以前は、私は20歳以下はとらず、20歳になってから来てくださいといっていました。ただ十何年前に、どうしてもという高校生がいて、別に年齢ではないのだろうと、開始してからずいぶんと接しました。あまり自分が正解を持つと思わないほうがいいと思います。発声の仕方にも、教科書的な答えというのがあります。それを実習的にやってみるのも悪くはありませんが、それが全ての目的ではないと思います。
相手はいろいろな声を持っているわけですから、発声をベルカントとかウィーン少年合唱団にこだわること自体がおかしいのです。音大はそれをやってきたところです。とはいえ、教育というのは、ある程度そこを持たないと、仕方のない部分があります。それを本人が選ぶまでの間というのは、相手を肯定することです。ワークショップをやるときに、声の小さい子は小さい、君の声はこういうふうに出ているというところから、スタートする。自分がどういう声を出せば、相手が一番しゃべりやすくなってきて、それに応じたら、向こうはどう開いていくのかということです。