発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q. よい声とはどんな声をめざすのでしょうか。声に問われることは何ですか。

 

.「よい声」には、二段階、または二種類あると考えています。まず、健康的に、「よい声」。もう一つは、歌声、話し声としての、「よい声」です。

健康的な「よい声」は、声帯や喉回り、呼吸器とその回りの筋肉群に、異常や萎縮がなく、楽に、大きな声も小さな声も出せ、掠れたり雑音が混ざったりしない声、でしょうか。今は、コロナ禍で、「小声」が推奨されているので、あまり長い期間、「小声」礼賛が続くと、多くの人が、健康的な声でなくなってしまうのではないかと、危惧します。

もう一つの「よい声」は、歌声・話し声ですが、その人が声を使いたいジャンルでの、「よい声」です。つまり、その人が、出したい、あるいはとても魅力的だと、思う声です。たとえば、オペラでのよい声と、浪花節でのよい声は、大きく違います。その人が使いたい声なので、どちらがよい声とは、決められません。浪花節を、うまく歌いたい人には、オペラの声は、必ずしも何の魅力はないでしょう。その人にとっては、「よい声」ではないのです。

それでも、浪花節をうまく歌いたいという人に、声楽の発声の基礎を応用して、立派な声を、出せるようにすることができます。それは、共通するところが大きいからです。([E:#x266D]Ξ)

 

.自分が何を目指すのかということに尽きると思います。ある人によくない声でも、自分が目指すべきものなら、よい声ということになるのではないでしょうか。ただし、ある一定の基礎レベルという点では、声のレベルを考えることはできます。

・第三者に豊かと思われる声

1オクターブ以上の音域

ロングトーンの自由さ

などは、どんなジャンルの声でも基礎レベルとして追及していいと思います。これらを聴いただけで、審査員ならあなたの声のレベルを判断します。同じジャンルでも人によって好みは違いますから「よい声」という定義は千差万別です。そういう意味で「よい声とは」と問われたらあなたが目指しているものとしか答えられません。

しかし、これもまた、どんなジャンルでもある一定上の声のレベルというラインがあります、それらは好みではなく技術の基礎といってもいいでしょう。それを向上させることは可能と思います

カラオケ上手というのは器用に歌えたり、声の成熟度が早かったりといういわゆる「上手」という状態です。「上手」な人はたくさんいますが、声が「個性的」な人はあまりいません。たとえば美空ひばり北島三郎稲葉浩志桑田佳祐ルチアーノ・パヴァロッティマリア・カラスなど、プロは、顔を見なくても声を聴いたらその人がわかります。これが個性だと考えています。

器用に上手になろうとすると声の個性が失われることもあります。

そういう意味では声の個性を尊重しながらの指導というのが、トレーナーも注意しなければいけないことだと考えています。([E:#x266D]Σ)

 

.「よい声」の定義は、ひとことで言い表すのは難しいと感じます。なぜなら、声を使うジャンル(演奏なのか、演劇なのか、洋楽か邦楽か等々)によって「よい声」とされる、または聴き手が「よい声」と感じるものさしがそれぞれだからです。とはいえ、一般的な見解ではなく、もっと具体的に、あなたの声で見た場合には、どんな声をめざすかについては、明確なものがあるといえましょう。

それは、声を変に作ったり何かに似せたりするのではなく、「あなたの声(あなたの声帯)そのままに、身体を使って出す声」をめざすことです。これは、あなたが声を使うどのジャンルに進んだとしても通用します。

またどのジャンルであれ、声に問われるのは「伝えること」に集約されると思います。声によって情報を伝える、声によって音楽・表現を伝える。それらは、身体を使って、声(または息)のコントロールを自在にできりょうになることで、向上していくのです。ですので、ぜひとも身体を使って声を出すことを求めていってください。([E:#x266F]α)

 

.一言に「よい声」と言っても、その基準は千差万別、十人十色というのが本当のところだと思います。Aさんの思う「よい声」と、Bさんの思う「よい声」は一致するとは限りません。それだけ「よい声」というのは判断に差が出るものであると思います。

それならば、「よい声」の反対である「不快な声」とは何かについて考えてみればよいと思います。「不快な声」というのは、その人の発する声に対し、聞き手が違和感をおぼえる声ではないかと思います。違和感のある状態というのは、多くの場合、「無理をした声」または「充分でない声」ではないかと思います。この部分を改善していくことが、「よい声を目指す」ということにつながっていくと思います。

私の中での基準としては、「その人が持って生まれた楽器の特性を充分に活かした声」であり、「歌やことばの聞こえ方が、聞き手に対して違和感なくしぜんに聞こえる状態、説得力のある状態になっている」ということです。無理につくられた声というものではなく、あくまでも、自分の特性を大事に相手に伝わりやすい状態であるかということで考えてみてはいかがでしょうか。([E:#x266D]Я)

 

.ジャンルによって求められる声の音色は違うでしょう。クリアな音色、少しざらついたような音色、こもったような音色、響きのある音色、シャウト、ウィスパー、など、曲によっても要求されるものは異なるかと思います。

しかし、声の基本として目指していただきたいのは、体に支えられ、息が流れた上で声を出すということです。どのような音色であっても、まず、体からしっかりと声を出すということです。

人間の体も、声帯を通して音が振動し、体全体に共鳴して、空気中に音の振動をもたらすという点では、楽器と同じです。この楽器は唯一無二であり、ご自身にしか出せない音をもつのです。それを自覚して自分にしか鳴らせない楽器を作り上げるような気持ちでトレーニングに励んで欲しいと思います。

主にマイクを使うジャンルの人も肉体という楽器が与えられているのですから、充分に鳴らさないのはもったいないでしょう。鳴らし方を学び、最大限の可能性を引き出すのが、ヴォイストレーニングの醍醐味かと思います。肉体から声を鳴らすということを考えてみていただきたいです。([E:#x266F]β)

 

.よい声とは、月並みに言えば、聞いていて気持ちのよい声でしょう。どういう声が、聞いていて気持ちよいかは人によってさまざまな判断があるでしょう。誰が判断するのでしょうか。

ここでは視点を変えてみましょう。自分の声を録音で聞いたことがありますか、どう感じたでしょうか、聞いていて気持ちよかったでしょうか。

答えの一つは「自分が」聞いていて気持ちよい、ということです。あなたの声です。あなたが大好きならそれでよいではありませんか。

次に、よい声、とは、必要とされる声、というのがありえます。声優として仕事で要求される声。か細い声、しわがれた声、ロックのシャウト。それらは、よい声、ではないでしょうか。

必要に迫られて出される声、赤ちゃんの泣き声、「助けてー」や「苦しいー」などの呻き。これらはよい声とは言えないでしょうか。医学的に無理のない声をよい声とでもいうべきでしょうか。

声に問われることは、やさしさ、温かさ、厳しさ、人生の重み、切なさ、何だと思われますか。([E:#x266D]∴)

 

.たとえば「ルイ・アームストロングIt's a wonderful worldのジャズシンガー)がよい声か」と聞かれれば、意見はわかれると思います。素晴らしい歌声だという人もいれば、ダミ声や悪声だという人もいるでしょう。シャルロット・チャーチ12歳でデビューし、天使の歌声ともてはやされた歌手です)も、澄み切った歌声だという人がいれば、いつまでも子供みたいな声だという人もいるでしょう。

私は二人ともどちらもよい声であると思います。私の考えるよい声とは、「息が流れている」ということと「自身の声の特性を理解していて、それを最大限生かせている」ということです。

息が止まった喋り方や歌い方は、聴く人を苦しくさせます。声を発する側も不完全燃焼となります。息が流れていることはすべてのよい声の共通事項だと言っていいでしょう。

自身の声の特性を生かせているというのは、ないものねだりをせず、生まれ持った声を育てるということです。元来、細い声なのに、無理してパワフルな歌唱を目指しても、元々、パワフルな声の人に、なかなか勝てません。喉をつぶしてしまうことにもなりかねません。逆もまた然りです。鴉は白鳥にはなれませんが、美しい鴉になら努力次第でなれるのです。([E:#x266F]∂)

 

.よい声や声に問われることにおいて、考えるヒントを述べます。一般的には、悪くない声から魅力的な声といえます。よしあしでいうと機能として使えること、使いやすいことが問われることが多いのですが、本質的には、もってうまれた発声に関する身体の器質を損なわず、最高の状態にまで、もっている機能を高めて使うこととなります。日常と、ビジネスと、芸事と、それぞれのシーンで問われるものは異なっていきます。ですから、あなた個人が、よいと思う声から問いたい要素を出していくことに尽きます。([E:#x266D]π)