発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q. コンコーネ50の1番の歌い方について教えてください。

A.ロングトーンなどで、声をコントロールできるようになってからでないと、本当の意味で上手く歌うのはとても難しい曲です。

まず、最初の2小節と次の2小節がきちんとレガートで歌え、強弱記号にしたがって出せるようにすることは、難題です。最初の2小節と次の2小節では、チェンジを意識しておかないと上手く歌えませんが、その声の配分も声種や趣味によって何通りも考えられます。難しいと同時に、楽しい部分です。

続く5小節目からは、レガートではないのですが、跳躍も無く自然な下降音型なので、ついついそのままレガートで進めてしまいがちです。

10小節目からは跳躍が始まります。レガートな跳躍とそうではない跳躍、その対比をどのように表現していくか。そして、最初と同じフレーズが再び始まります。声と息の配分を、上手くコントロールしていかないと、発声の弱点が見透かされてしまうところです。

実際に、この強弱記号などを忠実に守って練習することは、あまりないとは思います。もっと簡単な、聴きばえのするデュナーミクで練習しました。現段階の発声のテクニックに応じて、練習するとよいと思います。([E:#x266D]Ξ)

 

A.出だし2小節は比較的低い音なのであまり頑張り過ぎないで、声量よりも高い響きにいくことを重要視してください。ここで頑張ってポジションを落としてしまうと後が苦しくなります。

4小節3拍目のミの音の後、四分休符があります。そこで体が休まないことです。次が前と同じ音なので休符で体がほどけてしまうと音を作り直さなければいけないので大変です。

5小節~8小節にかけては下降形なので高いミのポジションをキープしながら低いレの音まで降りてきましょう。ここでキープできないと声がどんどん重たくなってしまいます。

9小節~12小節にかけては、でこぼこな形の音形です。3回ソが出てきます。これが落ちすぎないようにしましょう。いつでも高い音へ跳躍できる体勢や響きの位置で出すことが大事です。

始めは声の変わり目などはあまりきにせず、高い響きと明るい声で重くならないよう気をつけてください。

([E:#x266D]Σ)

 

A.最高音がミで、声のチェンジもしくはチェンジする前後の音にあたります。しかも、最初の1、2小節目でいきなり1オクターブ以上続く上行形を歌わなければなりません。歌う前に発声練習で、ミより1、2度上まで声を出しておくことをお勧めします。ミ前後の音をしっかり喉を開けて歌いましょう。その喉を開けて歌ったときの感覚、体のポジションや高音を歌うときのテンションを感じてから1番に取り掛かります。ミを歌うときの体の状態を先に練習しておくのです。

1小節目最初のドは、すでに4小節目のミを見据え、体を開いて歌い出してください。途中3段目で低音が続きますが、その時も同様に音が上行することを見据えてポジションを(下げずに)保ちます。10度の上行形がどうしても喉に力が入ってしまう場合は、リズムを取り省いて一定のテンポで音を歌ってみましょう。一つの母音だけではなく二つの母音を組み合わせて歌う(例えばアとエ、アとオなど)、ことを試すのも一つの方法です。

([E:#x266F]α)

 

A.メロディが緩やかで、それぞれの音が跳躍せずに、音階そのままに書かれています。

ですので、まずはメロディをより滑らかに歌うことを意識しましょう。どの音も、粒をそろえて歌うように意識します。例えば、すべての音が一直線上に並ぶように。

音階が高音になるにつれ、自然とクレッシェンドになるように、下降すればディミヌエンドになるように楽譜上で導かれています。ので、滑らかに歌えばおのずと楽曲の音楽的な構成もできあがるでしょう。

全音の楽譜では、練習曲の解説にも書かれているとおり、声区の転換部分に休符や息つぎが入れてあり、胸声と頭声の変わり目、ジョイントの部分がより合理的に動かせるように書かれています。中間音域が苦手または勉強中の皆さんは休符や息つぎを意識して歌うと、より楽に歌えます。

ソルフェージュの勉強としても効果的です。発声練習として使う場合は、いろいろな子音を使ってより滑らかに歌えるように練習しましょう。([E:#x266F]Δ)

 

A.2小節をひとまとまりとして、できるだけレガートに歌うことを心がけることが重要です。そして、正確な音を歌うことはとても重要なことなのですが、音を狙いすぎてしまうと歌いにくくなってしまうと思います。特に高音域を狙いすぎないことが重要だと思います。

歌うときは、階名(ドレミ…)でもいいですし、「オ」などの母音でもいいと思います。最初は「オ」の母音で歌う方がやりやすいかもしれません。慣れてきたら階名唱法でソルフェージュの一環として取り上げるのもいいと思います。

音程や音域によって口の形が変化しすぎないように、口が狭くならないことも大事なことだと思います。四分休符では少しゆったりしたイメージでブレスをとることを心がけると、余裕が出てくると思います。ブレスの印がある部分でも、あまり焦り過ぎないでブレスをとることを心がけてみてください。

曲中に出てくる<(クレッシェンド)、>(デクレッシェンド)の部分はできるだけ意識して掛けるようにしましょう。これらのことはレガートに歌うために必要なことになってきます。([E:#x266D]Я)

 

A.最初の2小節に大きなクレッシェンド、ディミヌエンドがついています。2小節を一つのまとまりと感じて歌ってください。2小節目の頭に重きを置くようにしましょう。低いドからスタートして一オクターブ以上のミまであがらないといけないので、初めの歌いだしから、この高いミにあがるつもりで歌い始めましょう。

5小節目からは高い音からの下降になります。おなかを緩めたり支えを忘れないように気をつけましょう。

二段目 の3小節目からは、休符があるものの、4小節ひとまとまりを意識してください。長い音符の多い曲なので、おなかは常に支えを意識し、息がずっと前に進んでいくように歌っていきましょう。

初心者の方は、コンコーネを歌う際に、支えや意識が体の上のほうに上がってこないように気をつけてください。歌に慣れていないとついうっかり、おなかで支えることを忘れて、喉、首、肩で歌いがちですが、歌声は体で支えられ、最終的には、頭の上や、体の外に空気の振動として響いていくことだということを忘れないようにしましょう。([E:#x266F]β)

 

A.あえて曲の構造とハーモニーから歌い方を考えてみます。この曲はハ長調です。ハ長調は白く、純粋でのびのびしています。ベートーヴェン交響曲第一番、運命の4楽章、ビゼー交響曲などがハ長調です。調性から名曲をたどって調に対するイメージを持ちましょう。

この曲は3部形式でABAの各部分が8小節。3部形式の中間部は通常少し高いテンションで演奏します。(蛇足ですがメヌエットのトリオは逆に少しゆっくりになります。)この曲の場合特に属音ペダル(伴奏左手の下でソがずっと鳴っている)があるのでまさにその傾向が強いでしょう。

どのタイミングでテンションを上げるかというと、まずこの曲初めの6小節間はハーモニーにほとんど変化がないことに注目してください。7小節目がIVの和音でサブドミナント、8小節目がVの和音です。ここを半終止と取らないこと、つまり1小節目から少しずつ上がり、7小節目で広がりながら8小節目を目標としてテンションを上げるのがポイントです。(音の高さと音楽の緊張感は何の関係もありません。はじめ8小節の音楽上の頂点は8小節目の低いミの音です。)そのテンションを保ちながら9小節目に入ります。必要以上に突っ込まないように。(8小節目で半終止して9小節目から急に上げるのはよくないということです。)

16小節目で普通におさめて(全終止)Aに戻ります。戻ってきたAはサブドミナントが1小節早くくるので少し早めに準備しましょう。普通にカデンツして終わります。([E:#x266D]∴)

 

A.コンコーネ50番の中で一番の難曲が、この1番だと感じます。引っかかるポイントは、冒頭の1オクターブと3度の上行です。この上行の途中に「チェンジ」と言われる声の変わり目があります。人によって違いはありますが、ラシドレのどこかがチェンジに当たり、超える際に声がひっくり返ったり、声が浮いてコントロールできなくなったりしがちです。それを継ぎ目なく滑らかに乗り越えられるようにすることが声楽の基本です。中には全く引っかからない人もいますが、それはとてもラッキーなことです。

チェンジは回避するものではなく、訓練して真正面から挑むしかないものです。それについては読んでできるようにはならないので、レッスンで学んでください。

それさえ滑らかになれば、構造は単純明快な曲です。アルシスとテーシスのお話をしましょう。アルシスはギリシャ語で「上昇」「増大」「飛躍」、テーシスは「下降」「減少」「鎮静」などの意味があります。すなわち、曲中で上行で盛り上がる部分がアルシス、下行で落ち着いていく部分がテーシスです。このアルシスとテーシスは、足すとゼロになると考えて歌ってください。得てして盛り上がる方を重視しがちですが、沈む方を丁寧に扱いましょう。陰陽が出せると、練習曲が「音楽」に変わります。([E:#x266F]∂)

 

A.構成からみてみます。全24小節で、これを8小節×3のABA’として、さらに8小節を4×2で2つに分けると、A、A1、B、B1、A、A2と捉えられます。

Aは、音程でみるとドレミファソラシドレミ、コードではCメジャーにCマイナー、つまり、ドーソ、ラーミの長調短調。そこからA1では高いところから下がって戻っていきます。ミレドシラ、ソをとばしてファ、そして、ミレで止まってドまで戻りません。その継続感をもって、サビフレーズBへ入ります。これもソシドソ、レソミドとソからドまでをソ(ラ)シドー、ソ、レーソ、ミード、これをソド、ソレ、ソミでドレミと捉えるとドレミードとなります。

次のソーシードーソーは同じくり返しです、B、B1は、b2-b3、b2-b4の形です。b3のレーソーシードに対し、b4はファソミソレーです。A-A1と同じく、レで止めています。

つまり、b2b3b2A1A2a3a4、b4A1A2a5a6となり、大きくは帰結のAブロックのA1A2がくり返され、まんなかの転のBブロックではB2がくり返されています。また、a3とa5はミーレドーシとミーレドーラとさいごの1音が違っているだけです。([E:#x266D]Э)

 

[参考]練習曲の解説

〔1〕最初の2小節と次の2小節の間に声区の転換が要求されている。もしこれをchangeすることなしに3、4小節を歌うと上のほうの音はつっぱって、動きのとれない声になってしまう。Eの音でのdim.は初学者(ことに男声)には困難であるかも知れないが、美しいフレーズを作るためには、よく開かれたのどと、よく混ぜられた息と声の柔らかさが必要なのである。

「コンコーネ50」(全音楽譜出版社) 編著者 畑中良輔