発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.音声での組み立てと再現力とはどういうことですか。

Q.音声での組み立てと再現力とはどういうことですか。

A.皆が質問を10個書くのは簡単でしょう。それを優先順に並べるのは簡単です。でも、頭の中で全部やってくださいといって、10個を扱える人はあまりいないです。海外では高校生で3分間のスピーチをやらせて、どこで笑わせようかというようなことまで組み込める。これは教育の違いです。

 

Q.日本人は音声に対する再現力が弱いというのは。

A.これは、せりふや歌にとっては致命的です。1時間やれば、4分くらいのネタは覚えられる。でも、次の日に忘れてしまう。そういう部分では、日本人の大半は弱いのです。組み立てを自分の中で考えてみましょう。司会で5分のことを覚えるのに30分はかかる。お笑いの人は、45分のネタを、完全に間合いがとれてやれるまでに、56日はかけます。最初は、それでできたら優秀です。6年ほどやっても、トップレベルの完成度にならないものです。

 

Q.歌の世界を音楽的に構成して捉えるには。

A.基本の力は再現力です。例えば、音楽の音として残っていることです。1番の最初はどういうふうに歌ったかというのが残っていないと2番の最初は、本当の意味では歌えないのですね。3番の最初も同じです。

 

Q.音楽的に歌うとは。

A.私は、一曲全体の構成をみるのです。Aメロ、Bメロがこうなって、最後のAメロはこうなった。最初のに対して、どういうふうなデッサンの違いを出したか、まったく同じにしたのか、本来は同じにしなければいけない。何かが変わったとしたら、それは違うデッサンをそこで試みたから、それがよいのかどうかを、全体から見るわけです。

 

Q.日本人の場合、「歌ったところしか覚えていない」とはどういうことですか。

A.全体の構成に気を使っているかということですね。たとえば「このフレーズをとってコピーしてごらんなさい」と言っても、なかなかできない。美空ひばりさんは、2回聞いたらコピーできたという。パッと聞いて、自分ができないところとかやりにくいところとかをチェックします。音楽のパターンがたくさん入っていたら、難しいから気をつけようとなります。3回目に自分のオリジナルのフレーズになっている、このくらいのことができると、即興のフレーズの練習になります。

 

Q.アドリブが苦手です。

A.本来、音楽というのは、漫才の中のアドリブと同じで、そこにいる客を見て、今、起きたことや自分の言いたいことを組み立て、パッと言ってしまう感覚で処するものです。いきなりディスクジョッキーの感覚なのです。そういうもので、即興でできなければいけない。

アドリブでも、日本の歌のアドリブは覚えたとおりにやっている。スキャットも元曲と同じわけです。そんな問題は日常の中での言語に対する感覚、言いたいことをどういうかたちで表現するかを入れておくところからです。そして音楽とどう掛け合っていくか、やることは山ほどあります。決まった形をやらせられるというより、そういうことがおもしろいと思います。誰かの歌を、誰かのように、きれいに歌うことが目標では、もう価値は出てこないのですから。

 

Q.できることだけをやるのがよいのですか。

A.勉強としてやっている分には、何をやってもかまわないのです。それが何かから抜け出すためのひとつのベースであることもあります。応用度を見るためにも、基礎をやるにも、とてもできそうもない一部分をやったほうが、より課題が明確になるのではないかと思います。

そのギャップをトレーニングとつなげていくわけです。

「イエシー」、「イーエシー」「イエーシー」とか、自分のイメージが整って、成り立ったとか成り立っていないとかをみる。一声でもそう、それが関連していくように構成をとっていく、すると、ひとつの世界としての成り立ちが難しくなっていきます。そこからが本当の作品づくりです。

 

Q.時空を変えるとは。

A.この感覚は日本のヴォーカルには、あまりないのです。感覚がついて息がついていないとできない。どういうことかと言うと、「タタタタタタタタタータ」というのが、時系列に並んでいたら、時計の時間と変わらないのです。芸術的でも何でもないわけです。

要は時空間が変わっていかなければいけない。ある意味、練りこまなければいけない。そこから離れたところから、一番いいところで結ぶ。デッサンを見せていくわけですね。

 

Q.すぐれた歌とは、どう判断するのですか。

A.この前、谷川俊太郎さんがきて、「歌の判定ってどうするのですか」と言われました。同じ曲を100人から聴いたときに、飽きない歌は、すぐれた歌い手です。100人聞くと、すごく疲れます。私はそういう場をずっとみてきました。そこで新鮮に聞こえたり、自分が心地いいと聞こえるのは、100曲のうち1曲あればよいくらいです。

連続して聞くと、もう、5秒くらいで切りたくなるわけです。そこで、もっと聞きたい、会いたい、人に勧めたいと思うかで判断できます。厳しい言い方をすると、ほとんどは、あえて聞いてみたいと思わせる力はないわけです。がんばりも努力も、くんであげたら伝わる。どれ一つ価値のない歌はないのですが、あえて突き放す。

だから、迷うこともないのです。後ろで寝ていて、100人くらいが歌うとき、顔を見たいと思うもの、1曲ずつ聴いていくと、どれもよさそうなところがあると思います。そういうことが連続になって、全部が同じ曲というなら、さらに歌い手の力ははっきりします。

 

Q.一体感とは、何でしょうか。

A.体と音楽とを一体させていくこと。ギタリストやピアニストが、楽器と一体になるのと同じです。声は内側に入っているから、一体のように思っても、簡単に動くものではない。そこを無理に動かすから、音楽をふしぜんにしてしまうことが多いですね。

実際の歌に、こんな歌い方をすると、失神直前になるようにせまってみます。体力も集中力も限界で、それを7割や6割に抑えないと、ステージングにはならないくらいに。丁寧に歌えないのは、よいとします。そこは舞台と分けます。