A.歌手として世界的に活躍した方々が晩年に後進の指導にあたることは常ではあります。しかし、これは不思議なことですが、大歌手から習った歌手で大歌手を超えるほどの歌手になった人は記憶にある限りほとんどいないという事実もあります。大歌手には本人が自覚していない長所があったり、逆に短所を補おうとして自分なりに考えてきたことが必ずあるものです。長所をもともと持っていることに本人がきづかない場合、そのメソードを教えることはありません。逆に、大歌手が短所を克服したメソードを一生懸命教えても、生徒にとってそれが必要のないメソードであった場合、その練習に費やす時間は無駄で、他のメソードに目が行かない原因になります。大歌手というものは、教わったものを自分なりに良い形にして料理する能力がすぐれているのではないかと思います。人と同じ事をやらないからこそ、人にはできないことができるのだと思います。これはとても難しい問題で、先生のメソードを悪い料理のしかたで発声や表現を悪くしてしまうケースも非常に多いのです。何年に一度の大歌手とは、センスと頭の良さと先天的に持っている能力、フィジカルな強さと柔らかさ等のバランスが見事に調和した時に生まれるのだと思います。(♭∀)