私はどこに行っても、全部即興で、話す内容は考えないのです。10時間でも喋れるといったら、結構驚かれる。ところが外国では、高校生で30分くらい話せるのは当たり前です。もう小さな頃から、2、3歳頃から、これについて君の意見を言ってごらんということをやっている。そういうことで、とにかく喋ることをきちんと位置づけるという訓練をやっているわけです。だから、そこでの記憶力が磨かれます。
音というのはまず記憶力が必要です。時間の中に描くわけでしょう。こういう曲を聞いていて、美空ひばりさんなら、3回聞いたら全部覚えてしまうというのです。少なくとも1回聞いて、30秒くらいたったときに、もう一度同じような記憶がなければ、次にどこに展開してどう戻ったか、何もわからないですね。今の若い子は、曲を聞かせて、今の歌詞の内容は何だったとかいうことも大して聞いていない。聞きにくい歌詞は多くなったのですが。昔は1曲聞いたら、その歌詞の内容くらいは把握していた。今はテロップがあります。逆に、テレビだってテロップがないとわからない。それだけ身近になったといえば身近になったのですが、それでは音の記憶力が育ちにくくなります。