発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.歌での、リズムと呼吸の合せ方がうまくいかないのですが。

A.歌のリズムと呼吸が合わない、ということは、まず、体がその歌を、感じていないということです。テンポの遅い歌もあれば速い歌もあります。起伏の小さい歌もあれば、起伏の激しい歌もあります。その歌の感じを、体で捉えていれば、声も呼吸も、その歌のリズムに、自然に合っていくはずです。そうならないということは、実は、その歌を、体ではうまく感じられていないということです。繰り返し何度も聴いて、歌のリズムを、しっかり体に染み込ませましょう。

これとは別に、声を出すために、呼吸が自然ではなく、意図的に使われているという場合があります。なぜそのようなことが起きているのか。それは、トレーニングとして、呼吸の使い方や、息の流し方、お腹の使い方など、呼吸に関するトレーニングをしている場合です。そのトレーニングが、完成していれば、体と一体化して、何の問題もなく動くのですが、未完成の場合は、ぎこちない動きになるのが当然です。ですから、トレーニングが完成していないなら、歌うときには呼吸のトレーニングは忘れて、自然に歌うことです。

声に関するどんなトレーニングも同じですが、そのトレーニングを意識して歌うと、どうしても、歌としては不自然になったり、下手になったりします。トレーニングの効果を、実感していればなおさら、トレーニング通りに歌いたくなるものですが、人前で歌うときには、自然が一番、ということを、忘れないようにしましょう。

(♭Ξ)

 

 

A.いろんなことが原因として考えられますが、このパターンの人に多いのは裏拍の意識がなくビート感が弱い状態です。ビート感が弱いとブレスをどこで吸っていいかわからなくなります。ビートを感じながら歌えると、テンポも安定しますし、ブレスのタイミングも自分の中ではっきりとしてきます。

別のパターンとしては、テンポ感が弱いことでしょか。今、自分が歌っているのは4拍子なのか、2拍子なのか、3拍子なのかがわかっていない状態です。これらがわかっていると1小節の中でどこに強弱がくるかわかりやすくなります。

これらのことを基礎から学ぶためには、発声とは違う観点からの音楽やビート、テンポ感を学ぶといいと思います。例えば右手で表拍をたたきながら、左手で裏拍をたたいてみるのもいいトレーニングになります。もっと高度になると左手で一定のテンポを刻みながら右手で曲のテンポをたたいてみる。なれたら手を反対にしてみてもいいでしょう。このように声とは違う観点からやってみるといいと思います。

これらができた方が結果的に声が出しやすくなります。よきタイミングでブレスが入ってこないと曲のテンポに沿った発声が出てこないからです。

もし、教材で学ぶ場合は、リズムだけのトレーニング集もあるので、それらを活用してみてください。

ラップの人のブレスは、わかりやすいですし、柔道の乱取りも一定のリズムでおこなうのでブレスが見えやすい、店頭販売員や選挙のウグイス嬢なども上手な人は言葉とブレスうまくいっています。言葉のさばき方も呼吸とリズムが合わない原因の一つなので、これらを参考にしてみるとよいと思います。(♭Σ)

 

 

A.リズムと呼吸が合わないのは、他の部分に原因があるのではないでしょうか。歌うときは、リズムに合わせて「歌詞」を発音しています。この「歌詞」がリズムと合いにくい、だから呼吸も合わなくなる、ということが起きているのです。

ですので、ぜひ「歌詞のリズム読み」をして練習ください。いったん音は取り省き、リズム・音符の長さ・ブレスは楽譜のままで歌詞を発音していくという方法です。音程は取らない(歌わない)ので、声は棒読み(フラットに、真っすぐに)のように発音します。声の高低差をつけないことで、逆に安定した息を吐かざるを得ないというメリットもあります。音程をなしにした途端に歌詞やリズムが崩れるとき、うまく発音できないときは、その部分がまだ曖昧だった、まだ定着していなかったということです。リズムに合わせてスムーズに発音できれば、すでに息も流れやすくなっているので、連動してブレスも入りやすくなります。リズム読みが安定してきた後で、また音程をつけて歌ってみるとその効果がより実感できるので、ぜひ試してみてください。(♯α)

 

 

A.自分の感覚のテンポ感と、音楽的なテンポ感が一致していないのではないでしょうか。細かく見れば、さまざまな原因があるのではないかと考えられますが、いくつか代表的な事例をあげたいと思います。

一つめは、ブレスのタイミングが歌いだしの直前過ぎるということです。ブレスをとってから発音までの時間が短すぎる場合、体として発声のための準備が充分に行われない状態になっていることが考えられます。歌い出しや間奏など、比較的時間に余裕があるような場合、できれば歌いだしの一拍前までには必要なブレスが入っている状態になるとよいのではないでしょうか。

二つめは、曲中の短い間でのブレスをどう取るかです。前の音をぎりぎりまで伸ばしていたり、次のフレーズよりも前のフレーズを引きずるような感覚になっている場合、ブレスのタイミングを失いやすくなってしまいます。前のフレーズを若干短めにしつつ、次のフレーズのための準備という意識でブレスを心がけてみてはいかがでしょうか。

最後に、これら総合的に関係するのが、自分の中のテンポ感が、ちゃんと音楽のテンポ感と一致しているかどうか、自分だけの独りよがりなテンポ感になっていないかどうかです。これは自分自身では気づけないことなので、指摘してもらわなければ直らないと思います。発声や音に対する執着が強いような場合、音楽的なテンポ感から逸脱した状態になっていることが考えられます。音楽を無視してまで発声や音にだけに意識を向けることのないよう、総合的に活かしていけるよう工夫してみてください。(♭Я)

 

 

A.リズムと呼吸を合わせる必要はありません。歌っているときに、呼吸のことは考えません。呼吸のことは、基礎練習で習得してください。

従ってここでは、リズムそのものについて書いておきます。まず、皆さん、声や息のことには興味があるがリズムに興味がない、またリズム感がないことが多いです。リズムは歌に限らず、すべての音楽の基本です。音楽の3要素として、リズム、メロディ、ハーモニーとありますが、リズムがだめならもうだめです。それほどリズムは音楽で最も大切なものととらえてください。ですからヴォーカルは、誰よりもリズム感がないといけません。

リズム感を鍛えるには、地道にリズムの練習をするのです。ソルフェージュのリズム教材で手でたたいたり、鉛筆の裏側でたたいたりします。ポイントは、メトロノーム通りにたたくことではなく、フレーズとして自然につながること。2つにわけると、フレーズの最小単位の塊が自然に聞こえるか、また全体として自然に盛り上がっていっているか、ということです。このチェックには、初めは教師が必要です。

また、例えば歌の出るタイミングがいつも少し遅れる、という症状の場合、大きいフレーズの感覚を養うことが必要です。曲を大局的にみるのです。1拍毎でなく、4拍で1つの塊、また4小節で1つの塊、と把握する塊を大きい単位でとらえていくのです。(♭∴)

 

 

A.原因は複数あると思われますが、最大の原因は準備が遅いことだと思われます。

踊りで考えてみましょう。ワルツは3拍子の踊りで、3拍子の曲は1拍目が最も強い拍なのは、皆さんご存知だと思います。では1拍目でドスンと重く踏めばいいのかというと、それは違います。1拍目で身体が伸び上がれるようにステップを踏むのです。そのためには前の拍からの体重移動(つまり準備)が重要になってきます。

歌もこれと同じです。リズムと呼吸が合わないという人は、重要な部分に差し掛かってから慌てて何かしようとするので、ちぐはぐになってしまうのです。

では早く準備するにはどうすればいいか。

一つは早めに吸うことです。曲の頭なら、声を出す直前にガバッと吸うのは得策ではありません。もう1~2拍前に吸って待っているぐらいがちょうどいいです。曲の途中なら、ブレスの前の音をほんの少し早く切り上げてみましょう。

また、短い時間で効率よく空気を取り込む練習をしましょう。s~で息を吐いて、吐き切る直前に「タッ!」と言ってみてください。能動的に息を吸わなくても肺に空気が入ります。水泳の息継ぎと同じです。(♯∂)