Q5141.声において過去のチェックをする必要はあるのでしょうか。
A.今あなたの出している声は、これまでの積み重ねの結果です。よいことも悪いことも勝っている点も劣っている点も、これまでのことを一通り、把握しておくにはよい機会です。私が本やレッスンなどで勧めているのは、本を読もうと思ったり、レッスンを受けようと思った時期と関係します。多くは何かの問題が起きたり、より高い目標をもったとき、つまりは、転機、あるいは行き詰まりです。そういうときに古典や歴史に学ぶ、もしくは過去の反省、総括をするのに、よい機会だからです。
Q5142.これからの声を目指すのに過去の声は関係ありますか。
A.関係ないことは絶対にありません。特に、声そのものより声のイメージや感情が問題です。しかし、あまりにそれにこだわりすぎて、これまでのしがらみから抜けられなくなるのは避けたいものです。
Q5143.昔に使った歌集や台本は使わない方がよいですか。
A.ケースによります。何回もくり返して頭に内容が入っているからこそ声のトレーニングに使うと声だけに集中できるメリットがあります。また、レッスンなどで違いを明確に区別するにもよいでしょう。しかし同時に、そのときのくせも再現してしまいがちなので、トレーナーには好まない人もいます。新しい題材の方が進めやすいなら、そのようにして発声などに自信がついたら復習して、どう異なるようになったかチャックしてはいかがでしょう。
Q5144.これまでプロデューサーにもトレーナーにも恵まれていなかったように思うのですが。
A.そう言ってしまえばそれだけになります。人は、いかに今ある環境を活かすかです。恵まれるというのも、かなり主観的なものです。私は、誰にも活かせないものを活かし、誰もがよくないというものをよしとしてきた経験が一番の自信となっています。
恵まれなかったのは、受け身だったからで、恵まれるようにしていかなかったことの方に問題があると思います。そこで充分に活かそうとしていたら、次にチャンスが来ます。来なくても次にどうするかがわかって、次の人や機会に恵まれます。しかし、そう考える人は少なく、皆、他のことや他人のせいのしたがるものです。そういう考えを改めてください。
Q5145.トレーニングで何か目的を遂げるのでなく、トレーニングそのものが目的になっているように思いますが、よくありませんか。
A.確かにレッスンやトレーニングは目的のために行うものですから、トレーニングを主体に傾倒していくのは違うかもしれません。しかし、カウンセリングなどでよく話すのですが、通うことが目的の時期があってもよいと思います。そういうときほど、周りに振り回されず自分の内面や、声そのものに向きあえるからです。目的がないとやめて、目的ができたらやるというのでは、力もつかないからです。それこそ、私が声を日常に、トレーニングも外して日常化して欲しいということに通じます。
Q5146.トレーナーに「わからない」と言われるのですが。
A.正直なトレーナーですね、そのまま、そう受け止めたらよい。このトレーナーにはわからない。自分の声は今はわからない、と。何がどうわからないかは、具体的にできるかもしれませんが、私は、およそ、わかっていてもわからないと答えるときもあります。判断を急ぐのはあまりよい結果をもたらさないし、相手がまだまだ変ずる可能性もあるからです。わかってしまわない限り、やれるものですから、わからない自分、わからない声を、わからないトレーナーを楽しみましょう。
Q5147.シャイなのか、本音で本気で役柄に入っていけません。
A.覚悟の問題ですが、所詮、演じるわけです。ただでさえ虚構のつくられた役を演じるのに、それでは、リアルに伝わることはありません。また、本音とか本気というので、よけておいた自分というのは、どこかに本当にあるのでしょうか。自分の劇団では本気だが、他の芝居に出るときは仮面をかぶっているというのであれば別ですが、シャイというくらいでは本音、本気で演じても、多分、ほとんど変わらないと思います。力がないということです。
Q5148.トレーナーに言っていることがきちんと伝わらない。
A.本人の問題か、トレーナーの問題か、両方の問題か、あるいは、問題のようで問題でないのか、4つが考えられます。レッスンを文書化して出すことを、私は、生徒とトレーナーに課しています。感じだけでは、解決するどころか、問題の所在もわからないからです。
Q5149.トレーナーが理論的にやり方をしっかり示してくれない。
A.すぐれたトレーナーは、問題として把握する前にメニュのなかで、あるいは、レッスンのなかで解決してしまっていることも多いようです。一見、内容が論理性を欠いていても、生徒に聞かれたことにちんぷんかんぷんの答えをしていても、生徒はよくなっていくのです。逆の方が困ります。トレーナーが知識や理論ばかりで答えているとそうなります。やたらヴォイトレの語彙、用語は覚えるのに、声はさっぱり変わらない。ですから、このQ&Aもそこそこ、適当に読むのに留めておくことですよ。
Q5150.トレーナーが理論的に答えてくれない。
A.あまり理論にこだわりすぎると声を離れた机上の空論になります。理論的というのは仮説、イメージとしての説得力です。いくらでも反駁ができます。実証としては声そのものでみることです。