発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q. 低音発声について教えてください。

.今は、ポップスなどで低音域の魅力的な男性歌手があまり見当たらないことも影響しているようで、低音域をしっかり出せる方は、なかなかいらっしゃいません。

逆に、高音発声を売りにする男性歌手が多いことの影響で、高音域があまり出せない方は、ほとんどいません。(それでも、更に高音域をめざそうとする方も、少なくありませんが。)

それに比べて、1970年代ごろは、まだ男性歌手の高音発声がそれほど流行っていなかっので、高音域を出せないことは、普通でした。声の流行が、これほど音域に影響するということは、あこがれの歌手や曲などを、何度も何度も聞いたり、真似をして出そうとすることで、人の音域が変化することの証です。

ですから、もし魅力的な低音域を手に入れたければ、お気に入りの低音発声の歌手を、何度も何度も繰り返しよく聴いて、真似をすることです。そうすると、喉やその発声の出発点から、すでに違うということに気がつくはずです。それならば、真似をすることは無理なのでしょうか?そんなことはありません。しっかり喉を脱力して、真似し続ければ、同じような声を獲得できる可能性は、あるのです。(♭Ξ)

 

.いろんな考え方があると思います。しかし女性の声に限定するならば地声と裏声。いいかえるなら胸声と頭声で区別する人もいます。

地声は基本的に低音と思う人もいます。多くの方は地声と裏声でギアチェンジのように声が変化します。ここで苦しんでいる人が多いです。ギアチェンジがうまくいかない方は頭声の響きのまま低音まで下りてきて、自然に声がチェンジするのを待つか、低音の響きのまま上まで持っていくかのどちらかになることが多いです。前者が声楽や合唱に多いですね。後者はポップスやジャズ、ゴスペルなどに多いです。

チェンジが最初からなく自然に切り替わる方もいます。そんな歌い手さんを多くみていると顎が柔らかいひとが多いですね。顎の脱力感とチェンジというのは大きくつながっているなと思うこともあります。頭声のまま下りてきて自然にチェンジするまで待つという人は低音の発声はあまり考えないほうがいいです。おそらくバランスを崩します。年齢とともに低音が育つのを待ったほういいでしょう。

地声から高音を持ち上げるタイプの方は明るく歌い過ぎると喉が高くなってうまくいかないほうが多いです。自分では少し暗めかなと思うくらいがいいです。

頭声を声楽的と思う人も多いですが、頭声だけで歌うというのはオペラの舞台ではないですね。本当に主役を張っている女性歌手は地声から強い高音までの引っ張りがないと歌えません。頭声だけの発声は案外喉へのダメージも大きいです。基本的には役者のような声は、どのジャンルの歌手にも必要な要素です。 (♭Σ)

 

.低音域は地声で出しやすいこともあり、喉で押してしまう、力んで音程がぶら下がる、という傾向があります。喉で押すことで息が流れにくくなり、歌いにくさを感じるのでより一層力む、押した声には響きが乗らないので音程がぶら下がる、といった具合です。

ですので低声は息を吐くことにフォーカスした練習(息吐きと発声を交互に行うなど)が効果的です。また声の響きを逃さないために、発音に子音MMa,Moなど)を入れます。子音Mが発音できないとき=響きが乗らず音程がぶら下がる、と捉えて大方間違いないです。

また、低音域が充実した声域を持つ人とそうでない人とでは、低音の捉え方は少し違ってきます。実際に、高音域の方が得意な人は低声になると安定しなくなる、声が薄くなる、という傾向があります。その場合には、子音Mを発音する際に、胸(鎖骨の下辺り)に手の平を当てて、響きを捉えながら発声すると良いです。(♯α)

 

.声は「声帯」というオリジナルの楽器から出ますが、この声帯の長さや厚さによって、出せる音域や音色が変わってきます。体に比例していると言われていますので、身長が高い人は声帯の長さも長く、逆に低い人は声帯の長さが短い人が多いようです。一概にそうだとは言い切れないようですが。ですから、もともと短い声帯の人が低音を出そうと思っても、限界があります。

低音は普段から話しているポジションで十分出せる音域ですが、楽に出せるからと言って、左右の声帯をぎゅっとこすり合わせて押し出すように、または唸るように、掘り下げるように発声しては喉を壊してしまいます。

低音のときも高音のときと同じように、喉の奥を開いて、胸に響かせるように発声します。低音だと浅い呼吸でも出てしまいますが、必ず腹式呼吸で深く吸ってお腹で支えましょう。下腹部以外の余分な力は抜いて、胸に響かせるように練習すれば次第に深い響きの低音が出るようになるでしょう。(♯Å)

 

.低音域の発声は、「無理に出し過ぎない」ということがポイントだと思います。周りの人を見ていても思うのですが、普段の声のポジション(話し声近辺)というのと、低めに意識して出すその人の中での「低い声」であったり、高い声を出すときは、高いポジションに意識をもって高く出す、などというポジションの変化をつけている人がいます。このようにポジションを変えすぎるというのは、身体で制御しきれていない証拠なので、あまり賢明ではないと思います。

低い音域に関しては、「力まずに、中音域を出していたのと同じような感覚をより繊細に使う」という状態で出すことが望ましいように思います。自分の場合、低い声を無理して出そうと思っても出ないのと、喉だけが疲労する感覚になります。口の中が開き過ぎとも閉じ過ぎともいい声は出ないので、程よい開閉バランスを見つけることも重要ですし、しっかり身体で支えられた状態と呼吸のコントロールのバランスも重要だと思います。

一番大事なのは、「低い声を作って出さない」ということです。(♭Я)

 

.高い声は訓練で伸びるが、低い声の場合は限界があるというふうに聞いたことがあります。確かに、私自身のことを申しますと、もともと、下のソぐらいまでしか出なかったのが、歌の訓練を20年以上続けた今もそのぐらいです。低音域は伸びにくいようです。

しかし低音発声のやり方次第では、声質は変わります。女性の場合はこの場合は地声を使うことになると思います。

まず、咽頭をしっかり下げて、舌根を下げて、なるべく低い位置に空間を意識してキープします。その際、お腹や横隔膜を下方向に下げてしっかり支えます。

次に音を出すときに下げたお腹が上がってこないように、下の位置でキープします。たまに女性などで、低音の発声を地声で行ったときに咽頭を突き上げてしまって、とても苦しそうな声を出す人がいますが、これはいけません、必ず、お腹を下でキープしつつ、楽に喉を下げたような状態で歌うように訓練しましょう。

まずは咽頭が下に下がるように、息を吸って喉が下がった状態を体感して、それに慣れるように訓練してみてください。(♯β)

 

.高音を出す時は、声帯をピンと張り緊張させます。

逆に低音を出す時は声帯を緩めて大きく使うので、ウォーミングアップ、クールダウン両方の意味で高音を発声したときはその分低音も発声して声帯をまんべんなく使うと良いです。

また、Aメロは低音域、Bメロで高音域という構成の楽曲も多いです。

その場合、十分に低音域で鳴らす(声帯をくっつける)ということをしておくと、ダイナミックなBメロを十分に表現することができます。

高音と低音を別々のものと考えるのではなく、低音の支えの上に高音が成り立っていると意識してみてください。

実際、低音域を充実させると高音も伸びてくることがよくあります。(♯ё)

 

.私は専門がテノールですので、バリトン、バス・バリトン、バス、メゾ・ソプラノ、アルトの方々より低声全般につきまして疎いところはありますが、私なりに低声発声について思うところを述べたいと思います。

低声は、オペラ作品では威厳のある王様、お父さん、お母さん、お婆さん、時折魔女など落ち着きがあり、知性を兼ね揃えたキャラクターを演じることが多いです。そのようなキャラクターに適切な声としまして温かさ、丸みが必要かと思います。

その声色をどのように発するか。中、高音域と同じく体の支え(横隔膜、丹田、腰)で筋肉を長くゆっくり使いながら、上顎奥(口で息を吸うと冷えを感じるところ)まで息を流して声を発することがよいかと思います。

ここで注意する点は、声を押し出すように出さない。低音域も、高音域と同じ場所、高さで声を発するということです。低音域といって低い位置で声を発したり、押し出して発すると音程がぶら下がります。特に高音域から低音域へ下降するフレーズ、2音間で一気に高音域から低音域へ下がるときの低音域におきましてその注意が必要です。

低音域をしっかり発すると、中、高音域もしっかりする声色になり、高音域の音域自体が伸びていく良い影響があります。(♭й)

 

.低音だからを発声方法を変えてはいけません。高音を歌う時と同様に、マスケラなどの意識は必要です。

どうしても低音を出そうとすると、掘ってしまう人が多いがそれは逆効果で、しっかりした響きのなかで音階を下行する練習をすると効果があります。

初めは声量にこだわらず、小さい声で練習するのも無駄な力が入らなくてよい練習になります。

また、胸に手をあてて、響く感覚をつかむのも効果的な練習と考えます。 (♭Ц)

 

.完全に脱力できた状態が、一番低音の出やすい状態です。

試しに寝起きに声を出してみて下さい。頑張らず、適当に。この時に出せる一番低い声が、ご自身の出せる最も低い音です。弦楽器でいうところの開放弦の状態です。

しかし、起きて数時間活動しているうちに、声はもう少し高いほうに自然とシフトしていきます。

寝起きと同じ音域まで要求するのなら、緩めます。躍起になって頑張ってはいけません。

ハミングだと無理なく緩められるので、そこから始めてみて下さい。(♯∂)