発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q5131.練習を録画や録音して聞くのには、抵抗があるのですが。

Q5131.練習を録画や録音して聞くのには、抵抗があるのですが。

A.声は客観化しにくいので録音して再生して聞くことをお勧めします。また画像や動画から姿勢や発声を学ぶこともできます。面倒なだけでやらない人が多いのですが、実際には自分のイメージよりも大体は正確であり、チェックに適しています。反省と課題のチェックにはもってこいです。

 

Q5132.私の先生は、録画を禁じています。なぜでしょう。

A.いろんな考えの人がいます。そのときを真剣に、二度とない時間として接するために、後で聞けばいいという安心感を持たせたくないとか、機材の操作や音などが邪魔になることも、さらに本音が言いにくくなることなどもあります。プライベートなレッスンでは、そのようなことは少なくありません。私どもも公となることが前提のときは、ことばも選び、それだけが一人歩きしないように、イメージ的なことばや不確かなことを避けます。しかし、その辺りが本人に大切なこともあります。

あと、録音されて何度もくり返して聞くとよくないと思われるような注意には気をつかわざるをえません。相手との信頼関係がなく、第三者や公開されることまで踏まえての発言となると、一般向けのものとなり、本などと似てきます。

さらに、録画、録音は、そこで出たものと同じではありません。どこかが強調されどこかが弱まっています。別の面で、録音、録画をみての反省や、自分のものの分析で学べることは多いのですが、あまりにそれを絶対視すると、よくないこともあります。

 

Q5133.今は、歌も芝居もDVDなどで作品として売るのですから、常に録画して動画としてみて反省する方がよいのではないですか。

A.確かに、作品としては、その通りです。TVや映画に出ている人で、作品をみて自分の言動のチェックをしている人もいます。ゴルファーなどやアスリートは必ず活用しています。

しかし、視覚にとらわれすぎて、逆効果になることもあります。「形から入ろうとすると感覚が遠のく」と言われます。そこでスランプになり、ビデオ研究をやめて、復調したのは、ハンマー投げ室伏広治選手でした。

 

Q5134.録画、録音での確認はしない方がよいのですか。

A.初心者はした方がよいと思います。まったくわからなくても、回数を重ねるごとに身をもってわかってきます。上級者は正しいことを体が覚えているので、それを戻すきっかけに活かせるならよいでしょう。しかし、逆に画像にあまりに囚われてしまうなら、よくないともいえます。そういうときは、自分のよい状態での動画や音声を聞く方がよいでしょう。

 

Q5135.姿勢などは、撮って正しい例と間違った例を比べることで修正するのですか。

A.音声ではけっこう難しいことです。動画でも、スポーツやダンスほど簡単ではありません。姿勢は、形としてわかりやすいですね。見本と同じにすることはレッスンの一歩です。しかし、本当は、その形ではなく、発声としての結びつきからみられるようになることなのです。そこを私はフォームといって区別しています。見本とまったく同じ姿勢から始めるのはよいとして、それでも声がうまく出るとは限りません。異なる姿勢でもよい声が出るなら、その方がよいともいえます。

 

Q5136.トレーニングやレッスンと本番を切り離せとはどういうことですか。

A.一般的に、レッスンは、何らかの欠点について改善、修正を意図します。意識的に部分的に直す指示ややり方を示すわけです。トレーニングは、それをくり返して身体に覚えさせます。しかし、本番の演技や歌は、必ずしもそこにストレートに結びつくものではありません。また、身につけようとしている途中のものを自然に使えることはないのです。本番ではもっと大きな流れで行うのですから、そのときはレッスン、トレーニングを忘れることです。

 

Q5137.レッスンの指示や判断がヴォイストレーナーによって異なるのはどうしてですか。

A.この分野が、まだ未熟なこともありますが、何よりも、目的、レベル、プロセスがそれぞれの相手によって異なること、声というのは、身体の内部から出てくるもので音として問われるという特殊性などの理由が大きいと思います。ただし、トレーナーにより価値観、方法、評価が違うのは、どこでも、どんな分野でもあります。

 

Q5138.「見本をよくみろ」と言われるのはどうしてですか。

A.くり返しみて、聞くことで、あなたの脳の中で、その行動に結びつくところが活性化していくからです。少しずつ、取り込める準備ができてくるのです。

 

Q5139.悪いところばかり指摘してもらっているのに、そこを直せません。

A.私は、よいところを見つけて伸ばすことで、悪いところを薄めるようにします。よいところがないから悪いところが目立つからです。

もう一つ、悪いからそこを直そうとしても、すでにそうなっていたところは直りません。違うところを変えることで、そこも直るようになることが多いのです。上半身の力を抜くには、上半身をどうこうするのでなく、下半身で支えるというようにです。

 

Q5140.「気づけ」というのは意識しろということですか。

A.「気づく」のも「意識する」のも、よくも悪くもレッスンで使われます。意識しないと気づけないこともあります。しかし意識したら、直るのかというと、そういうプロセスとしてはあってもよいと思いますが、大体、できるときは意識が外れたときです。考えに考え、考えるのを忘れたときにポーンとアイデアが出るのと似ています。