唱団向きの声だから声楽など習うなと言われました。
A.私のところは、アイドルグループから合唱団、ミュージカル出演者まで幅広くいらしています。声楽はどこの声の基礎にもなりえます。合唱団向きにしない方がよいと思いますが、本当に学んだら使い分けもできるようになります。
Q.声域、声量、発音をすべてよくしたいと思いますが、同時に進められますか。
A.多くのトレーナーは、声量を抑えさせて高音への声域獲得を行います。効果としてわかりやすいし、納得しやすいからです。そこで何とか発音できたら、あとは伸び悩むだけ、というのが典型パターンです。声量と声域を同時に獲得するのは難しいことです。私は、音色と声量からアプローチします。共鳴の獲得、呼吸と声の結びつきを優先することをメインにています。ただし、この方針では時間がかかることもあります。他のトレーナー同士で分担しながら、行うことも多いです。
Q.スクールで、発声がよくないから直した方がよいと言われました。 A.声の状態の悪い人、そこまでも使っていない人がたくさんいくところでは、直そうとすることだけに終わっていることが大半です。本当に高いレベルからみるなら、多くの人の、間違っていると言われる発声は、間違っている以前のレベル、まだ準備の整っていないところにすぎないのです。問題は、直したところで大した成果にはならないことです。1、2割よくなって終わりで、その後、伸びないと、私がこれまで言ってきた通りです。
Q.なぜ、「2、3ケ月くらい試してみてください」と言うのですか。1回でわからないのですか。
A.1回でも、私は、90%の人について90%はわかります。ただ、10%の人はわからないし、わかったつもりでも、10%ほど別の道の可能性が残っています。一言で「わかりました」と言うのは簡単ですが、それは偏見になりかねません。
例えば、2、3ケ月のレッスンで大きく変わる人も、そこまで変わらない人もいるわけです。まして、ここではその先に、どのトレーナーとどのメニュで進めるかを、必ずしも初回だけで決めたくはありません。
本人も目的が曖昧で、声も定まっていないことが多いのですから、あわてずにトレーニングの軌道に乗せていくこと、そこからプログラミングしていくことです。
トレーナーのどの引き出しを主として使っていくかを共に考える時期があることが好ましいと私は思っています。大切なのは、オーディションのように1回で決めつけるのでなく、長い眼で可能性を少しでも大きく見出していくことです。
Q.劇団員ですが、声が軽くて細いです。背中に響く声にするようにと言われます。 A.役柄か日常かで、やや高い声を使ってきたのでしょうか。少し低めにしてみると、声に芯があるかどうかがわかります。あるなら押し付けず、胸声をまとめていくようにしてください。なければ、声を掴むきっかけを得ることからです。喉声は傷めやすいのでトレーニング前にレッスンを受けた方がよいでしょう。(♯)