発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.「ベルカント唱法」という言葉についてどう思いますか。

A.声楽に触れたことがある方やヴォイトレに興味があるかたなら一度は聞いたことがあると思います。ベル(Bel)=美しい、カント(canto)歌という意味の言葉ですがこの言葉ほど曖昧な音楽用語もないと思います。
現在のベルカント唱法と呼ばれる発声の多くは19世紀以降の壮大な作品を歌える声の出し方をさします。大雑把に言えば巨大な劇場やホールで一番後ろにまで声を飛ばすことができ低音から高音までをむらなく出せる発声法と言えるかもしれません。
声楽家ベルカント作品としてロッシーニベッリーニドニゼッティの作品をおそらく一生勉強するでしょう。ベルカントオペラといわれる作曲家達です。でもロッシーニヴェルディの作品を聞いて「ベルカントは終わった」という言葉を残しています。
現在のホールはおそらく過去の大作曲家達が創造していたものよりも大きくなり集客能力が高い施設が多いです。そうなってくると言葉の定義も変わってくる部分があるのかもしれません。時代と共に発声法にも変化が求められてきているのだと思います。
そういう意味ではこれがベルカント唱法なんて言い切れないのが現実ではないでしょうか。
楽譜を見ても、ありえないくらい高い音をテノールに出すように指示してあることもあります。おそらく発声法そのものが現在とは違うのだと思いますし仮に現在の歌手が出せたとしても多少違うものだったと思います。
オペラや声楽の世界も現在はビジュアル重視の時代になってきましたし俳優のような演技力も求められます。昔の太ったからだのでかい人が立ったまま朗々と歌うという時代ではありません。
ベルカントという言葉も現在の聴衆が美しい歌思えばそれがベルカントなのかもしれません。(♭Σ)