A.イタリア人がオペラを歌ったり、アメリカ人がミュージカルをやる、自然に歌に入れるものを日本人がやると、けっこう違和感がありますね。日常から離れたものをいきなりもってくるからです。基本のベースを広げていないからです。いきなり踊ったり歌ったりしても、力がないと自然になりません。力がないと形をかりて舞台らしくしているために、リアリティがありません。
声で成り立たせるとか、音や声の世界でお客さんをとらえてドラマを起こそうという感覚があまりないのです。ミュージカルや劇も向こうから入ってきたままなのです。筋書きを伝えるだけではドラマツルギーから離れています。日常の言語表現力での差ともいえます。
日本はまだ形式主義です。相変わらず、原調にそってやっているからです。音の世界を知っていたら、一人か二人しか歌わないときはその人のキーに合わせればいいのです。なのに、元の舞台中心に考えてしまい、全てを向こうのものに合わせようとするのは、よくないことだと思います。