A.アッポッジャーレとソステネーレは呼吸における支えの二つの要素ですが、この二つは本来はごくごくしぜんに結びついてますが、歌うときどういうわけかこのシステムが壊れることが多いです。アッポッジャーレ(置く、という意味)とは、上から下へのエネルギーのことをいい、上から横隔膜の上に座るとかいわれます。しかしヨーロッパでは、アッポッジャーレをそれほど意識することはよくないとも思います。それはヨーロッパ人は、アッポッジャーレの力がごくしぜんにあるということもあるかもしれません。ソステネーレは下から上のものを支えるという意味で、横隔膜を上に上げていく支えです。アッポッジャーレがなく、ソステネーレだけがある歌は声が開き、ひびきが散り、喉声になります。ソステネーレが弱くアッポッジャーレが強いばあいは、響きは金属的だが、レガートがぎこちなく、ヴィヴラートに乏しいです。日本の音大生は前者、ヨーロッパの若い生徒は後者が多い気がします。女声やテノールは前者になりやすく、バリトンやバスは後者になりやすいように思います。ふたつの要素を組みあわせようと理論で考えるとたいてい喧嘩になり、歌う方法論じたいが宇宙的な神秘となってしまいます。実は組み合わせるとかバランスを取るとか言うのではなくて、しぜんさ、のなかで二つが見事に調和することを感覚でつかむことだと思います。(♭∀)