A.シンガーにとって、ヴォイストレーニングは欠かせないものです。一流のシンガーや声楽家になったからと言って安心し、「もう自分は十分出来ている」、なんて思ってはいけません。
レッスンに終わりはないのです。
バレエダンサーは一流のプリンシパル、プリマドンナであっても、毎日のレッスンは欠かしません。
筋肉が衰え、体が硬くなって動かなくなってしまうからです。
一日怠るとその衰えは自分がわかり、三日怠ると仲間がわかる、さらにもう数日怠るとお客様がわかる、と言われています。
私たち声を使う人間も同じことです。
声も筋肉ですから訓練していなければ衰えて行くのです。
そして、一流の歌手になってからも、自分の出している声が正しい筋肉の使い方で出せているのか、間違った発声になっていないか、
専門家に見てもらって矯正する必要があります。
自分の中に聞こえている声(内耳で聞いている声)と、他人が聞いている声(外耳で聞いている声)は違いますね。
自分の声を録音すると、「え?こんな声だったの?」とビックリした経験がきっと皆さんにもあると思います。
自分で自分の生声は聞くことが出来ないのです。
ですから、自分の癖や苦手な部分を知っているトレーナーのところでレッスンを受けるのです。
アスリートにトレーナーがいて、マッサージやテーピングをして体を整えてもらうのと同じことですね。
ひとつのステージでの経験は、日々のトレーニングの何倍もの収穫があります。
お客様の前で表現し、それを見てもらい聴いてもらうことは、その表現者を大きく成長させるものです。
しかし、良いことばかりではありません。
生のステージは何が起こるかわかりません。
張り切りすぎて声が出なくなったり、余計な力が入ったままで発声してしまうこともあるでしょう。
そうならないためにも日頃のヴォイストレーニングは必要です。
また、そのようなステージのあとは、もちろん声帯だけでなく体全体が疲労しています。
その疲労を治し、普段の声に戻してもらうだけでなく、よりよい方向に導いてもらう為、また自分でもその方向がつかめるようになるため、ヴォイストレーニングは必要なのです。(♯Å)