A.「10秒ほどのフレーズをCDで3回聞いて、すぐに繰り返す」
これはずっと、私がグループで行なってきたレッスン方法です。日本語でも外国語でもかまいません。当時はCDでしたから、あたかもDJがディスクを操るように10秒ほど戻そうとすると、きちんと戻らず、該当箇所の前の方から始まります。すると、分からない言語の歌ほど、よく聞かねばならないことになります。他の音のバックの音も総動員して、どこが流れているのかをキャッチする力がついていきます。(感覚の相対性を利用して身につけるには、より難度の高いものから入るのがコツです。ドイツ語やフランス語を聞くと、英語が聞き取りやすくなるし、早いテンポで聞くと、ふつうのテンポに戻ったとき、ゆっくりと聞こえるようになります)
こうして、音だけの世界に集中せざるをえない状態にするのです。しかも、一人ずつそれを次々にコピーするのですから、けっこうな緊張感となり、本番慣れにもなります。
一番心がけたいのは、そのとき自分の中で起こったことを、その曲の流れに一致させられるか、ということです。ジャズなどの即興能力を問うのに似ています。多くの定型パターンが入っていないと、最良のフレーズを瞬時に選び、組み立てて取り出すことなどは不可能ですから、少なくとも4、5年はさまざまなパターンを入れることで充分と思っています。(日本の歌い手のアドリブの即興性のなさと、お笑い芸人や世界のアーティストのそれとを比べてみてください)(♭)