A.声楽の分野で、私が影響を受けた考えをあげておきます。有名な発声本の受け売り一辺倒の、日本人の指導法に警告したものといえます。私は声楽家ではないので、声楽に関しての判断は、ここでは揚げません。また、ここで述べられていることを私自身がすべて肯定して使っているわけではありませんので、念のため。(以下は声楽家、渡部東吾氏の研究によるものです)
≪ガヴァリング(デックング、被せること)≫-1830年 G.L.Dupres(テノール)提唱
「喉頭を下げ、口蓋を上げて、口のなかを広く大きくして発声、音色を暗くしたり声区転換点での破端(ひっくり返ったり、開きすぎたりする)を覆う。さらに大きな響きが得られる共鳴の技術。
→自然な共鳴を舌を無理に下げ、口を丸くして口腔に引き込む形で不自然な声となり、発声、音程、呼吸の効率も悪くなるので、根本的な解決ではない。代理技術にすぎない」
≪発声配置-G.B.Lamperti≫-リリー・レーマンの共鳴の知覚図
「振動の感覚を捉えて共鳴のつけ方を訓練する。
→正しい発声(共鳴)の結果おこる振動を先にさぐりあてて、共鳴を起こそうという考えで、順序が逆。振動するのと振動させるのは、声帯の働きはまったく別になる。振動の伝わり方は個人的なもので、心理的なもの。聴くことより、見たり感じることが重視される。共鳴と振動の混乱、音に方向性をもたせるのも不自然といえる」
≪鼻腔共鳴≫-Jean.de.Reszke、提唱
「→口腔、鼻咽頭は音量の増強という意味での共鳴には影響なく、エネルギー保存からはマイナスに働く。鼻腔は、鼻のなかに音が流れ込むこと自体疑わしく、共鳴を起こすことはない。咽頭の筋肉の緊張が原因で、それを通じ振動が鼻の方へ伝わるとされている(音声科学による)。つまり、逆効果となる」
≪クラシック的な声≫
「得体もしれない強烈な音質観念。自然な音作りを型をはめてしまうもので、クラシックの名のゆえにまだまだのん気に構えてられる面が残っている」
「間違った指導でよく使われることば」
ブレスをコントロールする/ ヴィブラートをかける/ 発声器官を調整する/ 声(響き)をあてる/ 声を前方(上方)に向ける/ 鼻腔共鳴に集める/ 軟口蓋を上げる/ 喉頭の位置を下げる
・正しいトレーニング
リラックス/単純なトレーニングの繰り返し/感覚(声の判断力)を磨く/声を統一する/音声イメージを構築する/声をかぶせる(♭)