Q.せりふの感情表現のトレーニングを教えてください。
A.セリフを人にきかせるつもりで感情を入れて読んでみましょう。
1.「だからね、つまり、こういうことなんですよ。 ・・・・」
2.「お願いだから、もう、やめて。」
3.「さようなら、きっと、また、会えますよね。」「やあ、やっと会えましたね。」
Q.口上によるせりふのトレーニングはありますか。
A. 「外郎売り」の出だしの部分です。勢いよく、ハキハキと読みましょう。
拙者(せっしゃ)親方(おやかた)と申(もう)すは、お立合(たちあい)の中(うち)に、御存(ごぞん)じのお方(かた)もございましょうが、お江戸を発(た)って二十里上方(かみがた)、相州(そうしゅう)小田原一色町(いっしきまち)をお過(す)ぎなされて、青物(あおもの)町(ちょう)を登(のぼ)りへおいでなさるれば、欄干(らんかん)橋(ばし)寅屋(とらや)藤(とう)衛門(えもん)、只今(ただいま)は剃髪致(ていはついた)して円(えん)斉(さい)となのりまする。元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで、お手(て)に入れまする此(こ)の薬(くすり)は、昔陳の国(くに)の唐人(とうじん)、外郎(ういろう)という人、わが朝(ちょう)へ来(きた)り、帝(みかど)へ参内(さんだい)の折(おり)から、この薬を深(ふか)く籠(こ)め置き、用(もち)ゆる時は一粒(りゅう)ずつ、冠(かんむり)のすき間より取り出(いだ)す。依(よ)ってその名を帝(みかど)より、とうちんこうと賜(たまわ)る。即(すなわ)ち文字(もんじ)には「頂(いただ)き、透(す)く、香(にお)い」とかいて「とうちんこう」と申す。
Q.せりふのヴォイトレで気をつけることは何でしょうか。
A.役者のせりふには、たいてい相手役がいます。舞台は、相手の呼吸との掛け合いで進行します。そこでは、間を生かすこと、間を知ることが最大のポイントとなります。一人で練習するときも、相手や聴衆がいると思ってやるとよいでしょう。
名優相手にあなたが、自在にせりふを変じてみてください。2~3人の名優とセリフを使い分けて言えるくらいになれば、なかなかのものです。会話レッスンの方式=ロールプレイで行ないます。
落語や漫才を使ってもよいでしょう。2~4人の身振り手振り、声色、声の動き、間のとり方を体に覚え込ませるというのは、有効なトレーニングです。あなたが行き詰まったとき、伸び悩んだときにこそ、そういうやり方(古典研究)をぜひ試してみてください。
Q.声の振動を伝えるには、どうするのですか。☆
A.声を出すときに、軟口蓋に声の焦点を意識して出してみましょう。軟口蓋とは、上の歯のちょうど裏側の硬いところ(硬口蓋)と、のどちんこの間です。口をあけて息を口のなかに吸い込むときに、スーッと冷たく感じるところです。
声を出すときにあくびしたように出してみましょう(あくびした状態でやりにくい人は、その直前の形で)。このときは喉の奥が広く開いています。横隔膜も下腹部の位置へ下がりやすくなります。深みのある丸い声(柔らかい声)にしてください。これは、のど声(生声)をはずすやり方の一つです。頭の響きと胸の響きをうまくバランスをとって、前に出すようにしてください。
Q.共鳴を感じるトレーニングとは、どういうものですか。☆☆☆
A.次の箇所に手をあてて、どんな声でもよいので、どのくらい声が響いているか確かめてみましょう。どれも響かなくてはいけないのではありません。個人差もあるので、一つの目安にして捉えてください。また、どういう声かそれぞれによく響くのか、確かめてみましょう。
1.胸の上部
2.胸の中部
3.肋骨の下の方
4.肩(肩甲骨)
5.首のうしろ
6.肋骨の横のあたり
7.尾てい骨の上の方
8.額
9.鼻のつけ根(眉間)/ほお骨
10.後頭部(頭頂部)
Q.共鳴にのせるトレーニングとは。
A.グレコリウス聖歌、ブルガリアンヴォイス、日本の声明を聞いて、唱和してみましょう。
それを参考に、「地の声、天の声」のトレーニング(rf)をしてみましょう。私は山城組の「恐山」をBGMに使いましたが、電子ピアノの音色のコーラスにのせてもよいですね。
声は空気の振動によって伝わります。詞のなかのドラマや想い、セリフのなかの感情や意味、そういう言語の世界をなくしても、人の心に伝え、動かすことができます。それを自ら体験して、実感してください。
楽器の音が心地よく聴こえるのを、充分に味わってみてください。
音には、詞やメロディがついていないのに、心に入ってくるものがあります。そんな感じでしょう。実感のわかない人は、お寺の鐘の響きでも聞いてください。(そういうCDも出ています)それに合わせて、あなたの一番出しやすい声を使いましょう。
Q.お経を読むトレーニングはありますか。
A.「般若心経(はんにゃしんきょう)」 を使います。何度も読んで、あなたの声にもっともよい高さとテンポをみつけ、毎日唱えてください。
仏説(ぶっせつ)摩訶(まか)般若波(はんにゃは)羅(ら)蜜(みつ)多心経(たしんぎょう)
観自在(かんじざい)菩薩(ぼさつ) 行(ぎょう)深(じん)般若波(はんにゃは)羅(ら)蜜(みつ)多時(たじ) 照(しょう)見(けん)五蘊(ごうん)皆(かい)空(くう) 度(ど)一切(いっさい)苦(く)厄(やく)
舎(しゃ)利子(りし) 色(しき)不異(ふい)空(くう) 空(くう)不異色(ふいしき) 色即是空(しきそくぜくう) 空即是色(くうそくぜしき) 受想(じゅそう)行(ぎょう)識(しき)亦復如(やくぶにょ)是(ぜ)
舎(しゃ)利子(りし) 是(ぜ)諸法(しょほう)空相(くうそう) 不生(ふしょう)不滅(ふめつ) 不垢(ふく)不浄(ふじょう) 不増不減(ふぞうふげん)
是(ぜ)故空中(こくうちゅう) 無色無受想(むしきむじゅそう)行(ぎょう)識(しき) 無眼(むげん)耳鼻(にび)舌(ぜっ)身(しん)意(い) 無色声(むしきしょう)香味(こうみ)触法(そくほう)
無眼界(むげんかい)乃至(ないし)無意識界(むいしきかい) 無無明(むむみょう)亦(やく)無無明尽(むむみょうじん) 乃至(ないし)無老死(むろうし) 亦無老死尽(やくむろうしじん) 無苦集滅(むくしゅうめつ)道(どう) 無智(むち)亦(やく)無得(むとく)
以(い)無所得(むしょとく)故(こ) 菩提薩埵(ぼだいさつた) 依(え)般若波(はんにゃは)羅(ら)蜜(みつ)多故(たこ) 心無罣礙(しんむけいげ) 無罣礙(むけいげ)故(こ) 無有(むう)恐怖(くふ) 遠離(おんり)一切(いっさい)顛倒(てんどう)夢想(むそう)
究竟(くうぎょう)涅槃(ねはん) 三世(さんぜ)諸仏(しょぶつ) 依(え)般若波(はんにゃは)羅(ら)蜜(みつ)多故(たこ) 得阿耨多羅三藐三(とくあのくたらさんみゃくさん)菩提(ぼだい) 故知(こち)般若波(はんにゃは)羅(ら)蜜(みつ)多(た)
是(ぜ)大神(だいじん)呪(しゅ) 是(ぜ)大明(だいみょう)呪(しゅ) 是(ぜ)無上(むじょう)呪(しゅ) 是(ぜ)無(む)等(とう)等(どう)呪(しゅ) 能除(のうじょ)一切(いっさい)苦(く) 真実(しんじつ)不虚(ふこ) 故説(こせつ)般若波(はんにゃは)羅(ら)蜜(みつ)多呪(たしゅ) 即説呪曰(そくせつしゅわつ)
羯諦羯諦(ぎゃていぎゃてい) 波羅羯諦(はらぎゃてい) 波羅僧羯諦(はらそうぎゃてい) 菩提薩婆訶(ぼじそわか) 般若心経(はんにゃしんきょう)
Q.声にリズムと節をつけるトレーニングとは、どういうものですか。
A.自分でリズムや節をつけて、好きな詩やことばを歌にしてみましょう。
(例)つるてんてん はぎわらてん おまえのまえだれあててんてん・・・(以下、繰り返して、自由につないでください)
唱歌や童謡を使って、リズムやメロディを自由に変えて、好きなように読んだり、歌ったりしてみましょう。
Q.音楽的な表現力をつけるためのトレーニングとは。
A.ピアノでドシラと弾いたところをドシラと発声すると、誰でもドシラと聞こえます。しかし、伝わっているのは、そこで声で表現されたものであり、ただドシラの音であってはならないはずです。音を使って何かが表現されたから、曲となりうるのです。
それを「アオイ」とことばをつけて歌ったときに、「青い」というものの、表現イメージが音声で伝わってこそ、表現となるでしょう。「ア・オ・イ」としか伝えられない人は、単に三つの音を口に出したにすぎません。
表現は三つの音にわかれて聞こえるようなものではありません。自分の中で一つに感じて、表現するものだからです。体と心で一つに捉えてこそ、一つのことが伝わります。それでようやく表現されたということです。常に声や音だけでなく、表現から判断するように心がけてください。音程やリズム、発音がみえてしまう歌は、まだまだなのです。声のよさがみえる歌やセリフも表現としては、まだまだです。詞とメロディと声を調和させるのです。
Q.表現力をつけるトレーニングとは。
A.次のことばを何度も読んで心が動いてきたら、好きなメロディを自分でつけて歌いあげてみましょう。テンポやキィを変えて、うまく情感を出してください。
1.涙をふいて(やさしく) 6.Summer days(なつかしく)
2.クリスマスのイヴに(あたたかく) 7.Ah, -A, A, A(おどろいて)
3.なぐさめのことばなど(未練たらしく) 8.my love(親しげに)
4.あしたからはもう一人で(悲しく) 9.Oh, Yah!(怒りたけだけしく)
5.心もうきうきと(楽しく) 10.Hey, you-(さわやかに)
(♭)