A.あるプロの歌手でウィーンで歌っていた方に聞いた話です。
「歌手とは、歌を歌う人ですがそれと同時に、俳優でなければなりません。その詩に込められた情景や、人物の描写を演技をすることを通して表現するからです。そしてさらにもう一つ、『楽器職人』という要素がなければならないのです。」という言葉をいただいたことがあります。つまり、歌手に必要な要素として歌い、演じ、そして自分の体を楽器と見立てそれを作り上げることも同時にしていかなければならないのです。体のどこを緩めると、どんな音がして、どこを強めるとどんな音がするのか。また、どこを鍛えてどのような音を目指していくのか、それが委ねられているということなのです。
ある世界的なオペラ歌手についての評論で「この歌手は決して特別な喉をしているわけでもなく、特別な体をしているわけでもない。ただ、音を発する際に自分の体に対して非常に鋭敏な感覚を持ち合わせているということなのだ」と書かれていたことがあります。
自分の体の感覚に繊細に向き合ってこそ、この「楽器職人」としての要素が満たされるのだと思います。皆さんも、いろんな音を聞いて、特に生でいい音を聞き耳を養い、自分の体の状態に敏感になって、体を楽器として構築していきましょう。([E:#x266F]β)