発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.発声やヴォイトレで、何をもって独自の方法と言うのでしょうか。

Q.発声やヴォイトレで、何をもって独自の方法と言うのでしょうか。

A.この分野においては、まだ未熟で浅く、何よりも実践が重視されてきたため、理論や科学的な論文については、まだ、甚だ心もとない状況にあります。人材についても相当に弱いでしょう。医者をはじめ他の分野の専門の人が参入してくると、そのまま、その方法や見解に説得されてしまう状況です。いわば、言ったもの勝ちのような状態ではないでしょうか。

 

Q.発声も体のことですから、医者がもっとも正しいのではないでしょうか。

A.医学としても、発声に関しては新しく発見や論文は出しているものの、昔からの人の直観や方法を超えるものは稀有のように思います。いくつかの、もてはやされているものもありますが、実践としての効果はもとより、その理論や理屈においては、かなり危ういもの、一方的な思い込み、実証もしていない中での推論にすぎないものがほとんどです。

ただ、声を扱う人は、科学や理論に弱く、一つか二つの証拠を出されると、それとまったく関係のないことまで鵜呑みにしてしまうのです。体のことに詳しいのは、医者だけでありません。武術家や整体、東洋療法の専門家などもいます。まだ混沌としている時期ではないでしょうか。

 

Q.いろんな人のノウハウをたくさん試しましたが、あまり効果がないように思います。

 

A.効果となると、トレーナーとの相性や使い方や目的、レベルなど、各人によって異なります。効果といっても、ノウハウを試したくらいででるものでしょうか。また、自己分析では、必ずしも正しく効果を判定できているとは限りません。

 

本は、一般の人が読むものですから、一般の人に無理なく取り組めるところで記述してあります。効果があるとしても、そのレベルを出ないと思われます。簡単にわかりやすく一読してできるようでなくては本にならないからです。健康法や財テク法と同じです。誰もができるアプローチは、述べてありますが、それを読んでその通りに行っても、すべての人が、病気が治ったり、大儲けできることはありません。「誰もがプロになれる…」などで誰もがプロになれることはありません。しかし、著者の一人として言わせていただくと、それをどのように活かすかは、本人しだいなのです。

 

 

 

Q.本当に役立つもの、本質のわかるものは、どんなレッスンや本なのですか。☆

 

A.私が考えるなら

 

1、そう簡単にわからない深さのあるもの。(一見、一般的な見解や常識に反しているように思われるもの)

 

2、専門的なものでも、詳しい知識の羅列でなく、総合的に体系づけて述べられているもの。

 

3、象徴的な表現、例えでの説明が多いもの。誰もが具体的なハウツー、メニュを求めますが、そこのレベルでの紹介でなく、それを自分で気づいて発案を促すようなイメージなどが豊富で主体的に取り組めるものになっている。

 

4、すぐに簡単にはできなくても、大きな刺激になるもの。読むと救われるもの。可能性や自分の限界を破るような思いが出てくるもの。

 

5、現実に活かすのに役立つもの。精神論や理論だけで終わっていないもの。

 

6、それゆえに、多くの批判や非難にさらされてきたもの、影響力があると、そういうのに対立するような見解がたくさん出てくるものです。

 

大半は、新しくても浅い、未熟なものが多いようです。でも、一つの方法や1ページ、1行のことばでも、役立てば充分ではないでしょうか。保守的、常識的なものの考えの人の受け入れられないものでないと、アーティストという、そういうことを成していく人の支えにもならないでしょう。

 

 

 

Q.トレーニングメニュを活かせるための秘訣は何ですか。

 

A.信じられるかどうかでしょう。しかし、それは私や私の理論でなく、自分の可能性について、ということです。やっていく自分を信じ切れなければどうにもなりません。私たちは、その手伝いをしているだけです。

 

ですから、私やトレーナーを盲目的に信じたがっている人や信じていく人を、ただの信者にしてしまわない努力をしているつもりです。

 

レッスンや声づくり、その結果としての自分の表現を信じることは、私たちの方法やメニュをすべて全面的に信じることとは違います。同じことを同じように練習しても、ものになるレベルは人によってかなり違います。また、ものになった人ほど成功しているかというと、そういう実力と、世の中での活動とは必ずしも比例しません。

 

 

Q.本とレッスンはどのように違いますか。どう使えますか。

 

A.それは、読んだ人やレッスンしている人に聞いてみてください。私のものに関しては、そのいくつかはホームページや会報で読めます。本は、活字でイマジネーションを伝えますが、レッスンはスタジオで、人、もの、空気のすべてを共有して伝えます。

 

どちらにしても、ことばだけで捉えられないことです。表面的なものの見え方、伝わり方、うわべから少しでも、本質に深めていきたいものです。ことばや文字だけでなく、スタジオの雰囲気から外の四季や自然も、すべて関わっています。具体的に、レッスンでは声をもって、それを純化、象徴的なもの=歌にしていくわけです。 シンボル化するから、声は歌唱、芸術にまで高まるのです。

 

Q.初めてのレッスンで、終わったときのその声が正しいと言われました。本当でしょうか。

 

A.誰もができるレベルのことが緊張したりしてうまくできないときに、リラックスするとよくなります。体には備わっているレベルなら、少し調整してできるようになるといえます。声の正しい使い方がノウハウ、それに慣れさせるのがメニュなのです。

 

しかし、それは毎日1500メートルくらい歩く人が、より速く1500メートル歩くためのノウハウです。1500メートル走で優勝できるノウハウではありません。あるいは、ピッチングで、70キロでストライクが入るくらいのノウハウです。150キロの球を投げたり、それを打ち分ける能力は、誰も自然にはもっていません。

 

体も感覚もメンタルも、そこでは状態でなく、条件が足りません。プロ並みのよい声が何を指すかによりますが、一般的にリラックスだけでは無理です。

 

 

 

Q.どうやって限界をトレーニングで超えるのですか。

 

A.身口意(しん・く・い)とは、体、ことば、心のことです。私たちがすでにもっているのに、充分に使えていないものです。それらを充分に使おうと思って習うと、12割くらいはよく使えるようになります。でも100パーセント使いたいなら、生涯の絶好調の一回だけになりかねません。そこで、器を2倍にして50パーセントの発揮でも、そのレベルに達しなくてはいけないのです。つまり、目標と必要度をマックスにするのです。ヴォイトレをしなくとも、そのようにイメージしている人は、結果として、最高のヴォイトレをしていることもあるのです。

 

Q.声ができても売れなくては使えないのでは。

 

A.トレーニングの結果、自己満足やトレーナー満足で終わるだけでなく、他の人に伝わり認められなくては、ヴォイトレを長く続けられる人もいなくなるでしょう。

 

芸術でも芸能でも、売れる価値がなくては存続できないのも事実です。声のトレーナーは、声そのものを専門としていますが、歌手は歌、役者は芝居を専門としています。声以外のいろんな要素も必要な上に声も必要だということです。

 

 

Q.理論を知ると、ヴォイトレも正しく早く身につきますか。

 

A.知るのでなくて智ること、それは理論や理屈や知識でなく、理を智るということ。あるいは観ることです。正しく早くでなく、深くしっかりと身につくという方が大切です。イメージを想起し、イメージの実現としての声、そしてその声からのイメージの修正、いわば、そこで声と声を生じさせるもの、創造のくり返しあるのみです。

 ヴォイトレは、理論でなく、身についたかどうかということに尽きます。どこまで身についたのか、早く、正しくは別のことです。