A. 舌がうまく前に動かないと、こもります。喉の奥、舌のつけ根に響きがこもっているのです。これは、寝起き状態と同じです。舌を高くし、前に声を集めるようにします。話し声も、やや高めにするとよいでしょう。
「イ」の口形で、アエイオウを言います。「イエイアイオイウ」
「イ」は、もっとも明るい母音です。(明るいものから順に「イエアオウ」、子音のtがイの位置と同じです。)
「ガナタラバパ」をくり返す。(タラは、舌先で発します)
もし声をのみ込むような状態で、奥の方でしゃべっているようであるのなら、軟口蓋と歯を意識して、唇を使う音で顔面にもってくるようにします。(バ、パ、マ行がよいでしょう。)(♭π)
A.「口の中を空けない」・「喉を開けない」ことです。これだけで、太く暗い声は細い声になり、明るそうに聞こえます。また、口先を大きく開けることも、声を大きくすることに役立ちますが、やはり少し暗めになりがちなので、取り組み方に気を付ける必要があります。30年程前までは、オペラ歌手のソプラノとテノールは、細い声があたりまえでした。その影響で、アルトやバスなど低声の歌手までが、細い声で歌うことが流行りました。バリトン歌手のフィッシャー・ディスカウはその筆頭でしょう。低い声はしっかり出せるけれど、太い声にしないのが、お洒落な感じでした。逆に、ソプラノやテノールなのに太い声が出せる歌手は珍しく、とても珍重されました。その流れが、最近の高声歌手の太い声ばやりにつながっています。15年程前からは、口は縦に開けるもので、決して横に開いてはいけない、と言われるようになりました。そうすれば、太く暗い声が手に入りやすくなるからです。実際に、昔の太い声のソプラノやテノールは、皆、口を縦に大きく開けています。
以前は、日本人の話し声は、小さくこもっているので、しっかり前に出す、明るくするということが盛んに言われました。よく聞かれた言葉は「口角を上げる」です。そうすると、いきおい口を横広に開けることになります。口を横長に開いて、さらに口角を上げれば、明るい声はあなたのものになるでしょう。(♭Ξ)
A. 明るい・暗い、大きい・小さい、などの判断基準は人それぞれです。やみくもに「明るい」を求めても、抽象的で行き着く先がわかりにくいと思います。まずは今現在の自分の声と、声の出し方に目を向けて、具体的に改善できる部分を見つけていきましょう。たとえば、声を出すときに顎は動いていますか。
「口が開く」というのは、顎が下りることで成立します。もし顎の動きがなければ、口があまり開いていない、口腔内の空間が少ない、ということが推察されます。そのような状態だと声がこもりやすくなるので、その結果として暗い声だと感じる可能性があります。その場合はぜひ顎に指を当てて、顎の動きを感じながら声を出す練習をしてみてください。
また、声を出すときに息が足りなくなりますか。暗い声ということは、はっきりした声ではないので恐らく息の流れも少ないのだと思います。その場合は子音Sを使い、スーッと圧をかけて安定した息を吐く練習が効果的です。息の流れを促すことで、声の出し方は驚くほど変わります。その声を「明るい」と感じるかは人によりますが、この二つを実践するだけでも、以前より明瞭な声になることは確かです。(♯α)
A. 声そのものというよりは「発音」や「発語」の仕方を工夫してみてはいかがでしょうか。特に「母音の発音」に関してですが、さまざまな国の言語の母音と日本語の母音を比べてみると、音色も数も明らかに異なることがわかると思います。
一例として、特に「ア」という母音をひとつ取り上げたとしても、イタリア語の「A」の母音(特にアクセントになっている部分は更に)は比較的明るく聞こえるのに対し、日本語の「ア」の母音は暗くこもりやすく聞こえる特徴があります。我々日本人は、他国の言語と比較して暗い印象のある「ア」の発音でも、その他の例えば「オ」などの母音に比べると明るめの発音となるため、「明るい」の基準がそもそも暗くなりがちなのではないかと思います。
日本語の母音の感覚以外にももっと明るい母音の音色があることを自覚することや、その発音をするためにはどのようなことが必要なのかを理解することで、少しずつ「明るい声」というのを手に入れられるようになるのではないかと思います。(♭Я)
A. 口を横にすると声は明るくなります。口角を横に広げると実感していただけると思います。ただこのやり方だけでは、喉頭を引っ張り上げて口腔内のスペースを狭くしているにすぎず、魅力的な声になっているかは疑問です。
頬骨、おでこ、いわゆるマスケラに声を当てて、声のポジションを喉元から目のあたりに持ってくることをお勧めします。
どうしても日本人の日常会話は、まわりの目を気にしてか、ぼそぼそとした声だったり、あまり声を張らずに話してしまうことが多く、明るく響く声とはほど遠くなっていると思います。目と眉を引き上げ、軟口蓋も張って、声帯がしっかり張る状態を作って息のスピードとともに声をおでこや頭頂部にあててみてください。ピンと張りのある明るい響きの声が出ると思います。(♯β)
A. なぜ明るくしたいのかということを掘り下げてみるとよいでしょう。あなたが声優志望なのか役者志望なのかヴォーカル志望なのかわかりません。しかしいずれにせよ、持って生まれた声が暗い声なら、それは天からの恵みなので「世界最高の暗い声になろう」と励む方が得策ではないでしょうか。暗い、というと聞こえが悪いですが、深みがある、渋い、威厳がある、安心感がある、頼れる感じ、モテるなど、メリットはたくさんありそうです。深いあなたの声に憧れている方もたくさんいると思いますよ。
その上で、もし「明るい声」を要する仕事がきたのなら、「明るい声にならなきゃ」ではなく「私は世界最高の暗い声だが、仕事のときだけ明るい声のふりをしよう」と自己肯定する方が得策な気がします。それでも仕事が続くならそれでよいのだし、仕事が途切れるなら得意を生かせる次のチャンスに備えればよいだけです。自分でないものにはなれないのですから。本来の自分を伸ばすのがアーティストへの近道です。
なお、高い音域を駆使できるようになれば声が明るくなるのではと思う人もいますが、音域が高くなっても声質は変わりません。あなたにしか出せない声を大切にしましょう。(♭∴)
A. 声の明るい暗いはある程度は骨格や顔かたちによって決まります。ただし、ある程度の話です。物理的な形状とは無関係な要素で声が暗いというのはよく見受けられます。このような場合は訓練次第で明るい声が出せるようになります。
口の開け方が足りないと、声が籠って暗く聞こえます。また、呼吸が弱いと声が小さくなり覇気が感じられず、暗く感じます。最も大切なのは表情です。明るい声は明るい表情から発せられます。明るい表情を得るには顔面の筋肉が発達していることが必須です。いつもつまらなさそうな顔をしている人、リラックスしている時に口がへの字になっている人は要注意です。声が暗い人は概して無表情で生気がありません。
声を明るくしたいのなら、ここまで書いたことの逆を試みましょう。口角を上げ、頬骨を高く意識し、目で多くを語りましょう。そしてちょっとしたことで心を動かしたり笑ったりするといいでしょう。
こういった状態に当てはまらないのに声が暗い人は、それはむしろ「深い声」という素晴らしい宝物だと捉えて大切になさるとよいと思います。(♯∂)