A. 次の順でやってみてください。
1.顎をひく
ほとんどの人は、顎がまえに出ているので、斜めうしろにひくことです。胸の位置を少しあげてからひくと、首や喉を圧迫しません。親指で顎を強く押してみてください。この状態で声を出すとよいです。
耳のまえに顎のちょうつがいがあります。これは、しゃべったりやわらかいものを食べるときは、動きません。しかし、大きいものを口をあけてくわえるときや、固いものを噛むとき、下顎のつけ根のところは下がります。顎と舌の余計な動きを抑えるために、エンピツやワリバシをくわえさせるトレーニングもあります。力が入るときは、顎を左右や前後に動かし、楽にしましょう。
2.舌は平らにする
喉がつまる原因の一つに、舌が固くなることがあります。舌根(舌の奥の方)が盛り上がると、口の中が狭くなり、へんに共鳴した、つめた声となります。すると、音色も発音も不安定になります。舌が平らになった状態を鏡で確認して声を出してみましょう。
ビデオなどで、声楽家やゴスペルシンガーの歌っているときの舌の状態をみると、ぺたっと平らにくっついているのがわかります。舌が平らになって、舌先が下の歯の裏についている状態に保ちます。このとき、喉仏が下がっています。
強い声を出そうとして力を入れると舌がひっこんで、喉のじゃまをします。それで、喉仏があがり、喉声になりやすいのです。
舌は、実際はかなり大きなもので、喉の奥深くまで届いています。そして喉頭につながっているので、舌を前後に動かすと、喉仏が動きます。どうしても力が入るなら、一度、舌を口の外へ大きく出して、ひっこめてみましょう。
ろれつがまわらないとか、舌や顎に力が入るなどということは、舌を回したり裏返してみたりするトレーニングで、ある程度、解決できます。しかし、根本的に直したい人は、そういうところで左右されないように声を深く使うことをイメージや感覚から変えていくことです。
【参考】喉のあけ方[この項目は:『「医師」と「声楽家」が解き明かす 発声のメカニズム』萩野仁志・後野仁彦(音楽之友社)2004年より引用、一部省略。]
フレデリック・フースラーとイヴォンヌ・ロッド=マーリングの『うたうこと』(音楽之友社、1987年)をもとに、大まかに声の出し方を2通りに分けて考えてみましょう。
イ)「喉を狭めて声を出す方法」=標準的日本人が普通に出す声
歌謡曲やミュージカルなど、語りと同じ感覚で歌声を出すと、声が“前歯に当たる”感じになります。喉はやや上がり気味で狭くなります。下あごは上げ気味になって、浅く平たい印象を与える声が出ます。口は横に開く感じです。
ロ)「喉を広げて声を出す方法」=欧米人的(イタリア人的)な声
日本人でも、少ないながらこのような声をふだんから出している人もいます。声が“胸に当たる”もしくは“うなじに当たる”感じで、深みのある、歌唱では丸い感じの声になります。喉は下がって広くなり、下あごが下方に開いて首と近づきます。口は縦に開く感じです。
(ついでに、この本では、「従来行なわれてきた『頭から声を出す』『顔に声を持ってくる』『軟口蓋を上げて声を出す』『頬を上げて笑ったような顔で声を出す』『重心を前にかける姿勢で歌う』などの常識的に正しいといわれている方法は、日本人によく見られる、いわゆる喉を狭くして発声するという習慣が、より強調されてしまう場合があります。」という指摘もあります。)(♭π)
A.「喉をあける」というのは、よく耳にする言葉ですが、実際にはどの部分をあけるのか、また、本当にあける必要があるのか、この言葉を鵜呑みにして、盲信している人も多いことでしょう。
まず、喉というと、口の奥から声帯までの部分、つまり首の上半分の気管の辺りを指すように思います。ここをあけるとは、ここを広げることですが、そんなことが本当にできるのかと、皆さんは思うかもしれません。しかし、人間の身体とは不思議なもので、あけようあけようと、毎日がんばっていると、少しずつ広がるようになり、やがては当たり前のように、広げられるようになっていくのです。
問題は、このことが声にどんな影響を与え、どんなよいことがあるのかということです。
オペラ歌手(声楽家)にとっては、声が太く聞こえるようになるので、特に低い声を出すアルトやバスにとっては、ぜひ手に入れたいアイテムになります。また、ソプラノやテノールにとっても、ドラマティコと呼ばれる太い声をめざす人には、必須になってくるでしょう。しかし、細く可憐な声をめざすソプラノや、オペラ歌手以外の分野の人には、ちょっとじゃまな扱い難いアイテムかもしれません。
(♭Ξ)
A. 言葉のままで言うと、喉をしめるの反対が「喉をあける」です。喉をしめると息の通り道が狭くなる、喉まわりに力みが入り続ける、主にこれらの理由で声が出しにくくなります。歌唱の際に喉が苦しい・辛いと感じるときがまさにそうです。そうならないために、息の通り道を確保し、余計な力みを解放してあげるために「喉をあける」と表現することができます。
息の通り道をつくる、力みを解消するには、つまり「喉をあける」には、まず顎を緩める(顎を動きやすくする)ことです。たとえば、母音アの発音では「顎が下りる」ことを意識します。「顎が下りる=顎が緩む」ということです。力ずくで下ろすのではなく、操り人形のイメージでパッと下りる感覚です。顎が下りると喉頭(喉仏の辺りにある器官)の動きも劇的に変わります。喉仏に指を当てて顎を下ろすと、喉仏も同じタイミングで下がるのが分かります。つまり少し下がる分だけスペースをつくることができるのです。
ちなみに、もし顎の動きが少なくなると、口を動かしにくくなり喉がしまります。また顎が下りない、自由がきかないという場合は、顎や口まわりに余計な力みが入っているということです。(♯α)
A. いろいろな表現方法を使って説明する人がいますし、最近ではテレビなどで芸人やタレントが声が出ているときの表現として(よし悪しは別として)使うこともあります。解釈が必ず一致するかはわかりませんが。ヴォイストレーナーの立場から見ると、喉をつめたような発声方法の逆であり、それでいて息漏れをしていない状態という解釈になるのではないかと思います。
喉をつめたような、すなわち無理をして絞り出しているように聞こえる声というのは、その人にとって不自然な出し方に思えますし、逆に息漏れ声のような状態であっても楽器が正常に使われておらず故障を起こしやすい状態になると思います。
「喉をあける」という表現で一番しっくりくるのは、「赤ちゃんの泣き声」から「小学生くらいの元気な話し声」ではないかと思います。身体が必要な支え以外は自由で過度な力みがなく、口の中も自然に広く使え、楽器がしっかり鳴っている状態。大人になっていくにつれて、口の中が狭くなったり、声をしっかり使う機会が減ってきたりということで出しにくく感じる人がいると思います。その点を原点回帰して、子供のように元気に発音するように心がけてみてはいかがでしょうか。(♭Я)
A. 咽頭と言って、口をあけたときに見える口蓋垂の奥に空気や食物の通り道があるのですが、その部分の空洞を確保するということ、そして喉頭の声帯のまわりの筋肉を固めないということかと思います。
咽頭に関しては、軟口蓋がさがっているとこの空間が狭くなってしまうので、軟口蓋もあげておく必要があります。
よく、あくびを意識して息を吸い、息を吸っている感じで歌いなさいという指導者もいますが、この感覚が喉をあけて歌うということです。具体
的なやり方ですが、前頭筋を持ち上げて眉を引き上げ、眼輪筋を緊張させて目を大きく見開き、口蓋垂を引き上げて軟口蓋を持ち上げて、頬筋を唇の方に向かって伸ばし、口輪筋を前方に突き出して唇を縦にあけます。
目安として息を口から吸ったときに喉の奥の壁がひんやりするとよいでしょう。喉を閉めて声帯周りの筋肉を無駄に力ませないためにも、あくびのまま声を出して、喉の力を抜くことです。(♯β)
A. 医学的・解剖学的な説明は、ネットを調べるといくらでも出てきますので、ここでは私のレッスンや体感に沿った話をします。
喉をあける、というより、逆に喉のしまった状態を考えるとわかりやすいかもしれません。高音を強く出そうとして喉が痛くなる、文字通りしまった感じがする、というのはどなたも経験があるかと思います。喉をあけることに神経質な人もいますが、普通の状態の方が普通にお話しする声は、喉があいた状態です。むしろ問題なのは、自分のキーに合わない曲を無理に歌って声を出そうとして、喉がしまる、ということなのではないでしょうか。
日本人は「まね」がもともと大好きな国民性なのか、クラシックでもないのに、原曲のキーにこだわりすぎるように感じます。自分に合った声域で、つまりはじめは自分の話す音域で、歌えばいいと思います。そうすると喉がしまるということはあまりありません。(よくある質問で、「発声練習と歌がリンクしない」というのも、多くは発声のキーと歌の音域が違いすぎることが問題だと思います。)
喉のあいた状態を体感するには、あくびをすれば十分です。私のレッスンでは、よく「あくびをしてみましょう」と実際にやってもらいます。(♭∴)
A. 喉をあけると聞くと、声帯を開くことをイメージするかもしれません。しかし声帯は閉じた状態で細動して声を発生させる器官です。喉をあけることと声帯は分けて考えた方がよさそうです。
よく言われる喉をあけるというのは、端的に言えば口腔内の体積を大きくするということです。あくびをした状態をイメージするのがわかりやすいと思います。
ではもう少しメカニカルに、あくびの状態を顔の上半分と下半分に分けて考えましょう。上顎が上がり、下顎は下がります。結果、口腔内の体積が大きくなります。
さらに細かく見てみましょう。上顎のうち硬口蓋(舌先で上前歯の裏側を後ろに向かって舐め上げた際に届く範囲)が持ち上がり、軟口蓋(さらに奥の固くない部分。風邪をひくと赤く腫れる場所)が高く上がります。下顎は顎関節を軸に大きく下がり、舌は浮き上がらず下顎に乗っている状態です。
これらが複合的に働いている状態が、喉をあけた状態といえます。また、特に軟口蓋を高く上げることを指して喉をあけるとも言います。
口腔内の体積を大きくとることによって共鳴が得られ、声は軽い力でよくひびくようになります。(♯∂)