発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q.長く伸ばしたいのに、息や歌が続かないのはどうしたらよいでしょうか。吸う量や吐く量が足らないのですか。

A. 重要なのは、息を吸う量や吐く量ではありません。腹式呼吸と発声に加えて、声たて(いかに効率よく息を声として使うか)の問題です。声を出す原動力は呼気なので、声をコントロールするためには、深い呼吸をマスターしておく必要があります。

たっぷりと息を吐き、しぜんと身体に深くとり入れることを心がけて生活するだけでも、だいぶん違ってくるでしょう。トレーニングの限られた時間よりも、毎日の生活のなかで、常に声やヴォイストレーニングを意識していることがより効果的な訓練になるのです。息についても同じです。つべこべ考え悩むより、大きく呼吸していることです。これはいつでもどこでも、トレーニングできます。

エストの両わきを両手でさわり、お腹に息が入っているかを確認してください。お腹がふくらんだ状態をキープしながら、少しずつ息を吐いていきましょう。ふくらんだ分だけ、元通りになったあとに、若干へこむくらいの感じでしょうか。息や声を出して、どれくらい長く伸ばせるかといったチェックは、息の支えが崩れるので、トレーニングというよりは、自覚と確認のためにするのです。

 

息が苦しくて、すぐに声が途切れがちになったり、小さな声になる場合。

息が短く、余裕のない発声になるのは、身体と呼気の使い方の問題です。息を吐くとすぐに苦しくなってしまう人は、まず身体を鍛えることです。息を吐きすぎると、過換気症候群過呼吸)になることもあるので、気をつけましょう。エアロビクスやダンス、水泳など、呼吸をふんだんに必要とする運動によっても強くなるでしょう。

ほとんどの人は、息を充分に吐けるだけの身体になっていません。日本では、プロの活動をしている人でも、呼吸力の不足で、歌がうまくまわらない人が少なくないのです。呼気を声に変える効率が悪く、息のロスが多いとさらにそうなります。根本的には、声と息が深くなり、結びつくのを待つしかありません。

 

息の強さを調整する。

均等に伸びる声を出すためには、息の強さをコントロールする力が必要です。息を調節してみましょう。

・はじめは弱く、だんだん強くする。(そしてふたたび弱くする。)

・はじめは強く、だんだん弱くする。(ふたたびだんだん強くする。)

・はじめから終わりまで同じ強さで保つ。

ただし、息を必要以上に吸うと、うまく使えなくなります。

 

フレーズの終わりを長く伸ばすと、声が不安定になる場合。

ブレス(息つぎ)が浅いと、フレーズの終わりごとに声を保てなくなり、音程やリズムが狂う原因になります。語尾がうまく切れないのも、息に充分な余裕がないことが多いようです。ピッチ(音高)も下がりやすくなります。しばらくは、もう一小節伸ばすくらいの気持ちでやりましょう。

語尾をしっかりと言い切るのは、口先で息を止めるのではなく、お腹を使った息のコントロールでことばを切ってください。結果として柔らかく切り、すばやく息を戻し、完全に状態を整えて、しなやかに鋭く、次のことばを切り込みます。これに対応できる呼吸を身につけるのです。

イメージとしては、喉でなく、呼吸でお腹から切りましょう。呼吸は常に吸うのでなく、吐いた分、入るようにと考えてください。そこで、いつでも瞬時にスッーと入り、すぐに使える体勢を整えられるために、トレーニングが必要なのです。(♭π)

 

A. 吸う量や吐く量が足りないのは、一因かもしれません。つい最近のTV番組で、いわゆる海猿海上保安庁の潜水士)の訓練では、2分30秒間、水中での息止め練習が必須とありました。訓練の様子は、とても過酷でしたが、そんな訓練もあるのだと、驚きました。昔のオペラの名バリトン歌手には、もともと、潜水士だったという人もいたようです。

このように、呼吸の力は、歌手にとって、とても助けになるものです。呼吸練習を、しっかり充実させることは、声の練習と同じくらい大切です。呼吸のキャパシティーが上達していけば、息や歌が続かないという悩みは、なくなっていきます。

それでも、最後の仕上げとしては、声の効率化を、見つけていく必要があります。

よい声・大きな声・充実した声を作りあげていくために、呼吸の力を借りて、たっぷり息を使って声を出すトレーニングは、とても有効です。そのために、一時的に、あるいはかなりの長期間にわたって、大量の息を使う癖がついていきます。声がしっかり育った段階で、この、息の無駄遣いを整理していかないと、よい声なのに息や歌が今ひとつ続かないという状態が起こります。そんなに息を使わなくても、声が上達していることを確認できればよいのですが、なかなか難しい壁です。

一世を風靡したオペラ歌手で、とても息の長いバリトン歌手がいました。私が学生時代、彼の作品の録音を何度も聞いているうちに、息の長さには驚嘆しましたが、それ以上の感動がないことに気づきました。無駄に声を長く伸ばしても、あまり意味はないように思います。(♭Ξ)

 

A. ロングトーンが続かない原因の多くは、ブレスの問題よりもバランス、基礎力の問題かもしれません。ロングトーンは基礎力を測る目安になり得ます。その意味では息が続かないことはブレスの問題かもしれないですし、そうではないかもしれません。例えばブレスを吸うことに意識があっても、発声のときに息がもれていると自分が思ったよりも続きません。息もれの発声は発声の基礎力やバランスがうまくいっていないと起こりやすいです。またその人にとっての適切な音量よりも出しすぎる、出さなすぎるとうまくいかないことも多いです。

改善へのアプローチとしてはまずは支えの訓練でしょうか。ロングトーンの間に身体が細くなりすぎたり、狭くなっていっているときは、支えがどんどん弱くなっているときなので注意が必要です。例えば片足で立ってみるのも効果的な支えの訓練になります。

また舌根に力が入っているとロングトーンの間に舌が硬くなり喉が辛くなるので巻き舌などのトレーニングも改善のために効果的だと思われます。歌唱上でのロングトーンのアドバイスとしては基本的にロングトーンはクレッシェンドで歌うことを意識してみてください。どんどん息と言葉を遠くへ送ってふくらましていくイメージでしょうか。クレッシェンドが効果的に行われても続かないようならば、発声そのものの基礎力やバランス、舌根の力みなどに目を向けてみるとよいかもしれません。(♭Σ)

 

A. 長く伸ばせないのは、息が足りないからではありません。ですので、息の吸う量や吐く量はあまり気にするところではありません。本当に息が足りなかったら、長く伸ばす音の以前に、他の短いフレーズでもすでに息が続かないはずです。長いフレーズで息が続かないのは、肺に取り込んだ息をコントロールすることができていないのが大きな理由のひとつです。(他にも、力みが強くて息を消耗している場合などもあります。)

身体の支えが備わってくると確実に息のコントロールがしやすくなるので、ぜひ基礎的な練習を地道に行ってください。その上で練習方法をひとつご紹介するとしたら、子音Zを使って曲を歌うという方法が効果的です。母音は入らず子音Zだけなので、口元はウにすぼめずに行います。子音Zは有声子音なので、Z(ズ~)だけで音を歌っていくことができます。身体としてはとても大変な取り組みですが、ちゃんと実践できたなら、歌詞で歌っているときよりも確実に息が続きます。しかもその音程に必要な分の息を吐くことになる(吐けなければZを維持できない)ので、歌詞に戻った際に息の流れにゆとりが生まれるという相乗効果もあります。(♯α)

 

A. 吸う量や吐く量の問題も、ブレスの取り方そのものの問題も考えられます。また、声の出し方の問題も考えられます。ブレスの吸う量や吐く量は、多すぎても少なすぎても問題が生じてしまう原因になってしまうと思います。力まずにたっぷりとブレスをとることを心がけることから始めてみるとよいと思います。また、声の出し方として、息の流れに発音が乗っていない可能性や、逆に息を吐きすぎてしまっている可能性も考えられます。いずれにせよ、音を充分保つことができないということは、レガートに歌うことができないということにつながっていると考えられます。レガートに歌うことができないということは、その人の楽器として何かしらふしぜんな出し方になってしまっている可能性が高いことが考えられます。実際に何が原因なのかをレッスンで見てもらうことをお勧めします。(♭Я)

 

A. 声帯がしっかり閉まっていないと息もれして、フレーズが長く続かないということがよくあります。胸郭を広げて、横隔膜を安定的に保ち、息をコントロールできるようになると長いフレーズが歌えるようになります。

レーニング方法としましては、第5肋骨あたり(胸の下あたり)を目安にして、自分の身体の横から人差し指と親指でホールドします。息を吸うと肋骨が広がるのを感じられますので、この広がりをキープしながら息を吐きます。慣れてきたら、吐くー止めるを5セットくらい続けます。吐いて止めるを繰り返すと、この胸郭の広がりを保ったまま息を吐くことに慣れることができると思います。

次に、sやzの子音で発声-止めるを繰り返してみましょう。喉頭が動かず、効率的に息を吐くよいトレーニング法です。

長く伸ばしたいフレーズを歌うときにも、途中で止めながら歌ってみると(止めた後にブレスをしないこと)、身体の支えを感じることができると思います。あと、なぜか、同じ小節数でも、ロングトーンより早いパッセージの方が息が持つということがよくあります。細かい音符で練習してみるのもよいと思います。長い音を歌おうとして身体が固まっていたのがほぐれていくからです。

(♯β)

 

A. 強い音を長く伸ばしたいならそうかもしれません。強く長く伸ばすには絶対に息の質と量と強さが必要です。そのためには息吐きのトレーニングをしなければなりません。sで強く吐く、一分間笑い続ける、など。すぐ疲れたり、長く息を吐き続けたりできないかもしれません。だから、少しでも、長く、強く、吐けるようにトレーニングするのです。

器を広げるために、このようなトレーニングが必要ですが、ここでは逆の考え方をしてみましょう。マイクがあります。それに小さい声でもよいから、ただ長く伸ばすということがご希望なのかもしれません。それなら逆に「息を使いすぎ」ということが考えられます。口を開けて「はー」と息を吐いてみましょう。できるだけ強く長く吐いて、吐ける時間を記録しておきます。次に同じくらいの強さで「あー」と口を開けて伸ばしてみましょう。声があるほうが長く伸ばせるはずです。息がない声、喉声は、長く伸ばせます。息が程よく混じった声のほうがきれいですが、息の割合の少ない声の方が長く伸ばせるということです。ここは程度問題で、よく自分の声を聞きながら、声に対する息の配分を考えてみてください。(♭∴)

 

A. いくつかの原因が考えられます。

まず、吸う量と吐く量の不足です。改善のためには前屈で息を吐いたり腕を拡げながら吸ったりと、身体を動かしながら呼吸練習をしましょう。持っている肺活量をフル活用するためにほぐす作業です。

次に息漏れを減らすことです。きっちり声帯が合っていないと無駄な息が出てしまいます。改善にはカラスなどの動物の鳴き声の真似がお勧めです。

また、子音の発音に過剰に息を使いすぎていないかチェックしましょう。k、s、t、h、f、pといった無声子音は息を消費して発音しますが、息をたくさん使えばよいというものでもありません。少ない息でクリアに発音できるよう研究しましょう。

そして最大の原因は、息の勢いが弱すぎて失速していることかも知れません。自転車をとてもゆっくり漕ごうとするとフラフラしてしまうのと同じで、息はある程度の速度を担保した方が安定して進んでいけます。息が続かないことを恐れず、大胆に使ってみると案外うまくいくものです。(♯∂)