A. 目に見えない「響き」を高くするというアドバイスは、声楽の世界ではとても多く飛び交います。さまざまなメソッドや考え方にもメリットとデメリットがあり、どちらもしっかりと理解する必要があります。正しいと信じてトレーニングすることも大事ですが、一つの方法だけを突き詰めるとデメリットの部分も広がってきます。
指導する側はそのやり方でメリットの部分が大きく成長しても、指導される側がそうとはかぎりません。指導する側が現役のプレイヤーを兼ねているとその傾向が大きいことも想像できます。
例えば「頭頂部や軟口蓋から声を出して」と言われる場合、この場合は声は高音へのアプローチとしてとても有効ですし、頭声の訓練としてとても効果的です。しかし息漏れがしやすくなり芯のない声になりやすいです。
「マスケラ」「目からだして」などのアドバイスは、息漏れが減少し、芯のある明るく、よく飛ぶ声になりやすいです。しかし、ここにもデメリットがあり、こればかりをやっていると、喉が狭く窮屈になっていきます。
響きの高さといっても、ただ高いところから出そうするのは土台の基礎工事がしっかりとしていない建物と同じで、ある一定以上は安定しません。頭頂部やマスケラなどに声を当てる訓練もおこないつつ、同時に胸を響かせるなどの逆パターンの訓練もおこなってみるとよいでしょう。上に引っ張る筋肉だけでなく、下にひっぱる筋肉も鍛えることで声が安定していきます。