A.人間性が声に伝わることはあると思うし、その人の状況や状態が声にみえてくることは、よくあります。それらをみて、私たちもレッスンを組み立てるのです。しかし、すぐれたアーティストは、すぐれた作品を生む出す人たちであって、すぐれた人間性とは関係ありません。現実の状況や状態で作品がだめになるようでは、プロ失格です。プロとアーティストというのも異なるとも思いますが。仕事として、芸術としての声の専門家は、声で演じられる人であって、それまでの人生体験や心身の状態が、声にそのまま出るのは、アマチュアです。芸術表現のために、声だけでなく多くのことを学び、思想や思いを表現している、その豊かな表情やことばに、ファンがつくというのならわかります。残念ながら、若いころから奉仕活動や人のために尽くしている人が、プリマドンナになったような例は、私は寡聞にして知りません。多くの場合は、順番は逆だと思います。(♯)