発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.風邪など、体調の悪いときに、トレーニングしてもよいかどうかの判断の仕方を知りたいです。

A. 喉がよくない状態のときには、喉に負担をかけるトレーニングはよくありません。喉の状態をよくするためにヴォイストレーニングをするのですから、いつも喉を充分に休ませることが大切です。そういうときは、身体と息のトレーニングを中心にしましょう。トレーニングそのものよりも、それによって息、呼吸、身体をよい状態にすることがプラスになると思いましょう。トレーニングは、明日のためにするものだからです。

風邪のとき、咳き込むなら、息を吐くトレーニングもやめましょう。咳は声帯にとって、とても悪いのです。こういうときは、風邪が治ったときに、すぐに以前の状態に戻れるための備えたトレーニングを行なうことです。

身体は使わないと衰えますから、病み上がりのときも、声が出にくくなってしまいます。元に戻るのに何週間もかかることもあります。だから、回復してきたら、少しでも身体を動かしておき、状態が悪くなるのを極力、防ぎましょう。これは身体だけでなく、心にも言えます。常に楽観的に考えることが大切です。

ただでさえ、発声練習では、風邪の人がいたり、声帯の充血などで、風邪もひきやすくなります。マスクや喉あめなどで予防し、うがいや手洗いをまめにしましょう。ぬるいお湯やお茶を飲むのもよいでしょう。

トローチの服用は、喉に炎症を起こしているとき以外は不用です。たくさん飲むと胃に負担になります。喉を強く刺激するようなもの(メントール系)もいりません。喉あめは甘くなく、なめているというだけで、唾液の分泌を促すようなものでよいでしょう。風邪薬の鼻水止めに効く抗ヒスタミン剤や咳止めは、喉を渇かせることがあるようです。(麦門冬湯や響声破笛丸という漢方薬を勧めている医師もいます)

 

・POINT

生活習慣について声によくないことは、どのようなスタンスで考えていくかということによりますが、やはり、さけるべきことが多いでしょう。舞踏家やスポーツ選手にとってよくないことは、ヴォーカリストにとってもあまりよくないと思ってください。

寝不足では、声が出にくくなったり、喉にかかりやすくなります。ということは、声にとってもよくないということなのです。しかし、一睡もできなかったからといって歌えないというわけではありません。

ただトレーニングでは、自分の体調と声とを丹念にチェックしていくので、あまり不安定な要因をつくらないにこしたことはありません。毎日、同じ時間、同じメニュを続けるのが理想です。(もちろん、目的に合わせて変えるのはよいでしょう。)(♭π)

 

A.体調の悪いときのトレーニングは、体調と、トレーニングの重要度や必要性を天秤にかけることになります。差し迫った本番などがないのなら、休むのが優先順位のトップになりそうです。しかし、トレーニングの頻度が少ないのなら、安易に休むと声の維持に関わってきます。毎日トレーニングしているのなら、休むのも悪くないでしょう。

もう一つの条件は、体調不良の質です。風邪のような、喉や鼻の不調なら、どの程度の重篤さかが、重要です。熱もなく、軽い症状ならば、通常の8割程度のトレーニングを。微熱もあるのなら、市販の風邪薬などを服用して、喉と鼻と全身の症状が気にならなくなるのなら、やはり8割程度のトレーニングは大丈夫でしょう。

症状は軽くないけれど、どうしてもトレーニングをしたい場合は、市販薬や処方薬で、なるべく症状が気にならない状態にしてから、トレーニングをしないと、喉や鼻の状態を悪化させたり、発声のテクニックが乱れる原因になるので、気をつけましょう。

症状は酷いけれど、トレーニングをどうしても実施したいときは、実際に声は出さず、イメージだけでトレーニングをしましょう。喉や鼻や身体が辛いときに、声を出してトレーニングしても、上達どころか、これまで積み上げてきたものを、崩してしまうことになります。

重病でないかぎり、長くても数日のがまんです。逆に、症状が楽になってきたら、市販薬や処方薬で症状を抑えて、早めにトレーニングを再開することが大切です。(♭Ξ)

 

A.基本的には体調がすぐれないときには、休みましょう。体調や病気、メンタルなどの好不調は他人にはわからないもので個人差がありますので 、トレーニングということでいうと自分の尺度がとても大事になってきます。

仕事になってくるとある程度のレベルで「こなす」ということも技術の一つです。体調がどのような状態であるならばこのレベルまでは歌えるというような尺度や判断技術をもっていることもプロとしては大事です。

私たちも気をつけていても、体調不良になることもあります。本番前になどに体調不良になると「今は歌わない」などの判断をすることもありますし、次第に自分にあった薬や病院、医師などの情報などにも強くなっていきます。

質問の「トレーニングをしてもよいという判断の仕方」という点では、前述でも書いたように基本的に自己判断ですが、自分がやれると思ったらトレーニングして大丈夫だと思います。客観的な判断が欲しい場合は、医師に相談したりヴォイストレーナーに判断を仰ぐのもいいかと思います。私たちも結局は経験を積み重ねていって自分自身の自己判断をもつようなったので、最終的には「あなたが経験を積んで学ぶしかない。客観的な判断が必要な場合は第三者に相談」というのが回答になるかと思います。

指導者としては、クライアントがレッスンにいらっしゃっても喉の状態がよくないときや体調不良で喉を傷める可能性が高い音が聞こえるときは「今はトレーニングするときではない」という話をすることもあります。休むのも経験ですし、どのレベルの体調不良まではこなせるかということを知っていくのも経験です。(♭Σ)

 

A.体調の悪いときでもトレーニングする(したい)ことが前提のご質問のようですが、個人的には体調が悪いと感じる時点でトレーニングは休むことをお勧めしています。体調が悪いけど身体は動けるのでトレーニングしよう、声は出るからトレーニングしてもよい、ということではないのです。

そもそもトレーニングをする意味とは、よい体感を積み重ねてパフォーマンスを上げていくことにあります。体調が悪いときは、どんなに頑張っても、どんなにていねいに時間をかけても、本調子のときのようなよい体感に行き着くことはありません。むしろ逆に、いつもより身体が反応しにくいため、余計な力みが入ってしまい練習の質が下がります。わざわざ、よくない体感(歌いにくいと感じる体感)を自分自身に浴びせるようなものです。

そうと知っていてもトレーニングしたいと感じる場合は、気持ちが焦っている、何かやらないと不安になるといったメンタル面が影響していると思います。声を使う人にとっては、まさに身体が「楽器」なのです。「楽器」が整えばまたトレーニングを再開できます。体調が悪いときは、焦らず安心して、自分の楽器を治すことに注力してください。(♯α)

 

A.症状の度合いによって行なえることは変わってくると思います。

まず、風邪などの場合でも、鼻づまりなどがメインで喉への症状があまりない場合は、通常よりも軟口蓋を上げることを心がけるとよいのではないかと思います。

次に喉の炎症がひどい場合や咳がひどい場合ですが、これも状況次第ですが、ほとんど声が出ない場合やかすれてしまっている場合などは、無理をせず病院で適切な診察を受けることを最優先にしてください。その後、通常の声が戻ってきたころに、徐々に無理をしない程度に慣らしトレーニングを始めてみるとよいでしょう。

声に不調を感じると高音域が出しにくくなってくると思いますが、高音域を無理に出すようなことは絶対に避け、中低音域を無理せずに出せるような穏やかなトレーニングを中心に行ない、徐々に体調が復活してから通常通りのトレーニングや曲目に挑戦していくとよいでしょう。

体調が悪い場合は、早めに休息と栄養管理を行なうことも、大きな故障の防止に繋がり、セルフメンテナンスとしてはとても重要なことです。(♭Я)

 

A.私の場合は、風邪をひいて、ものを飲み込んで痛いなと感じるとき、つまり喉に炎症があるということなのだと思うのですが、このときに練習しすぎると、次の日声がかれてしまった経験から、喉が腫れているときは歌わないというマイルールにしています。鏡で喉を見て赤くなっているときは要注意なのかと思います。

また、貧血だったり、生理の初日など、血の巡りが悪いなと感じるとき、ふらつくときも歌わないようにします。女性は生理のときは、声帯が若干浮腫むそうです。なんかおかしいな、声が出しにくいな、声帯に結節やポリープができたのかな、と思って耳鼻科に行き、何ともなく、次の日に生理が来たということが、今まで何度となくありました。声帯が浮腫んでいると、練習しても微調整がきかず、無理して押し出してしまい、かえって変な癖がつくので気をつけるようにしています。

後は、気持が乗らないときにあえて歌わないようにすることもあります。少し有酸素運動をしてみて、すぐに身体が反応してくるようであれば練習しますが、本当にメンタルが不調で、歌いたい気がしないというときは素直に心の声に従ってお休みにします。(♯β)

 

A.本人が「トレーニングしてもよいかな」と思えるほどの体調であれば、しても構わないと思います。そもそもこの業界は、「風邪で体調が悪いので休みます。」というわけにはいかないのですよ。一度でも休んだら、二度とその仕事は来なくなります。それを考えたら、少々体調が悪い、くらいではトレーニングを休む言い訳になりません。(もちろん、もし本当に立っていられないほどなら、何もかも忘れて寝ていたほうがよいです。ただ本当に現場の仕事があるなら「行かなければならない」ということは忘れないでください。)

体調の悪いときのトレーニング手順を書きます。ていねいに時間をかけて、身体の基本から順番に行なってください。体操で充分に身体をほぐす。息のトレーニングを長めにして身体を起こす。発声練習をする。歌詞を読む。リズムとコードの確認をする。余裕があれば歌を歌う。

余談ですが、私は40度近くの熱でも仕事をしたことが2回あります。(コロナ禍の前は、音楽家の間では割とよく聞く話でした。)このときのコツは、とにかく体調が悪いとばれないこと。どちらのときも、そんなにシビアな現場ではなかったので、まあ身体を運んだわけです。そして全力で歌わなくてもよい稽古だったので、抜き目に歌って「ちょっと調子悪いのかな」くらいに思われることができました。(♭∴)

 

A. 結論から言うと、人それぞれです。

身体や声帯の強さも、感染症罹患時の回復スピードも人によって違います。

私の師である歌手は、風邪を引いても一日で治るそうです。なので、彼に言わせると「風邪を引いた翌日から歌っても大丈夫」ということになります。筋肉ダルマという表現がぴったりの、強靭な声の持ち主です。

かたや私は風邪を引いたら最低2週間は不調で、その間に徒に練習をすると回復が遅れることを、幾度もの苦い経験で知っています。ですから私に言わせれば「一切トレーニングするな」ということになります。これでは仕事にならないので、とにかく風邪を引かないように細心の注意を払って生きています。

師と私、別にどちらも間違ったことは言っていません。それぞれ自分の身体で実験した結果が異なるだけです。ただ、その結果を他人に押しつけると軋轢が生まれます。

他人の言うことは鵜吞みにせず、あなたはあなたの身体でデータを取ってください。そして回復が遅いタイプだった場合は、トレーニング以外のことをしましょう。たとえば関連資料を読んだり、他人のパフォーマンスを見て研究したりという、元気なときには後回しにしがちなことをです。(♯∂)