発声と音声表現のQ&Aブログ

ヴォイストレーニング専門の研究所内外の質問と、トレーナーと専門家のQ&Aブログです。 あくまで回答したトレーナーの見解であり、研究所全体での統一見解ではありません。また、目的やレベル、個人差により、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。参考までにしてください。 カテゴリーから入ってみると便利です。 【rf :他に詳しく答えているのがあるので、それを参考にしてくださいという表記です。】 引き続き、ご質問もお待ちしています。できるだけ順次とりあげていきます。

Q. 声をどのようによくしていけばよいですか。自分の声がよくわかりません。よい声と悪い声とはどう違うのですか。声のタイプには、どのようなものがありますか。

. まず、声を出すのに必要な体の部分を、整えていきます。整えるというのは、弱ければ強化し、硬ければほぐし、動きが悪ければ、動きやすくしていくということです。具体的には、呼吸に関係する肩・胸・お腹周りの筋肉の、ほどよい強化とストレッチ。また、声帯周り、おもに首周りの筋肉の強化とストレッチ。そして、声をうまく支えるための、足腰周りの筋肉の強化とストレッチです。それぞれの実際の方法は、トレーナーによって、組み立てが変わってきます。ここまでは、基本です。

次に、自分の目指したい目的地を、設定します。どのような声を、目指したいかということです。これは、自分の声を、使いたいジャンルで、好きな声、憧れの声を見つければよいので、しっかり探しましょう。

よい声と悪い声というのは、喉によいか悪いかで、判断するのが自然です。どんなにそのジャンルで魅力的な声でも、その声を使うことによって、喉を傷めてしまうようでは、よい声とは言えないと思います。声を使いたいのに、声が出なくなってしまっては、本末転倒でしょう。

声のタイプには、ジャンルによって、さまざまなものがあると思いますが、おおよそ、太い声、細い声、輝きのある声、いぶし銀のような声、力強い声、柔らかい声、などでしょうか。([E:#x266D]Ξ)

 

. 自分がよくなったと思える声のイメージがあるならば、そこにむかっていくためのプロセスを考える必要があります。しかしそのようなイメージがなく、自分の声がよくわからないというのであればまず、目指す方向性をある程度しぼってみるか、またはあまり方向性などはしぼらず単純な発声練習などの基礎的な部分とさまざまなジャンルの声を使う音楽やセリフ、芝居などをこだわらずに練習してみて、なにか自分の心にふれたジャンルを少し深堀りしてトレーニングしてみてもいいかもしれません。

指導者がいるのなら、自分の声をその指導者がどう分析しているかを何度でも納得するまで聞いてみていいと思います。

よい声と悪い声というのも定義はあってないようなものです。例えばオペラを歌う人からするとデスメタルのような声もアイドルのような声もNGなことが多いのですが、そのジャンルでOKならばよいということです。重要なのは自分がどのようなことに必要で声をよくしたいかということです。

声のタイプも同様です。もし現段階で、自分の声や何にどう必要かが不明確であるならば声のタイプなどはあまり気にしないで大丈夫です。

1.いつもより大きな声をだしてみる

2.お腹を意識して声をだしてみる

3.いつもよりたくさん息を吸って声をだしてみる

この3つだけでいろんなことが変わってきます。

まずは声をだしてみましょう。ただ声をだすのが難しかったら、何か歌ってみましょう。何を歌えばいいかわからなかったら、いろんなジャンルを意味もわからなくていいので歌ってみましょう。それでも難しかったら、漫画でもテレビの中のことばでもいいです。何か一つのことばを13までを意識して声をだしてみてください。([E:#x266D]Σ)

 

. 声の出しにくさを感じているとき、もしくは自主練習で試行錯誤しているときなどに自分の声がよくわからなくなるのは、多くの人が経験する過程の一つだと思います。喉だけ、口先だけで声を出したり、力みが多かったり、その人特有の何か癖があったりと要因はさまざまですが、いずれの場合にしても身体の感覚が伴っていない(身体を使えていない)ことが共通しています。発した声と体感が一致していないので、どれが自分の本当の声なのかとわからなくなるのです。

まずは、身体を使えるよう基礎的な練習をすることです。「声」をどうするかはその後の話です。

私自身はレッスンで悪い声という表現をしたことがありません。もし敢えて言うなら、悪い声とは悪い発声で出したときの声でしょうか。

声のタイプは、例えば細くて高い声、太くて低い声、明るい響きの声、暗めの響きの声など、そのわけ方や表し方はいろいろあると思います。([E:#x266F]α)

 

. 自分の声というのは自分一人ではわからないものだと思います。ですので、何がよくて何がよくないのかということもわからないのも無理がありません。そもそも「よし悪し」というのも、何を基準にするのかというエビデンスが不明確なまま、判断する人によって意見がわかれているのが現状だと思います。

声における専門的な立場ではない人の「よし悪し」の意見というのは、所詮「その人の趣味」と考えてもよいと思います。ですので、意見も十人十色となるでしょう。その意見に振り回されるというのは、あまり賢明なことではありません。

私がレッスンで「よし悪しの判断の基準」と定めて大切にしていることは、「その人にとって不自然な声になっていないか」ということや、「その人の声・音楽・語り方に、聞く人の心を魅了する要素があるか。内容を伝える力があるか」ということです。不自然な声というのは、あまりにも弱々しすぎて聞こえにくい声や、喉に無理を生じさせるような乱暴な声などがその一例です。声を改善していくために大切なことは、自分一人で悩まないことです。トレーナーの指導のもとで改善していくようにするとよいでしょう。

声のタイプについては、どのような視点で判断するかによって判断が細かくわかれる部分だと思います。そのため、意図が詳細にくみ取れない状態では何とも答えられません。型にはめるようなことはあまり考えず、自分の楽器の特徴や個性を大事に、あとは取り扱う作品に違和感なく対応できることを大事に考えてみてはいかがでしょうか。([E:#x266D]Я)

 

. あなたが目指している分野によっても、どのような声が求められるかが変わってくるかと思います。明瞭な発声が必要な職種なのか、発声というよりアピール力が必要なのか。

よい声としては、やはり通る声、的確な音量、そしてその場に適した表現ができているかなどが重要なのではないでしょうか。さらには、魅力としてとらえてもらえる何かがあるか。これは千差万別で、明るさ、誠実さ、快活さ、さわやかさ、人それぞれの魅力が声に出ると思います。

テレビやYouTubeをみていると、だみ声であったり、滑舌が明らかに悪いのに、なぜか喋りに引き込まれて聞き入ってしまうということがよくあります。美声のアナウンサーの語りより、だみ声の落語家さんに聞き入ってしまうこともあります。

結論を言ってしまえば、声のよし悪しというより、あなたが何をどう表現しているか、どんなエネルギーを持って表現をしているかと言うことに尽きると思います。あなたより美声じゃない人が感動的な歌を歌うケースもあれば、あなたよりとってもよい声なのにあまり感動しない歌を歌ってしまっているというケースもあるからです。

声のよし悪しと言う観点で物理的にものを言ってしまえば、声帯がピタッと合っている、共鳴が使えている、母音の発音が明瞭である、子音の発音が的確である、美しい表現ができている…など。

これらは技術的に磨くことが可能です。注意しなければいけない点は声帯をぴったり合わせようとか共鳴をしっかりさせようなど自分の声をよく聞かせようとして、喉首肩などに力が入り、声の美しさを阻害しているケースがあります。どうぞ無駄な力を入れずにあなた自身の声を響かせられるようにトレーニングを重ねてください。

声のタイプとして、音域の高いほうから、女性であればソプラノ、アルト、男性であればテノールバリトンというふうに声種がわけられます。その中でも重い声なのか軽い声なのかなども分類できます。声帯を楽器としてとらえてみたときに、自分の声がどこに属するかは、およそ判別できます。([E:#x266F]β)

 

. 今まであなたが生きてきて、いろいろ経験して、その結果としての今のあなたの声があります。これは今のあなたにとって一番いい声です。少なくともさまざまな周りからの要求に何とか適応してきた声です。そのことをまずは認めてあげましょう。その上で、よりよい声とはどういうことか考えるとよいでしょう。

わかりやすい基準は大きさです。大きい声は出せますか。腹の底から「やっほー」と叫んでみましょう。やまびこは帰ってきそうでしょうか。大きな声が体から出せる人は、第一関門は突破していると思われます。しわがれた声でも、喉にかかった声でも、とりあえずは大丈夫です。あとは響かせ方、体の力の取り方を学んでいきましょう。

大きな声が出せない人は、まずは思いっきり息を吐いてみましょう。誕生ケーキのろうそくを100本一気に消すイメージです。どうでしょうか、消えましたか。強く息が吐けない人は、まずは自分の息を感じるトレーニングから始めましょう。静かにで構わないので「ふー」と息を吐きます。目を閉じて、自分の息を感じてみてください。慣れてきたら、最後まで一定に吐けるようにしてみてください。息がなくなりかけると、お腹から息をたくさん送り届けないといけません。慣れてきたら「スー」に変えて、少しずつ息を強くしていきましょう。

声のタイプの区分としては、高い低い、軽い重い、強い弱い、浅い深い、胸声頭声などいろいろありますが、ここでは高い低い、と軽い重い、を組み合わせた男声の声の区分について説明します。

高く軽い:テノール・レッジェーロ。喜劇役。セリビアの理髪師アルマヴィーア伯爵。

高く重い:テノール・ドラマティコ。英雄的イケメン二枚目。オテロ

低く軽い:バリトン・ブッフォ。道化役。魔笛のパパゲーノ。

低く重い:バス。王様役。魔笛のザラストロ。

ちなみに日本は女性に高い声(子供っぽい声)を要求するため、無意識に上ずってしゃべる傾向があります。これは本来の声のタイプではないため実際に声を聞くと地声は高くないことが多いです。([E:#x266D]∴)

 

. 声をよくするには、バランスのよい食事を心がけ、必要な睡眠時間を確保し、適度な筋力をつけ、健康な体を作ること。次にストレスを減らす努力をし、機嫌よくあること。最後に日々の鍛錬です。

健全な肉体と精神なしにいい声は出ません。うまくなっていく人は自分自身の機嫌をとるのが上手です。

自分の声がよくわからないなら、録音して聴きましょう。モデルは毎日何時間も鏡を見ます。

よいか悪いかは感覚的なものであって、絶対的な数値ではありませんが、よい声の一つの指標として「サステナブルかどうか」が挙げられると思います。長時間出し続けられる声、ずっと聞いていて疲れない声、長い人生の間で喉をつぶすことなく歳を重ねても衰えない声、といったことです。

日本では虹は7色と考えられていますが、他の国では6色だったり4色だったりします。つまり、名前をつければ存在がクローズアップされ、名前がなければ認識されないわけです。色に名前があろうがなかろうが、虹は虹です。私は声のタイプにラベルを貼ることに意味を感じません。([E:#x266F]∂)