A.表現やオリジナリティを踏まえて述べるなら、私はロマのバイオリンのようなもの、あるいはインドのカーストで音楽を生業とする人たちの演奏を思い出します。楽器は、ボロボロの寄木のようなものから本人自身がつくります。手製でも、その耳とそれぞれの楽器に合わせた調整や、それを活かす演奏がプロフェッショナルなのです。楽器を半分つくり変えるほどの調整もしてしまうのです。民族音楽とオーケストラに使われる楽器の優劣を簡単に述べることはできませんし、そのこと自体、無意味ですが、どの時代どの国にも、すばらしい演奏家も歌い手もいたということは事実です。
つまりは、すべては人間の力、その人をとりまく環境と表現へのあくなき欲求によるのです。それが有利で、才能が輩出した時代や国、地域もあれば、不利でまったく不毛だったときもあるということです。
私はあなたに、ここに述べたロマのすぐれた演奏家を目指して欲しいのです。自分のがどんな楽器であれ、それを疑わず自分流に最大限に活かせる工夫をして、最高に使い切るつもりでトレーニングにのぞんで欲しいのです。(♭)