発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q2417.気持ちを込めているのに、表面に出てこない。

A.1)思いはリアルか。雰囲気だけになっていないか。いくら気持ちを込めていても、リアルな思いではなく、雰囲気でしゃべっていたら、気持ちは伝わりません。気持ちを込める方向をリアルな方向にしていくことです。実際に今自分がどう感じているのか、セリフをしゃべっている現在、どういう気持ちなのか、ということが大切なのです。
そのためにはまずセリフの裏にあるリアルな気持ちというものを、考えなければなりません。例えば「愛してる」というセリフにしても、前後関係や状況によって、いろいろな意味が考えられます。単純に「好きだ」という気持ちだけではないはずです。感謝の気持ちであったり、恋愛感情ではなく、肉親に向けての愛してるであったり、愛していないのに、愛してるという場面であったり、さまざまな裏の気持ちが考えられるのです。ひとつのセリフに対して、自分自身のリアルな気持ちを見つけ出して、その気持ちになったうえで、セリフをしゃべっていくことです。
日常生活の中で、人と会話をしていることと思いますが、この際も必ず、何か気持ちが湧き出てきたから、口からことばを発しているのです。気持ち→ことばの順なのです。この自然な流れをセリフでも生かしていきましょう。

2)大きな気持ちか。また自分が思っている以上に、気持ちというものは伝わりにくいものなのです。心の中で100パーセントの気持ちでセリフをしゃべっても、50パーセントぐらいになってしまうのです。100パーセントが100パーセントとして表現されないのです。心の中に気持ちのコップがあったとして、100パーセントの気持ちでは、コップの中には気持ちがいっぱい入っているのですが、コップからあふれ出していないのです。このコップからあふれ出した気持ちが外に出て行くのです。だから自分が思っている以上に、大きな気持ち、感情の起伏の激しい気持ちが大切になってくるのです。テンションも普段のままではダメなのです。
普段の生活の集中では、そんなに大きな気持ちで生きていませんから、最初はここまでしないと気持ちが出てこないのか、と大変に思うかもしれません。しかし慣れていくうちに、それが普通になってくるのです。大きく気持ちを作ることが普通になってくるのです。そういった気持ちに慣れるまで、練習を積み重ねていきましょう。

3)思いを外に向けているか。自己満足になっていないか。あふれ出した気持ちを外に出していかなくてはなりません。リアルな気持ちであっても、自分中心、自己満足な演技では、思いは伝わっていきません。自己満足ではなく、聞いている人の立場になって客観的になってみることも必要です。
例えばカラオケがとてもうまい人がいるとします、彼はプロではないのですが、とても気持ちがこもっていて、歌がうまいのです。しかし何か物足りず、実際の思いが伝わってきません。雰囲気は伝わってくるのに、内容が伝わってこない。しかしプロはそうではありません。カラオケがうまいというレベルではなくて、もっと高いレベルで勝負しているのです。自己中心で雰囲気だけの表現ではなく、リアルな思いを、外に向けて発しているから、カラオケ名人とは違うのです。自己満足では伝わるものも、伝わらなくなってしまうのです。
また体の深いポジションから声を出せること、息を吐けることも大切です。しっかり体から声を出すことで、リアルで深い、気持ちの乗った声になるからです。そういった意味で技術的にボイストレーニングを行っていくことも大切になります。外に向けてしっかり息が吐けることも大切なのです。

4)伝えたいという気持ちがあるか。自己満足とも関係してくるのですが、聞いているお客さんを、客観的に意識して、演技ができているのかということも大切です。この境地になるまでには、とても時間がかかるとは思うのですが、これが理想です。もう一人の自分が、自分の演技を客観的に見ているという境地。この境地を目指していきたいものです。お客さんの視点になれるからこそ、伝えたいことも伝えられるようになるのです。
また自分がやっている役、または作品のメッセージをしっかり把握しておくことも重要です。この理解度が高ければ高いほど、やはりお客さんには伝わりやすくなります。

5)はっきりしゃべれているか。基本ではありますが、滑舌よく、はっきりしゃべれていることも大切です。あいまいな発音、おかしなアクセントでは、伝わるものも伝わりません。正確な発音、正確な滑舌の練習もしていきましょう。
「リアルな思い」「大きな気持ち」「外向きの思い」「伝えたい気持ち」「正確な発音」 これらをひとつひとつチェックしていき、ひとつひとつを丁寧に練習していきましょう。