A.私は、多くのポップスのシンガーに接しているので、共鳴やシャウトの中にも、一つの芯(あるいは線)を捉えるような感覚で判断しています。デッサンの線をひものようによじって細く鋭くしつつ、ハスキーやため息のように、解くことも許容するのです。この絞り込みの程度もまた、まとめるのと同じく、ヴォーカルの裁量に任されています。要は、センスということになります。
声楽家の判断は、アカペラを前提とした歌唱ですから、共鳴や声量、特にハイトーンでの焦点化(ベルカント的なものとして)の条件の上に問われます。しかし、ポップスは、マイクでの音響加工をも含めて、何でもありです。オペラの条件の声量、声域、共鳴を絶対としないのです。
それゆえ、何をもって判断するのかは、声楽家、合唱団、ハモネプ、ミュージカルの方と異なり、複雑なもの、あるいは聞く人の好き嫌いや気分に大きく左右されます。言語と同じく歌われる風土(国、民族など)によっても好まれるものは異なってきます。とはいえ、私はアドバイスを求められる立場ですから、好嫌でなく、秀劣において明確な基準をもって判断しなくてはなりません。そこで徹底して、どういう立場においても判断するかスタンスを深めます。(♭)