発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q. 本番の前に声がでなくなったときの対応を教えてください。

.本番の前に声がでなくなったときの対応としては、基本はキャンセルでしょう。風邪などで声が出なくなった場合は、共演者のためにも、キャンセルするべきでしょう。ただ、代役が居ないという場合は、そうはいかず、出ない声を使わなければならなくなります。

声が出ないという場合の多くは、声帯が腫れている(実感としてで、医学的にはわかりません)ようなので、市販の解熱鎮痛剤を使う人が多いようです。もちろん、病院に駆け込む時間的余裕があるならば、そのほうがよいですが、大抵の場合、その余裕はないものです。

響声破笛丸や駆風解毒湯を服用して、何とかなる人もいるようです。トラネキサム酸のペラックTという薬も、効果はあるかもしれません。簡単な発声練習をしてみて、効果が無ければ、最終的には、ステロイドを使うという方法があります。声帯辺りに、耳鼻咽喉科ステロイド注射をしてもらうものですが、一日しか効果はなく、体への悪影響と、使用後の声帯の荒れ具合を、元に戻すのは大変だという話です。一生に一度の、重要な本番ということなら、意味もあるかもしれませんが。([E:#x266D]Ξ)

 

.声が出なくなったときに自分でできることというのは限られていると思います。あなたがプロ、またはプロを目指すような立場であるならば、信頼のおける耳鼻咽喉科の病院や医師とつながりをもっておくことだと思います。特別なことをするわけではありません。不調な時や、アレルギーなどの際は病院にいき歌手としての状態を伝えたり、薬の副作用やアレルギーの話をしっかり伝えておくだけでもいいと思います。

私の経験上、病院によって出してくれる薬の強さのレベルが違います。舞台に穴をあけられないときなど、相談するととても強いステロイドなどを出してくれる病院もありますし、病院で吸入する薬を自宅用にだしてくれる病院もあります。

声が出なくなったときは、治療の専門家のアドバイスと薬でしょう。

できることといえば、吸引したり、蒸気を喉におくる、よく睡眠をとるくらいしか対処はないと思います。

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.本番のどれくらい前かにもよると思います。本番の数日前なら、耳鼻咽喉科に行ってカメラで喉の状態を見てもらい、必要な処置をして本番までひたすら無言で過ごし、たくさん睡眠をとります。たとえ不調だとしても、本番になんとか声を出すために努めます。ただ、声が出なくなるくらいのダメージを受けているのなら、本来ならその時点でしっかり休むことを先決するところなので、無理をしてでも歌わざるを得ないのか、もしくは代役を立てられるのか、そのときの状況で判断していくしかありません。もしも、本番、当日に全く声が出なくなったのであれば、言うまでもなく出演をキャンセルするしかありません。

声が出なくなった理由は何であれ、事情をお伝えしお詫びをする以外にできることはありません。なんの原因もなく声が出なくなる状況にはならないので、本番のもっと前から調子が傾く兆候はあるはずです。私は必ず事前に対処するので、本番当日に声が出なくなったという経験はありません。([E:#x266F]α)

 

.どのタイミングで出なくなったのか。どの程度の症状なのか。高音域だけが出ないのか。中低音域も全然出ない状況なのか。など、タイミングと実際の症状によって、対処法は変わってくると思います。

中低音域が全く出せないのであれば、これは重症なので、降板するレベルだと思います。一刻も早く音声外来対応の病院へ行き、適切な処置をしてもらうことが必要です。病院での診察は、できる限り早いほうがよいです。症状の軽重に関わらず、病院での処置や投薬、本番までの時間を医師と相談し、どの程度可能なのかを専門家の見地で判断してもらうことが大事だと思います。

本番で歌うことが可能となった場合、気を付けなければならないのは、「とにかく声を押さない」ということです。平時よりもさらに気を付けなければなりません。声の調子が悪いからと言って、無理やり出そうとして声を押し出してしまうと、その後のダメージが大きくなり、本番中に再起不能になることが考えられます。声としてのパフォーマンスが劣るのは覚悟のうえで、最悪の事態の破綻ということを回避することが必要です。声のパワーは弱くなっても、魅せ方の部分でカバーはできると思います。([E:#x266D]Я)

 

.本番直前で、声が完全に出ない場合は代役を立てるなりして、その舞台に穴が開かないように考える必要があると思います。少しでも出せる見込みがあるのであれば、耳鼻科の音声専門のお医者様にステロイドの錠剤、吸入、点滴をお願いすることもあります。また、鍼灸東洋医学の民間医療に頼ることもあります。

私自身の経験では、トレーニングを積んでいると、風邪をひいたり、声帯が炎症を起こしていても、声が出るということがあります。若く未熟だったころは完全に出なくて降板したこともありました。また、大人になってからでも、医者の判断で降板せざるを得なかったこともありました。その時はダブルキャストだったので、もう一人の同じ役の方に代わっていただきました。声が少しでも出る限りは、上記のような処置を施します。

でもどうしても声が出ないのであれば、延期できるものは延期していただいたり、代役を立てたり、やむを得ずキャンセルすることも視野に入れます。悔しいですし、やってはいけないことですが、腹をくくることも必要と自分に言い聞かせ、キャンセルを受け入れるしかないと思います。([E:#x266F]β)

 

.声が出なくなった原因、また症状(まったく出ないのか、嗄声を伴うのか等)によると思います。心因性のものなのか、炎症によるものなのか、結節等によるものなのか、病院等で適切な診断を受けることが先決です。そのうえで、本番で歌うか歌わないかを医師の意見を参考に判断してください。

軽い風邪などで歌っても差し支えないと判断された場合は、喉だけではなく身体全体を温かく保ち、こまめに水分をとり本番までリラックスして過ごします。

身体の深層筋を意識する訓練を日ごろからしておくとよいと思います。表層の筋肉を固めずに、深層筋を活性化させると土壇場で平常心と実力が発揮できます。([E:#x266F]ё)

 

.調子がいい時に100が出せるのは当たり前です。本当のプロの力とは、調子が悪い時に合格点60くらいを出せることだと思います。そのためには普段のトレーニングで自分の実力をまず200くらいにしておくことが大切です。100を出すのに120くらいの実力を持っていればいいと考えている方が多いようですが、それはあくまで調子がいい時の話です。200の力を用意しておかなければならないのは、調子が最悪のときに60の力を出すためなのです。アマチュアは、調子が悪ければ休めばよいです。プロは、極論を言うと、インフルエンザで熱が40度あろうが、親が死のうが、その舞台を断ると次がないのです。

もし声が出ないのが心理的な問題のようなら、その現場の人間関係に悩んでいることがありそうです。大丈夫。その本番が終わればそこでの人間関係は終わりです。また、苦手な人がいてもかまわないので「あの人のことが嫌い」という自分を認めてあげましょう。

声が出ないのがのどの問題なら、本番までにもし何時間かあるなら、のどの痛みをとる注射や点滴があるはずですので専門の病院で処置をしてもらってきてください。本当は発声がちゃんと身についていれば、声が出るはずです。(これは私がバリトンだからで、テノールや女声はそうではないかもしれません。)私はそうしたときに本番を一回だけ経験しましたが、低いほうから小さい声でハミングしていき時間をかけてウォーミングアップしました。([E:#x266D]∴)

 

.本当に声帯に問題が生じて声が出なくなった場合は、本番をキャンセルするのが最適解です。でもそれは周りに迷惑を掛け、信頼を損ね、お客様をがっかりさせることと同義です。とても怖いことですが、それでも自分の喉を守るためには、時と場合によっては勇気が必要です。休むべきときに無理をして、二度と元の声を取り戻せなかった歌手も知っています。

そこまでの事態でない場合、例えば緊張してうまく声が出ない、練習をし過ぎで声がカサカサする、風邪の引きかけ、治りかけぐらいでしたら、いくつか対処法はあります。

まずはスムーズに息の流れを作ること。呼吸練習で体と横隔膜をほぐしてから、ハミングやリップロールで一曲歌ってみるといいです。喉への負担が少なく、かつ本番でやるべきおなかの支えが確認できます。

そしてステージに出る直前まで、お辞儀をする、屈伸する、手首を回す等、軽く体を動かし続けるのも良いと思います。不調の時は血流も滞りがちですので、血行をよくすることも効果的です。

いずれの場合も、調子が悪い状態で無理をしたことには変わりありませんので、終了後のケアはしっかりとします。すなわち、よく食べ、よく眠り、乾燥を防ぎ、必要があれば医師の指示のもと薬を服用することが肝要です。([E:#x266F]∂)