A.金属的な声を、イタリアではVoce metalicoと呼ばれ、英語圏の歌手はStealing voiceといってました。
特定の歌手の声を指すことの多いこの用語ですが、私の考えでは、すべての歌手にとって絶対不可欠な要素です。
すくなくともオペラ歌手であればそうです。しかし、無理に作った笑顔で一生懸命マスケラに響き渡る金属的な声を目指すのは間違いです。
これはマスケラも響きも勘違いした声です。まずは顎を楽に落として、マスケラをつかむのが先です。初心者であれば、鼻声のような O母音、Mo---とか、Ma---などでマスケラをつかませます。
これは暗い声になってしまう危険をはらむ、ようですが、オペラ歌唱法ではこのScuro暗さの要素が極めて重要です。この要素が、喉頭の寝そべったようなもたれかかったような位置を自然に保ちます(これをもたれかかる=Appoggiare といいます)。
こうした極めて自然な喉の低位置が保たれ、声帯が気持ちよくリラックスしたような伸びがあるとき(声帯を引っ張って伸ばすのはだめです。微笑みのようなリラックスした伸展が重要です)、そこではじめて金属的な響きのことのベースができるわけです。(♭∀)