発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.耳管開放症について知りたいです。

A.口の奥を広げること、特に上の方全体を広げようとがんばり過ぎると、耳管が開いて閉じにくくなってしまうことがあります。これまで、10名近くの人が、これになりかけて、相談を受けました。「口の中をしっかり広げて、あるいは空けて。」、、、レッスン中によく耳にするフレーズで、一生懸命がんばる人には、時に危ないフレーズになったりします。
耳の鼓膜の奥、中耳と鼻の間に、耳管(エウスタキオ管)という管があります。普段は閉じている管ですが、あくびをしたりすると開きやすくなり、エレベーターや飛行機に乗ったりしたときに、耳抜きをすると開く管で、中耳と鼻の中の空気がつながり、中耳と外の気圧の差を解消することができます。通常は開いてもわりとすぐに自然に閉じるのですが、ときには開きっぱなしになったりすることがあります。これが、耳管開放症です。
私自身も、若い頃に何度か、なりかけたことがあり、歌うにはとても不便な状態です。なにしろ自分の声だけ不自然に大きく聞こえて、他の音は、膜をかぶせたように遠くに聞こえてしまうので、発声のコントロールどころではなくなってしまいます。それ以来、なるべく耳管開放症にならないように、気をつけています。
風邪をひいているときに歌わなければならないときなどは、特に要注意です。喉や鼻の腫れが、口の奥の上部を頻繁に使うことによって、耳管にまでうつってしまうようで、普段なら開いてもすぐに自然に閉じるはずの耳管が、なかなか閉じにくくなります。また、あくびの喉の形を模倣するようにトレーニングをし過ぎた場合も、同じように耳管が閉じにくくなったりします。練習や慣れによって、耳管を自分の意志で空けることができるようになれば、そこをうまく避けて、不必要に開かないよう、気をつけることができるので、耳管開放症になりかけているかもしれないと思う方には、このワザを習得することをおすすめします。
私の場合は、自然にこれができるようになってしまったので、効率のよいマスターの仕方はわかりませんが、とりあえず軟口蓋の両端の近くを注意深く観察することをおすすめします。あくびをしながら、そのあたりをよく観察すると、耳管を自分の意志で広げるコツを、会得できるかもしれません。(私は、耳管を開くコツはわかりますが、閉じるコツはわかりません。)
今すでに、耳管開放症になりかけている方は、口の奥を広げ過ぎないようにすること。治ってきたら、軟口蓋だけを単独で上げられるようにすることが、大切だろうと思います。(♭Ξ)