発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.元気に体の勢いで歌うと声が大きく出ますが、ヴォイトレになっていますか。

A.よい声・楽々と自由に使える声を出すためには、ウォーミングアップが欠かせないことは、実感されているだろうと思います。では、実際にどんなことをすればよいか、それはひとそれぞれだったりしますが、とりあえず声を出す人もいれば、必ず体のストレッチから始める人もいるでしょう。呼吸練習から入る人もいるだろうと思います。中には、まず走るという若者もいたりします。
「えっ?」と思われる方もいるかもしれませんが、これがなかなか有効?だったりします。信じられないと言う方は少ないと思いますが、もしそう思われるなら一度くらい試してみることをおすすめします。
少し汗ばむ程度の運動やスポーツの直後には、体全体の筋肉が適度に活性化され、呼吸器官ももちろん適度に活性化され、喉で無理にがんばらなくても、楽に声が出せるようになります。そのときは、自然に呼吸も体の支えも使えて、その人の出せるベストに近い声が出せるのです。これを逆手にとって、ウォーミングアップに使うプロも、一部の業界では少なくないだろうと想像できます。たしかに声が楽々と出て、モチベーションもとても上がり、体にもよさそうで、いいことずくめのように思えるでしょう。しかし、そこに、ちょっとした落とし穴があります。
それは、あくまでもウォーミングアップとしては使える、ということです。つまり、よい声を出すための、あるいはつくるためのトレーニングメニュにはならないということです。ただし、体があまり強くなく、しかも病気などはまったく無く、健康だけれども運動不足、という人には、とりあえずとても有効なトレーニングメニュにはなります。体が元気で活発になれば、それだけで少しよい声になります。しかし、そこ止まりです。今のベストの状態以上には、伸びないということです。
そして、さらに気をつけなければいけないことがあります。体には、筋肉や骨格などを守るためのストッパーが、常に自然に働いていますが、元気を出し過ぎると、勢いが余って、そのストッパーを外しかねないということです。いわゆる、「火事場の馬鹿力」です。そのときには、すごい声が出るかもしれませんが、喉を傷めてしまったり、何年も声が出なくなったり、最悪の事態では、声を失うことも無いとはいえません。
ですから、元気を出すということは、声のためにとても有効ですが、ある程度、体が活き活きと活発に使える人にとっては、ウォーミングアップにはなりますが、トレーニングメニュにはならないということを肝に銘じましょう。
体に元気があふれ過ぎると、しっとりと落ち着いた・あるいは悲しい曲を歌うのは、かなり難しいだろうということは、どなたでも想像できるだろうと思います。(♭Ξ)