A.ヴォイストレーニングの分野はとてもあいまいです。それゆえ、トレーナーといっても、専門家という資格も基準もなく、出自もやってきたことも、方法も判断も、知識も理論もそれぞれに違います。一口に声と言っても広範な分野をカバーする(しきれない)ので、しかたがないのですが、それぞれに自称しているだけです。医者(音声医、耳鼻咽喉科)、声楽家、作曲家、プロデューサー、俳優、声優、アナウンサー、ナレーター、話し方のインストラクター、講演家、講師、さらに噺家(落語家)から邦楽家(長唄、民謡)、ビジネスマン、政治家、とあらゆる声を使う人がトレーナーとして考えられるものをもつので、誰でも先生になれるともいえるのです。
歌手も俳優も日常に根ざしている歌や話を芸として、誰もが話も歌もたしなんでいるからこそ、特別な勉強もなくプロになれる人もいるのですから、その違いとなると、さらにあいまいです。
ヴォイトレの必要性自体、あいまいなものです。(それになんとかアプローチするのが、ここでの目的でもありますから、こういう話になるのですが…)
ですから、たとえば、体が丈夫でなく、それを克服して声もよくなった人が、体に詳しく、そこからアプローチして声にせまるのは、当然のことです。一方で、歌手や俳優の多くは、大体は普通の人よりは体力があり、健康な体をもっていますから、そのようなアプローチなしに歌唱や発声にすぐれています。どちらがよいとか、正しいとかいうことではありません。(Ei)