発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.自分の声を聞いて、矯正するにはどうするのですか。

A.まず、お手本となる声を、繰り返しよく聞いて、憶えることです。お手本がなければ、修正していくことができないからです。お手本は、ご自分が目指すジャンルの、目標としたい声でよいでしょう。日常的に何度も聞いて、その声のすべてを憶えるつもりで取り組みましょう。聞いているうちに、自分がなぜその声に惹かれるのか、その声のどんな部分が好きなのか、少しずつ分析が進んでいくはずです。そうして、日々の自主トレで、一歩一歩、声を似せていくのです。

もちろん、ご自分の声を、レコーダーなどで録音して、比較するのも悪くはありませんが、当然、目標の声との隔たりが大きすぎて、がっかりしてしまうでしょう。それよりは、ご自分の耳で、自主トレなどのその場の声を、よく聞いて、似せていく方が、手間もかからず、モチベーションも下がりにくいと思います。可能ならば、いつも同じ場所で自主トレすることで、ご自分の声の小さな変化にも、気づきやすくなります。

もう一つ大切なことは、喉や身体が、必要以上には疲れないということです。どんなに似た声が出せても、喉や身体がすぐに疲れたり、荒れたりする場合は、発声そのものが間違っているか、正しいとしても、目標の声との、隔たりが大き過ぎて、喉や身体に、無理をしているということです。それでは、喉を傷めて取り返しのつかない状態になってしまうかもしれません。少しずつ近づけていくことを、肝に銘じて、自主トレに取り組みましょう。(♭Ξ)

 

A.自分の声を矯正するときに、声で判断するということはあまり考えないほうがいいです。それよりもフォームをどれだけ意識できるかということが早いです。指導者がいる場合は、フォーム、呼吸、舌、喉頭、唇、顎、お腹、胸、骨盤など、さまざまな場所がアドバイスされたとおりになっているか、自主トレとしては、そこに注視することがとても重要です。

声そのものは結果論です。たとえレッスンでうまく声がでたとしても、それはフォームなどが改善された結果いい声が出ているのです。自分でその声を再現しようとしても、フォームなどがうまくいっていない場合は再現されず、たとえ近い状態で再現されたとしても、どこかの違いが、別の場所の違いへと波及して結果的に悪い状態に向かうことも少なくありません。

声というのは、歌う場所、起きた時間、寝た時間、睡眠時間、前日なにを食べたか、どれくらい前に食べたか、メンタルなど、さまざまな要因で変化します。そう考えると、自分の声の聞こえ方だけで判断するのは正しいとはいえません。例えばスタジオが違うと同じ状態で歌ったとしても聞こえ方は違います。

では、何を基準にするかといえば、フォームや呼吸などです。フォームや呼吸などがうまくいっていれば、外に出ている声は、同じような再現性をもつことができます。

指導者がいない状態で自主トレのみで自分の声を矯正するのであれば、一曲を録音してその前後にプロの歌手が歌っている同じ歌を録音して聞き比べてみましょう。そうすることで、自分とプロとの違いが鮮明になり、トレーニングが考えやすくなります。この聞き比べは、なるべく多くのプロと聞き比べたほうがいいです。(♭Σ)

 

A.ここでは、自分の声を聞きながら今よりもよい状態にしていきたい、という解釈のもとお話します。私たちは誰しも、オンタイムで自分の声を客観的に聞くことはできません。自分の声に聞き耳を立て過ぎると内耳で声を聞く方に偏ってしまい、声が前に出にくくなったり(発声時の)感覚のバランスが崩れてしまいます。

声を聞きながら、同時に身体の感覚を頼りにしていくことが必要です。身体の支えがあるときの声、ないときの声を耳でちゃんと聞いて一致させる、という意味では、自分の声をよく聞く、聞き分けることが求められます。

歯を閉じて発音する(発声する)ことも、自分の声を聞きながら調整することができる方法の一つです。発音する題材を、歯を閉じた状態で明瞭かつスムーズに読めるようにするのです。自分の声(または発音)を聞きながら、発音が不明瞭な部分を察知し、その部分を整えていくのです。それによって息の流れや発音の位置が整い、口を開けて改めて読むと、声が進みやすい・発音が明瞭になっているなどの効果を実感できるでしょう。(♯α)

 

A.自分の声を矯正するためには、相当な慣れが必要です。矯正できるようになる前に聞きながら修正しようとすると、本来の修正方法ではない修正の仕方になってしまったり、却っておかしな結果を招くことにつながりかねません。これは、「声」というものが、楽器+プレーヤーという一体型になっていることが大きく関係します。つまり、自分で出しているときに聞こえている自分の声というものは、第三者に聞こえているものと異なっているのです。録音した声が自分の声ではないように聞こえるのも、これが影響しています。自分の声の聞こえ方というのは、時と場合によって感じ方が微妙に変化します。

ですので、私個人としては、出しながら修正かけることは「行わないように」と心がけています。その代わり、目で見えるものや体で感じるものを目安に、レッスンの中でよしとされたものが何であるのかを、感覚ではなく動かぬ証拠として理解すること。そして、それに集中して誤差を減らす訓練を繰り返し行い、体で覚えこむこと。これらを第一条件に心がけています。そのうえで対応できるようになったら、音や響きの感覚をすり合わせていけばいいのです。大事にするものは「体の感覚>声の聞こえ方」です。(♭Я)

 

A.声を出した瞬間の音を自分自身で聞くことは、不可能なことです。音は出した瞬間に、自分のもとに戻ることなく空気の中に伝播していくわけです。自分の音を聞こうとして、音を自分にひきもどすような歌い方をしたり、音をその所に押しとどめようとしてしまうことがよくあります。しかしこれは間違ったやり方です。自分の声を自分で聞くということは本当の意味ではできないと認識してください。

ではどのように自分で矯正していくか。ある海外のオペラ歌手は、「音は聞かないけど振動を感じる」といっていました。音は空気中になっているものだからとらえられないけど、振動なら、自分の骨に感じることができるからです。音を出したときの頭蓋骨、ほほ骨、上あご、耳の穴、の振動の感覚が頼りになるかもしれません

しかし、これも即効性がなく振動を自覚するにはなかなか時間がかかると思います。そこで、一番おすすめなのは、なるべくいい音声で録音できるレコーダーを使用し、レッスン中の声を録音して、トレーナーがよいといった声とだめといった声を聞き比べることです。音がどう違うのか、体に何が起こっているのか、どこが力んでいるのか、どこがリラックスしているのかを感じ取ることで、直していけます。(♯β)

 

A.自分の声を聞く、ということは、意外と難しいのです。もちろん、自分の録音した声を聞いたこともあるでしょう。「これが自分の声」、違和感がありますよね。確かにその声は、他人がリアルタイムで聞いている声、とは少し違います。でも、自分の体から聞こえてくる、自分の声だと思っている声、よりは、「自分の声」に近いのです。そういうわけで録音をぜひ聞いて欲しいのです。

その上で、録音に頼りすぎないようにしましょう。自分がいま出している声が、相手にどのように聞こえているか、を自分でリアルタイムで聞こえるようになって欲しいのです。

楽器でもそうです。自分で弾きながら聞いてる音が、客観的に他の人にどう聞こえるか、を考えているのです。よく音楽家が、目を閉じて弾いているのを見たことがあると思います。あれは、客観的にどう聞こえるか、を考えているのだと思います。前の音、いま出す音、次の音、それらを有機的につなげるのが音楽家の役割です。

今の自分の声が正しく聞こえるようになれば、矯正するのはそんなに難しくありません。トレーニングと理想の声のイメージがあれば、必ずそこまで到達するでしょう。(♭∴)

 

A.まず知らなくてはならないのは、自分が聞いている自分の声と、他人が聞いている自分の声とは違うということです。他人が聞いている声の正体は空気の振動です。発声者自身はそれに加えて、骨伝導等の内側の振動も同時に聞いています。つまり、他人が聞いている自分の声は、本人が思うより貧弱な場合が多いです。この差に気づくことが声の修練の第一歩です。

手っ取り早いのは、自分の声を録音して聞いてみることです。録音を聞いて「自分の声がこんなに変なはずがない」とショックを受けることは誰しも経験していることだと思います。でもそれは他人が聞いている声なので、目(耳)を背けず、何度も録音してよく聞きましょう。次第に見えてくるものがあるはずです。

次に、なるべく広い場所(ホールや教会など)で、マイクなしで声を出して、返ってくる声に耳を傾けることです。録音と違い、リアルタイムで自分の声を客観的に聞く練習です。このとき、自分の内側で鳴る声でなく、反響した音を聞くように努めましょう。

最後に、美しいものを知る努力をしましょう。自分の声が客観的に聞けるようになっても、それがよいか悪いかを選別するのは、最終的にはセンスの問題となります。センスを磨くには、いいなと思う人の声を聞くのが一番ですが、それ以外にも優れた美術や建築やデザイン、ファッションや映画などに触れることが、声に大きな成長をもたらしてくれると思います。(♯∂)