A.一流になるためには、いくら理論や分析をして、方法を取り入れてみても不可能です。今日、音声科学は、30年前とケタ違いに進歩し、いろいろなことが分かってきました。また生理的にもかなり多くの発声に関する理論や方法の間違い(というか、仮説)も修正されてきました。
しかし、トレーニングによって人がどれだけ育つかがもっとも大切なのに、秀れた人材の輩出という点では、30年前よりも劣っているかもしれません。70点の人は多くなったが、90点の人が出なくなったのは、教育の方向や方針、トレーニングの問題が大きいのです。声だけに限っては、その傾向はより顕著です。もちろん同じルール上で競うスポーツのように、比較は単純ではありませんが。
どの分野であれ、セミプロ化すると、底辺のレベルは上がりますが、ずば抜けたプレイヤーが出なくなってくるわけです。逆にいうと、昔の人は理論、分析もしていないけど、努力によって、すぐれた技量を手に入れたわけです。そういう現実に結果を出した条件や方法こそが、もっと研究されるべきなのです。すぐれた人はこうだと分析できても、その分析ですぐれた人を出せるわけではないのです。(♭)