発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.トレーナーは得意なことが盲点になるとは。

A.歌のうまい人は歌を、声のよい人は声を教えられないということです。他では考えられないような、ヴォイトレ特有の盲点があります。それは、声がその発声器官とともに体の中に入っており、しかも、生まれた頃から元も一人ひとり違うし、育ちによっても大きく変わり、これまでのあなたの生きてきた歴史に関わっているために、客観視しえないのです。一流の表現、歌、声のために100の条件があるとしたら、80以上はブラックボックスに入っています。そのためヴォイトレなしに、プロになれる歌手や役者の方が多く、ヴォイストレーナーも、まだ特殊な位置づけにおかれているのです。自分が先天的に恵まれていたり、育ちのなかで無意識のうちに得られていたもの、これらが、その人のすぐれたところとなっていることが多いのですが、それゆえ、そこがそうでなかった人に教えられないということです。ピアノなら一流のプレイヤーは、一流の人だけでなく、初心者にも丁寧に順を追って本質的なことを教えられます。それは、最初にピアノに触れたときからのプロセスが記憶にあり、習う人に共有させられるからです。

しかし、たとえば私は、小さいときにピアノを習っていて絶対音感があります。「ド」を聞いて、「ド」を声で出せなかった経験はありません。それゆえ「ド」を出せない人を教えることが、最初はできませんでした。スポーツをやっていたので、体力づくり、体の柔軟、集中力、勝負強さは経験してきました。それゆえ、体をあまり使ったことのない人が姿勢や呼吸での問題や悩んでいることについては、大ざっぱな対応しかできませんでした。一方、強い声(大きな声)、太い声は、うまくできなかったので、それを習得するのに苦労したプロセスは細かく伝えられます。(♭)